ミッキーが若者たちを血祭りに…映画『マッド・マウス』がオススメできなさすぎた / 著作権切れでもディズニーがブチギレるレベル
夢と魔法のディズニーのシンボル・ミッキーマウス。私(中澤)はディズニーマニアに連れられてディズニーランドに行った際、初めてミッキーが魔法使いという設定を教えられたのだが、最初の作品である「蒸気船ウィリー」では魔法使い感は全くない。むしろ、バッグス・バニーみたいなちょい悪なノリだ。
そんな「蒸気船ウィリー」のミッキーの著作権が消滅し、パブリックドメイン化したことを受け製作された映画が、2025年3月7日に日本公開開始の『マッド・マウス』である。“マッド” とついてる時点でおかしいことは分かると思うけど、観てみたら想像以上にオススメできない作品だった。
・夢と魔法どころか
ポスターは、返り血を浴びたミッキーのドアップで「夢の国はつまらない…悪夢のようなアトラクションで、ボクと一緒に遊ぼうよ」と書かれている。ミッキー怖っ!
もはや説明すら必要ないレベルのホラー映画だ。これだけで本作のミッキーが夢と魔法の替わりに血と阿鼻叫喚を与える存在であることが伝わってくる。
・全てがキテる
同時に湧き立つ「しょうもないんだろうなあ」という淡い期待。池袋HUMAXシネマズのポスターは電飾がついていて、その安っぽさに謎の味が出ていた。こんなに色んな感情を覚える映画ポスターは久しぶりに見た気がする。
開始直前の映画館の雰囲気がその期待に拍車をかける。真ん中辺りの席にもかかわらず、私の前には人っ子一人いない。オラ、ワクワクしてきたぞ。
・意外に良かった点
で、観てみてまず言えるのは、その期待を裏切らない作品ということだ。名作とは言えないと思う。少なくとも、特に映画マニアではない私の目から見たら、ストーリーに感動とかそういう深みは感じられなかった。
まあ、これだけ全力でしょうもなさをアピールしている映画に感動を求める人もいないと思うけど。その上で個人的に良かった点は、舞台設定だ。舞台はアメリカの田舎を彷彿とさせるゲーセンで、アーケードビデオゲームが並んでいるところに90年代感を感じる。
そこでパーティーをする若者たちがミッキーに殺されていくんだけど、いちゃいちゃしてる男女が真っ先に殺されたり、ホラースリラーのテンプレを踏襲するのが非常に背景とマッチしていた。まるで『ラストサマー』みたいな90年代後半から2000年代初頭のアメリカ映画感が良い味を出している。
ひょっとしたら、俳優陣が普通に白人ばかりなのも関係しているのかもしれない。深読みすると、ここら辺は最近のディズニーへの風刺に感じなくもなかった。
・オススメできなさすぎる
風刺的ってことで言うと、登場人物がパブリックドメイン化した部分を説明するシーンも風刺的に感じた。そのシーンではパブリックドメイン化したのは『蒸気船ウィリー』のミッキーだけで、例えば白黒でないとダメとかの細かいルールがあることをわざわざ説明するのだが……
直後に返り血でミッキーに赤が足される。シニカルな目線で見るにしても大分キツめだ。そもそも、目が繰り抜かれたり、スプラッターな部分がお茶を濁さず映されるのもキツイ。ゆえに、相手を選ぶどころか、全方位にオススメできない作品と言える。
・ただ……
ただ、観終わって1つ思ったことは「映画ってこれくらい好き勝手やってもいいよな」ってこと。万人が納得できるオチを用意したら名作と呼ばれるかもしれないが、全ての作品が名作や感動を目指す必要もない。
むしろ、つじつまとか評価とかくそくらえな内容には、表現に対する矜持が垣間見えた。個人的には、それを感じられただけで2000円も1時間30分の時間も無駄とは思わなかった。
とは言え、本映画が1番楽しめるのは、家でビールとポテトチップスと一緒に見るシチュエーションかもしれない。そういう意味ではAmazonプライムにでも配信されたらそれが1番良いんだけど、配信されるかは結構微妙なラインだと思う。なにせ、開始と同時にトップスピードでディズニーを煽ってるからなあ。
というわけで、著作権がクリアだろうが何だろうがディズニーがブチギレかねないこの映画。むしろ、ブチギレさせたら勝ちみたいな勢いすら感じた。よくぞ海を越えて日本で公開されたものである。
参考リンク:マッド・マウス ~ミッキーとミニー~
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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