日本初公開となるメーサーロシュ・マールタ監督の傑作『ジャスト・ライク・アット・ホーム』冒頭映像
1975年、『アダプション/ある母と娘の記録』で女性監督として初めて「ベルリン国際映画祭の最高賞」金熊賞を受賞、アニエス・ヴァルダ、アンナ・カリーナ、イザベル・ユペールら錚々たる映画人らからも熱い注目を集めるメーサーロシュ・マールタ。2023年に開催され好評を博した第一弾特集上映に続き、日本で劇場初公開となる全7作品を新たにレストア/HDデジタルリマスターした珠玉の作品群を一挙上映する『メーサーロシュ・マールタ監督特集 第2章』が、11月14日(金)より開催決定。
このたび、1960年代、ゴダール作品でミューズとして輝いた彼女とはまた異なる、一人の女性としての新たな魅力を感じさせるアンナ・カリーナを捉えた『ジャスト・ライク・アット・ホーム』の冒頭映像が解禁となった。
“東欧の奇跡”メーサーロシュ・マールタ監督特集
1931年、ハンガリーに生まれ、同国を代表する名匠ヤンチョー・ミクローシュの手引きで、長編劇映画デビュー作となる『エルジ』を監督したメーサーロシュ・マールタ。その後も、サボー・ラースロー(ラズロ・サボ)やアンナ・カリーナ、イザベル・ユペール、デルフィーヌ・セリッグなどの名優がこぞって出演する作品を手がけ、アニエス・ヴァルダに至っては自身の映画制作の参考にしたことを明かすなど、その影響は計り知れず<東欧の奇跡>との呼び声も高い存在として、今なお語り継がれている。
今回公開されたのは、50年近くの時を経て、日本初公開となるメーサーロシュ監督の中期の傑作『ジャスト・ライク・アット・ホーム』の冒頭映像。血のつながらない男と少女の、親子のような親密さにカメラが向けられた中年の男と少女、そしてアンナ・カリーナが織りなす奇妙な三角関係が、軽快な音楽にのせて描き出される。やがて、男からの身勝手な電話に毅然と応じながらも、どこか戸惑いを見せてタバコをくわえるアンナ・カリーナの姿が映し出される。1960年代、ゴダール作品でミューズとして輝いた彼女とはまた異なる、一人の女性としての新たな魅力を感じさせる映像となっている。
特集上映のラインナップは、監督自身の初期―中期作品を中心に、日本で劇場初公開となる全7作品。軍靴の音が耳をつんざくなか、生き別れた両親への思いがこだまするメーサーロシュ・マールタの代表連作の第1作目『日記 子供たちへ』(第1回東京国際映画祭でのみ上映)は、「第37回カンヌ国際映画祭」審査員特別グランプリを受賞。冷戦下の恐怖政治を生き抜いたメーサーロシュ自身の記憶が刻まれたパーソナルな一大叙事詩『日記』三部作や、孤児として育った女性が両親を追い求めるデビュー作『エルジ』、中年の危機に瀕した未亡人の息苦しさをシスターフッド的に描破した『月が沈むとき』、階級格差が男女の結び付きを蝕む『リダンス』など彼女の作家性が際立つ初期作品のほか、アンナ・カリーナを共演に迎え、血の繋がらない男と少女の、親子のような親密さにカメラが向けられた中期の傑作『ジャスト・ライク・アット・ホーム』など、メーサーロシュ・マールタの目を通した<家族>の形、有様が問い直される珠玉の作品群となっている。
「自由の問題も女性の状況も私が映画を撮った頃からあまり良くはなっていないのですから、これらの作品はきっと、今の時代にも有効でしょう」。2023年に開催された特集上映に寄せて、メーサーロシュから届いたレターの一文だ。
『メーサーロシュ・マールタ監督特集 第2章』は11月14日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー