【日常的に叱り続ける弊害】自己肯定感が持てない子どもたち
どの親でも、しつけのために子どもを叱る時があります。
しかし、日常的に叱り続けると子どもは自己肯定感が持てなくなるそうです。
どのような点に気をつければよいのでしょうか?
教育評論家の親野智可等先生にお話を伺いました。
読み聞かせをしながら叱る保護者
歯科医の待合い室でこういう情景を見ました。
ある保護者が2人の女の子を連れて来ていました。
上の子が3,4歳で下の子が2,3歳です。
保護者は絵本を2人に読み聞かせていました。
でも、読み聞かせをしながら叱っているのです。
「○○ちゃん、モゾモゾしないで聞かないとダメでしょ」
「ほらほら、お姉ちゃんの方に寄っちゃダメでしょ」
「□□ちゃん、そこを持っちゃうと○○ちゃんに見えないでしょ」
「○○ちゃん、ちゃんと座らなきゃダメでしょ。なんでちゃんと座ってられないの!」
こういう感じで、読み聞かせをしながらずっと叱っているものですから、近くにいた私までも落ち着かない気持ちになりました。
これでは、せっかくの絵本が楽しめないと思います。
それどころか、絵本自体が嫌いになってしまうのではないかと心配になります。
新幹線の中で叱る保護者
また、あるときは、新幹線の中で保護者が小学3年生くらいの男の子をずっと叱っているのを見ました。
「なんで、バッグを締めないの。ちゃんと締めなきゃダメでしょ。中の物が落ちちゃうでしょ」
「静かに座ってなきゃダメでしょ」
「お行儀よくするって言ったよね。○○君、もう新幹線乗れないね。かわいそうだね」
そして、子どもが「喉乾いた~」と言ったとき、「もう連れてこないよ!」ときつい口調で言いました。
そうしたら、子どもが床をドンと踏み鳴らしました。
それで、また、保護者が「なにやってんの!」と叱りました。
私は近くで見ていて切なくなりました。
子どもが床を踏み鳴らす気持ちが痛いほどわかったからです。
否定的にいわれると素直に聞けなくなる
どの例でも、保護者は子どもをしつけるつもりで言っているのです。
でも、「また○○してない」「○○しなきゃダメでしょ」「なんで○○しないの」などの否定的かつ感情的な言い方で言われると、誰でも決していい気持ちはしません。
それは大人でも子どもでも同じことです。
こういう言い方をされると、ひとは素直に相手の言うことを聞くことができなくなります。
たとえ頭では正しいとわかっても、素直に受け入れることができないのです。
それどころか、かえって反発したくなってしまうものなのです。
日常的に叱られていると自己肯定感が持てなくなる
そして、ことはそれだけで終わりません。
「また片づけてない。片づけなきゃダメでしょ」など、日常的に否定的な言い方で叱られることが多いと、子どもにとって非常に大きな弊害が生じてきます。
その弊害はざっと数えても10種類はあります。
中でも一番問題なのは、子どもが自分に自信を持てなくなることです。
言い換えると自己肯定感が持てなくなるということです。
ぼくってダメだな私ってダメな子だどうせオレなんかダメだよ何をやってもダメだよできないよがんばれないよ
こういう気持ちが出てきてしまうのです。
物事や行動についてでも、叱り続ければ人格否定と同じことになる
もちろん、保護者は「あなたはダメだ」と言っているつもりはありません。
その子の人格や能力を否定するような言い方をしているつもりはないのです。
ただ、1つ1つの物事や行動について言っているだけです。
いろいろな本にも、「子どもの人格を否定してはいけません。1つ1つの物事や行動について叱りなさい」などと書いてあります。
だから、そうしているのです。
でも、いくら物事や行動についてでも、それが度重なれば結果は同じなのです。
いくら物事や行動についてでも、「また○○してない」「○○しなきゃダメでしょ」「なんで○○しないの」などと否定的に言われ続けていれば、結論は「自分はダメだな」ということになってしまうのです。
物事や行動についての否定的な言い方は、かなりの保護者が平気で日常的に使っている
これは当たり前のことです。
なぜなら、そう言われ続けているのは自分以外の何者でもないのですから。
人格否定の言葉はボクシングで言えばメガトンパンチです。
ひとは、これを1回浴びただけでも深く傷つき、立ち上がれなくなってしまいます。
そして、物事や行動についての否定的な言い方はボクシングで言えばボディブローのようなものです。
1回2回ならともかく、これを繰り返し浴びていれば、浴びるほどに傷は深くなり最後には立ち上がれなくなってしまうものなのです。
さすがに、子どもの人格否定をする保護者は少ないと思います。
でも、物事や行動についての否定的な言い方は、平気で使っている保護者も多いのではないでしょうか。