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メダリストを今更読み始めたんだけどひたすら面白くて、もっと早く読めばよかったと後悔している

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メダリストを今更読み始めたんだけどひたすら面白くて、もっと早く読めばよかったと後悔している

けれどこれはアド……!!「読むのが遅くなった」ではなく、「まだ読んでない巻がたくさんある」という、既読者に対する圧倒的爆アド……!!


この記事で書きたいことは、大体以下のようなことです。

・「メダリスト」を最近6巻まで読んで今更ドハマりしました
・あまりに作品が熱いため、6巻までの時点で「全力で感想を書きたい」という気持ちを抑えられなくなりました
・司先生といのりさんを中心に、一つの展開で何度も「まさか」という驚きを味わえる構造が、フィギュアスケートという舞台と完全合致していてものすごい
・いのりと司、環境的に大きなハンデを抱えていた二人のコンビが、次々周囲を驚かせる活躍をしていくのがなによりも気持ちいい
・絵がめっちゃめちゃ上手くて、フィギュアスケートについて知らなくても「何が起きていて、何が凄いのか」がほぼ全部分かる描写もすごい
・デフォルメ絵でもちゃんと動きが分かるの本当素晴らしいと思う
・登場人物の、お互いを見ている内に色んなことに気付き、高め合っていくという描写も尊い以外の言葉がない
・未読の方は私同様未読アドを活かしにいきませんか

以上です。よろしくお願いします。


さて、書きたいことは最初に全部書いてしまったので、後はざっくばらんにいきましょう。

タイトル通りなんですが、本当に今更ながら「メダリスト」を読み始めてドハマりしています。取り急ぎ6巻まで読みました。


元々、長女次女がアニメ版を見始め、「面白い!」と口々に言うので気になっていたところ、Twitterなどでも複数の方にオススメいただいて「よし、読もう」となりました。

ただ、「春休みの宿題が完了するまでは、家のkindleにあまり漫画を増やせない」という家庭の事情縛りがあるため、まだ6巻までしか読めていないんです。とはいえ、6巻の時点で既に途方もなく熱いので、この時点での感想も書いておきたくなりました。


この記事は、前半で大きく漫画の構成や特徴について書いて、後半は劇中の好きな展開について暴走機関車のようにたたきつけていく構成になっています。

そのため後半部分には多少なりとネタバレが混じってしまう可能性が高く、未読の方には後半部分の閲覧はオススメ出来ません。私と同様「まだメダリストを読んでいない」というアドバンテージを是非活かしていただけるよう、前向きなご検討をよろしくお願いいたします。


***


「メダリスト」は、フィギュアスケートをテーマにしたスポーツ漫画です。

主人公である結束いのりは、フィギュアスケートに憧れつつ、様々な事情で親に「スケートをしたい」と言い出せず、11歳まで本格的にスケートを始められなかった少女です。


5歳くらいからフィギュアスケートを始めている子が当たり前にいる中、スタート時点で大きなハンデを背負ってしまったいのりが、自分と同じ「出遅れた選手」である司先生と出会い、「メダリストになりたい」という目標に向かって二人三脚で歩み出すところから物語が始まります。

2020年から連載が始まっているので、私は5年分くらい周回遅れです。だいじょうぶ……!いのりだって、スケート始めるのが遅れたのに頑張ってるんだ……!!


「メダリスト」の何がすごいって、まず何よりも「逆転の驚き」の質が極上なんですよね。

上述した通り、いのりは「11歳までフィギュアスケートを本格的に始められなかった」という、非常に大きなハンデを背負っています。いのりにとっては、スケートの世界で出会うこと、ほとんど全てが初挑戦。周囲のライバルは全て、自分より遥かにスケート歴が長いベテラン選手。そんないのりがひたむきに練習を積み、スケートリンク上で美しい滑走を見せ、ライバルたちと互角に戦い、時にはメダルを勝ち取ること、それ自体が既に「もの凄いこと」です。描かれる全てが「低い立ち位置からの逆転」で、しかもそこにあるのが「意外性」だけじゃなくて、ちゃんと「そこまで積んできた何か」「それが出来る理由」を描写されている。だから、ただの「驚き」だけではなく「説得力をもった驚き」が読者に提供されて、それが「感動」になる。


そしてつるまいかだ先生、「キャラの感情」を描くのが滅茶苦茶お上手なんですよね。喜んでいる表情、悲しんでいる表情を描くのももちろん上手なんですが、「何かを隠すために、じっと悔しさや喜びを抑えている」という表情を描く手腕が超すごい。悲しみにせよ、喜びにせよ、ある時点ではぐっと我慢して溜めて、それを一気に放出するから、よりいっそう感動が増す。そういう「表情の魔法」みたいなものを、作中縦横無尽に使いこなされていると感じます。


とはいえ、いのりが喜んでいる表情がハイパー可愛いことは間違いなく、作中言われる「喜びGOE+5」がマジでフル加点なわけです。いのりの笑顔一生見ていたい。

それに加えて、「フィギュアスケート」という競技自体が、非常に「驚き」「感動」を生み出しやすい構造になっている、という話もあると思っています。


フィギュアスケートの選手たちは、スケートリンクという極めて不安定な舞台の上で、常に転倒や失敗のリスクを背負いながら様々な技に挑戦していくことになります。どんなに上手い選手でも、失敗の可能性はゼロにすることは出来ません。数%、数十%の失敗のリスクの中、どうにか成功をつかみ取らないといけない。

ただ難度が高いジャンプをすればそれでいいというわけではなく、芸術性も問われれば技の組み合わせも必要になるし、当然体力的な問題だって出てくる。ある選手は「体力がある最初の内に高難度の技を決める」という作戦を選ぶし、ある選手は「難しいジャンプを後半に持ってきて高得点を狙う」というリスクをとる。勝利を狙うために、色んな選手が様々な工夫をする。

「いのりやライバルたちは、今回は一体どんな作戦の元、どんな演技を見せてくれるんだろう」という期待感と、さらにその期待を上回る描写を見せられた時の驚きは、それだけで「極上」といっていいでしょう。


フィギュアの大会自体、「選手の演技ごとに点数が発表され、ランクがどんどん入れ替わっていく」構造になっていることもあり、展開は自然と「逆転に次ぐ逆転」になります。最初の方で出た高得点を上回るためにどんなリスクをとるか、そのリスクは成就するのか。競技を見守る側の「手に汗握る」感を、読者もそのまま味わうことが出来ます。

作中でとある人物が、「フィギュアスケートは奇跡を見守るスポーツ」と言っていますが本当にその通りで、「メダリスト」を読んでいると、いのりやライバルたちが挑んでいることの一つ一つが本当に「奇跡」だと思えるんですよ。


以前から何度か書いていることなんですが、漫画の大きな面白さポイントに、「まさか」と「さすが」という二つの要素がある、と私は思っています。

「まさか」というのは要は逆転の面白さ、評価が低かった人がその評価を覆して逆転勝利をしたり、初心者と思われていたキャラが強敵に打ち勝ったりする驚きですね。「さすが」というのは期待感が満たされる面白さ。実力があるキャラがその実力を存分に発揮したり、頼もしいキャラがその頼もしさ通りの活躍をする展開の面白さです。


「メダリスト」の構成は、逆転に次ぐ逆転による「まさか」の面白さを極上のメイン軸にしつつ、読者や周囲の人間がいのりの力に徐々に気付き、やがて「さすが」という思いに繋がっていくという、「まさか」と「さすが」の二つの面白さをミックスして演出してくれる構成になっていると思います。

たっぷり良質な「まさか」と「さすが」を味わえる漫画、それこそがメダリストだと言っていいのではないかと思うわけです。


***


低年齢から始める「習い事」でもあるフィギュアスケートという競技の関係上、「周囲の大人」も非常に大きな存在感を担います。彼らは、もちろん選手の指導役として、あるいは成長を見守る親として、時には作戦や展開の解説役として、作中の展開を彩ります。


まず、「周囲の大人」の代表格である司先生が、「驚き役」であるのと同時に「驚かせ役」でもある、というのがとても良い。

上記の「まさか」を表現する際、重要なのが「驚き役」の存在です。作中活躍するキャラクターの周囲のキャラクターが、主人公の活躍に驚く、感動する、戦慄する、悔しがる。そういった「周囲の反応」と、その周囲のキャラクターへの感情移入があってこそ、読者も一緒に驚けるし、めいっぱい感動できるわけですよね。


まず司先生、「驚き役」としてこの上なく優秀なんですよ。

本来は「20歳からスケートを始めて全日本代表選手権に出る」というものっっっ凄いことをやり遂げた選手なんですが、経済的なハンデでスケートを続けられなかった、作中でも不遇ランキング上位ランカー。だから、いのりがやろうとしているのがどれだけ大変なことか、そしてそれに対していのりがどれだけ頑張っているか、作中の誰よりも深く理解し、共感できる。

自己評価も低く、他人のこととなると前向きになれるのに、自分のことでは常に後ろ向き。一方、いのりを指導し見守る「一番身近な大人」でもあって、立ち位置的にも読者がとても感情移入しやすいんですね。司先生もいのりと同様とてもひたむきで、子ども相手でも相手を尊重していて、キャラクターとして反感を買うような部分が本当にないから、その点でも感情移入しやすい。


その上で、司先生、リアクションがもの凄く大きな人なので、その感動が読者にダイレクトに伝わってくる。いのりが失敗すればぎゅっと唇を噛みしめ、成功すれば全身を使って歓喜するし、いのりの成長に感動すれば人目を憚らず大泣きする。瞳先生とセットでいのりのジャンプ成功に大喜びしてるところ、読んでるこちらも泣きそうになるわけです。「もう偉い子部門で優勝させて欲しい」という言葉、共感以外の言葉がない。

司先生に感情移入していると、自然と「いのりと周囲が起こす奇跡」に100%感動出来るようになる。メダリストのもう一人の主役、司先生の重要性は言うまでもありません。


一方、司先生はいのりの指導役であり、いのりのステージの仕掛け人でもあります。いのりの滑りが周囲を驚かす時、その驚きはコーチである司先生にも向かいます。

劇中、司先生ってやっぱり選手としての実績面で侮られたり不安視されたり、何より司先生自身が自分を卑下してしまうことが結構あるんですが、それでも「いのりの練習と演技」を通じてどんどんその評価が逆転していくわけです。司先生自身、「いのりを勝たせるため」に自分の自己評価の低さを吹っ切って、自分の能力を活かしていくことを決意する、この展開がこれまた素晴らしい。


「アイスダンス出身だからジャンプの経験はないし、シングルの選手としては実績もない」「けれど、アイスダンス出身だからこそ、「圧倒的なスケーティング能力」とそれに基づく指導という強みがある」という設定、本当絶妙という他ないんですよね。フィギュアといえばジャンプが花形なのに、敢えて主要キャラからそこを外し、それによって周囲の驚きをブーストするという選択、「とんでもなく上手い」という他ない。

いのりと司先生、二人が相互作用で周囲とお互いを驚かせていく構造、この「二重の驚かせ構造」もメダリストの魅力の源泉だと考える次第なのです。


***


「作者さんが描く絵がめっちゃめちゃ上手い」という点も特筆したい点です。フィギュアスケートって元々「動きが非常に速く、見せ場が一瞬」「それでいてダンスの綺麗さ、芸術性も重要で、動きの連続性がないと凄さが理解しにくい」という点で、説得力のある絵で見せるのもの凄く難しいと思うんですが、「メダリスト」の絵ってほんっっっっとーーーに説得力がバカ高いんですよ。

いのりたちが滑っている姿、どのコマを切り取っても「動きの綺麗さ」「力の入り方」が全部分かるし、瞬間瞬間を切り取っているのに、実際に目の前を滑っているかのような動きの説得力がある。選手一人一人、どういう風に滑り方の個性が出ているのかも、全て絵で表現されているんです。「あ、この選手はこういうところに力を入れた演技をしているんだな」というのが全部分かる。


個人的に、特にものすげえと思ったのは、「デフォルメされた絵でもちゃんと動きが伝わってくる」という点でして、普通はデフォルメってリアルな部分をある程度捨象して描くものだと思うんですが、「これ、どういう動きをしてるんだ?」って疑問に思う部分がほとんどなくって、どんなデフォルメでも「あ、今こう回ってるんだな」「こうジャンプしてるんだな」ってことが分かる。子どもの骨格をちゃんと表現しつつこの動き描くの、どんだけ高難度なんだよって感じです。

圧倒的な画力と絵の構成力、これも「メダリスト」の面白さの重要な要素だと思うわけです。


***


さて。ここから先は、6巻までのネタバレを含む感想になります。未読の方は、是非ここまでの時点で記事を切り上げて、取り急ぎポチっていただけないかと願う次第です。

箇条書きします。

・やはり、親としては「周囲の大人」に感情移入してしまう部分が非常に大きいです
・いのりのお母さんといのりの関係については、三児の親としてもの凄く考えさせられました
・初級大会の後、お母さんが試合中に「自分が傷つくのが怖かっただけ」と気付いて、いのりの言葉を聞いて「いのりを応援する」と決心する場面、普通に大号泣
・「子どもの可能性を信じる」って、口にするのは簡単だけど親としても凄く勇気がいることですよね
・その前、いのりのジャンプ失敗を心配して止めようとしたお母さんに、いのりがちゃんと自分の決意を伝えるシーンも、「いのりさん成長し過ぎている……」ってなりました
・というか、いのりさんが決意と覚悟を表明するシーン、大体偉過ぎて泣く
・それはそうと、習い事って親の負荷も尋常じゃないですよね……いのりパパもあまり作中には出てこないけど、金銭面も含めて凄く頑張ってるんだろうな……
・ところでコーチ陣の中では蛇崩雄大先生が一番好きです
・あの緩いノリで、もの凄く面倒みがよくて、絵馬の可能性を信じ続けたところ好き過ぎる。スケート靴忘れた時、司先生叱りながらもキレ気味に「ええよっ!」って言ってるところも好き
・なっちん先生+ミケのペアも大変いいですよね
・反骨精神の塊のミケと、子どもと同じ目線で言い合いながら心を通じさせられるうなっちん先生、十二分に主役を張れるポテンシャルがあると思います
・6級試験の結果発表で、緊張してるいのりに理凰がぶっきらぼうながらも「大丈夫、よかったよ」って声かけるところも大変好きです
・司先生の演技を通じて「不遇な状況でも悲観的にならなかった」と自分との差を認識するシーンの表情良すぎる
・理凰も作中最上位クラスに精神的成長を遂げているキャラですよね……司先生の強火オタクになってるけど……
・いのりや理凰に限らず、「子どもたちの成長」が感じられるシーン割と全部好き
・けれど、こどもだけではなく、こどもを見て大人たちも気づきを得て、成長していくところも好き
・子どもと子ども、大人と子どもが、お互いに影響しあって成長していくシーンとても尊いですよね
・勝つ選手がいれば当然負ける選手もいるわけで、負けた選手の「曇り顔」についてもすげー上手いなと考えます
・ノービスAの大会、いのりの連続ジャンプの直後の夕凪の呆然とした表情、1コマだけなのにめちゃ印象的でした(四葉とハグしあってるシーンも)
・光と毎回本気で競って、負けても「可愛さ」に対するこだわり一つで顔を上げ続ける鹿本すずさんも本当いいキャラだと思います
・あと、大須スケートリンクの受付のおじいさんこと、瀬古間さんの説明能力があまりに高すぎて笑った
・なんだあの人大手チャンネルのベテラン実況解説者か?
・岡崎いるかさん、一見荒っぽくて当たりが強いように見えて、実は内心考えてることは「いのり可愛い」だけなところ超好き
・とにかく好感度高すぎるキャラがあまりに多すぎる感じです、すいません
・私名古屋育ちなんで、出てくる地名全部馴染み深くてそこも嬉しいです。毎回「千種区ーー!!」とか「中区ーーー!!」とかなってます


ということで、すいません大概長くなりました。

色々書きましたが、要約すると

「メダリスト未読の方は、私と同様、未読アドを活かす形で是非読んでみていただけないでしょうか。数多いる先行ファンの皆様、これからお邪魔いたしますよろしくお願いたします」

の一言になりまして、他に言いたいことは特にありません。よろしくお願いします。


今日書きたいことはそれくらいです。

***


【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

Photo:Joao Viegas

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