上越市立小でまた給食アレルギー事故 学校はマニュアル無視 ずさんな対応再び 教訓生かされず
上越市教育委員会は2024年9月11日、同市立小学校で卵アレルギーの低学年児童が給食後にアレルギー症状を発症し、救急搬送される事故が起きたと発表した。発表は学校が一定程度適切に対応したという内容だったが、実際は市のマニュアルを事実上無視した対応で、内服薬の投与などを教職員が行わず、エピペンの使用も1時間以上後になるなど極めてずさんだったことが上越タウンジャーナルの取材でわかった。同市では昨年9月に重篤な給食アレルギー事故が起き、今年2月に再発防止策などをまとめ、研修会などを実施してきたが、教訓は生かされなかった。また、市教委は今回、搬送当時の児童の症状について「重篤な状態ではなかった」としているが、保護者は「重篤なアナフィラキシーショックを起こしていた」としているなど双方の認識も食い違っている。
市教委発表「誤食事故ではない」
市教委の発表によると児童は卵アレルギーで、9日の給食にかきたま汁が提供された。児童は卵成分を除いた除去食の給食を食べ終わった後、手を洗いに行って教室に戻ったら、同級生のかきたま汁の食器が自席に置いてあり、左肘が食器に触れたという。市教委は、肘の接触が原因でアレルギー症状を発症したと推定しており、誤食事故ではないとしている。
市教委の発表内容(時系列)は次の通り(全文ママ)
午後0時55分頃 給食終了後、当該児童の左肘が、同級生の食器に触れた。また、当該児童は学級担任に触れたことを申し出て、学級担任は状況を覚知した。当該児童の左肘を流水で洗い、学級担任は当該児童を保健室に連れていった。
午後1時20分頃 学級担任は、保護者に連絡
午後2時10分頃 当該児童の体に症状が表れ始めたため、当該児童は内服薬を服用
午後2時30分頃 当該児童はエピペンを注射 学校職員は救急搬送を要請
午後2時39分頃 救急車到着・救急搬送へ
発表によると症状が現れてからエピペン注射まで20分ほどだったことになる。
事実と異なる発表 緊急対応はすべて保護者
しかし、保護者の認識は、市教委の発表と大きく異なる。
市教委の発表では、症状が現れ始めたのは午後2時10分頃とされている。保護者によると、午後1時20分頃に担任から電話を受けた際、児童が首をかゆがっていると伝えられたという。さらに約30分後の午後2時前に保護者は学校に電話し再度症状を確認。その際に児童本人と直接電話で話したときにもかゆみを訴えていたという。
その後午後2時頃、保護者は学校に到着。保護者が確認したところ、全身にじんましんが広がっていたため、主治医に電話で指示を仰ぎ、内服薬を飲ませた。その後、児童は腹痛を訴え、声もかすれてきたことから午後2時30分頃、保護者がエピペンを注射し、教職員に救急車を呼ぶよう依頼したという。
保護者の説明を市教委発表の時系列に追加すると次のようになる(赤字が保護者の認識。黒字は市教委の発表)。
午後1時20分頃 学級担任は、保護者に連絡。*児童は首のかゆみを訴えている(症状が現れたの少なくともこの時点)
午後1時50分頃 *保護者が学校に電話して児童と話す。児童は依然かゆみを訴えている。
午後2時10分頃 当該児童の体に症状が表れ始めたため、当該児童は内服薬を服用。*保護者が学校に到着して確認すると全身にじんましんがあり、保護者が主治医に電話で相談し内服薬を飲ませた。
午後2時30分頃 当該児童はエピペンを注射 学校職員は救急搬送を要請。*腹痛、声のかすれの症状が現れ保護者がエピペンを注射。保護者が救急車要請を学校に依頼。
午後2時39分頃 救急車到着・救急搬送へ。
マニュアル無視 保護者「1時間以上放置された」
上越市のマニュアル( https://cdn.blog.st-hatena.com/files/4207112889963685954/6802340630905800182 )では、児童がアレルギー原因物質に触れた可能性を認識した場合、まず人を集めてエピペンと内服薬を持ってくるように指示する。5分以内に緊急性が高い症状か否かを判断し、緊急性が高い場合はただちにエピペン注射、そうでない場合は内服薬を飲ませるか保健室へ移動させ、5分ごとに症状を判断して軽度のかゆみなどの症状があれば内服薬を飲ませ、一定の症状の場合はただちにエピペン注射することになっている。
今回のケースでは、学校は午後1時20分頃にかゆみの症状を認識しているにもかかわらず、内服薬を服用させていない。服用させたのは保護者で、少なくとも50分が経過している。内服薬もエピペンも学校にあったが、いずれも使用したのは学校の職員ではなく、保護者だった。エピペンの使用は、発症から1時間以上経っていた。さらに保護者によると、救急車についても、保護者が職員に呼ぶように依頼したという。
保護者は「救急搬送先の医師からは『エピペンの使用があと少し遅ければ命の危険があった』と言われた。学校で子どもは1時間以上放置された」と話している。
児童は11日の時点でも喉にじんましんが残り声がかすれた状態だといい、「学校に不安がある」として欠席している。
誤食ではないのか?
また、保護者は「これまでの経験から、皮膚についただけではアナフィラキシーは起きない」と皮膚への接触が原因とする市教委の発表に疑問を呈している。
市教委 「当時の状況検証し改めて公表」
市教委は「当時の状況を確認、検証して改めて公表する」としている。
続報
上越市給食アレルギー事故 診断名知りながら公表せず 専門医の検証は市教委発表と反する結果に - 上越タウンジャーナル( https://www.joetsutj.com/2024/09/17/174806 )