ヒップホップ界のレジェンドGAKU-MCさんが「俺は音楽をやるためにサッカーをやめるんだ」と決意した高校時代
SBSラジオの静岡サッカー熱血応援番組「ヒデとキトーのFooTALK!」に、ラッパーのGAKU-MCさんをお招きし、オンラインで話を聞きました。聞き手はパーソナリティのペナルティ・ヒデさんと鬼頭里枝さん(2024年10月8日放送)
鬼頭:サッカーよりも日本のヒップホップのレジェンドと言える方ですよね。
ヒデ:GAKUさん、お久しぶりです。嬉しい。相変わらずボール蹴ってますね。
GAKU:蹴ってます。
鬼頭:経歴を紹介します。GAKUさんは1970年10月6日生まれ。1990年にヒップホップグループ「EAST END」を結成。「DA.YO.NE」などのヒットを生み、その後はソロとして活動。また、Mr.Childrenの桜井さんとともに結成した「ウカスカジー」などでも活躍。
年間およそ60本のライブに出演する傍ら、年間100試合ほどなさっている大のサッカー好きというか、ほぼサッカー選手です。今年ソロデビュー25周年を迎え、記念のニューアルバムを発表しています。
ヒデ:サッカー選手が合間にライブやってるような感じなんすよね。今週、来週あたり、またサッカーをするわけですよね?
GAKU:もう日常のことです(笑)僕らの事務所がサッカーコートの運営もしてるので、そこでよくやってます。
「この音楽をやるために、きっと僕はサッカーを諦めることができた」
ヒデ:いつ頃からサッカーをしていたんですか?
GAKU:小学校低学年から高校1年までちゃんと部活をやってました。高校1年生の時にレギュラーが取れず「辞めてやる!俺は音楽をやるためにサッカーを辞めるんだ!」と。
ヒデ:辞めてくれたからこのヒット曲が生まれてるんだよね。サッカーを始めたきっかけは何ですか?僕らの時代って「キャプテン翼」の前だから、野球の方が多かったじゃないですか。
GAKU:そうですね。野球で王貞治さんが引退して、「もう未練ねぇ」みたいな感じになりまして。
「キャプテン翼」が「週刊少年ジャンプ」で始まったぐらいだと思うんですよね。それで面白くてやってたんですけど、中高弱小校だったんです。箸にも棒にも掛からない感じだったので、部活を「辞めたいな」と。でも実際に辞めると、部活の友達とかと上手くコミュニケーションを取れなくなりました。帰宅部の所作がわからなくて、家にこもるような感じになったんです。
その時にヒップホップと出合って、「この音楽をやるために、きっと僕はサッカーを諦めることができたんだ」と言い聞かせてたような高校時代でした。
ヒデ:ヒップホップもそこまで国内で浸透しているわけじゃなかったですよね。
GAKU:学校に1人か2人、ヒップホップを知ってる人がいればマシな感じでした。
ヒデ:その中でヒップホップに行ったのはすごい。
GAKU:当時ブレイクダンスも流行ってて、「背中でくるくる回るのすげえな」と思うこともあったんですけど、サッカー部でレギュラー取れないやつがそっちでレギュラー取れる訳もなく。
でも、後ろで鳴ってる音楽にすごい興味をもちました。そこに興味を持つやつもいなかったんで、「マイナースポーツで早めに代表に入れる」感じでした。
ヒデ:背中を見て育ったアーティストがたくさんいますよ。
キャンピングカーでジュビロの試合に
ヒデ:嬉しいことに、サッカー以外にも僕とGAKUさんに共通点があるんですよ。
鬼頭:何ですか?
ヒデ:キャンプですよ。
GAKU:「キャンピングカーアワード」とかも取ってらっしゃるんですよね?
ヒデ:タイミングが良くて、2013年の第1回に取らせていただいたんです。GAKUさんは、マイクロバスを丸々キャンピングカーみたいにするっていう、めちゃくちゃ羨ましいことをしてるの。
GAKU:ヒデさんよりもっと後ですけど、僕も賞いただいて、「1年間自由にデザインしたキャンピングカーを使ってほしい」って言われました。僕ら、ライブツアーをレンタルのキャンピングカーでやってたんです。
キャンピングカーって大体ダブルベッドが2つ。でも、男4人なんで「ダブルベッドかよ」みたいなのがありますでしょ。だから、「シングルベッドにしてほしい」とか、「楽器が載せられるスペースを残してほしい」みたいにリクエストしたら、それを作ってくださって。
ヒデ:調べたら写真すぐ出てくるから、見てみて。めちゃくちゃかっこいいから。キャンピングカーでツアーを始めたきっかけは?
GAKU:長いこと音楽やってまして、47都道府県ほぼ制覇してるはずなんですけど、なにせ覚えてない。ライブ行って、打ち上げ行って飲んで帰って、ビジネスホテルだと朝起きて「今日どこでしたっけ?」みたいな感じだったんです。
ある時から、それが「もったいないな」と思うようになって。最初はハイエースで行ってみようっていうツアーをやったらめちゃくちゃ面白くて、「ビジネスホテルやめたらもっと面白くなるかも」みたいなことで、キャンピングカーをレンタルし始めました。
ヒデ:メンバー同士の仲がいいからでしょうね。俺、ワッキーと2人でキャンピングカーはきついっすもん。イノシシ乗せるようなもんですからね(笑)
GAKU:自分の車で運転していくと、その街の魅力が分かるようになりますね。キャンピングカーにシャワーはついてないんで、基本的には銭湯や温泉回っていくんすけど、静岡は「サウナしきじ」とかもあって、すごいキャンピングカー旅に向いてるなと思ってます。
ヒデ:静岡はロケーションもいいし、山の幸と海の幸があって、ご飯も美味しい。
GAKU:今年の7月から8月はキャンピングカーで1ヶ月ライブツアーしてたんですけど、たまたま日程が合ったので、磐田のホームゲームを見に行ったりしました。
J1で静岡ダービーが観たい
ヒデ:Jリーグは現在、磐田ジュビロがなかなか苦しいです。ジュビロに対してどういうイメージがありますか?
GAKU:本当だったら優勝争いしてなきゃおかしいチームだと思うんですけどね。
ヒデ:清水もそうですしね。
GAKU:そうなんです。だから頑張ってほしい。清水はもうこのままきっと行く(昇格する)と思うので、僕はダービーが観たいなといつも思ってます。
ヒデ:J1でダービー観たいね。
大岩剛さんの座右の銘から作った曲
鬼頭:先週、デビュー25周年を飾るニューアルバムを発売しました。前作から4年経っています。
GAKU:ミュージシャンとしては、1年にCDを1枚出してツアーに行くのが理想だと思うんです。でも、コロナ禍で僕らの存在価値みたいなのがあんまり感じられなくなったというか、不要不急って言われてライブがなくなって。そこで「自分の何か作ってるものとか、やってきた仕事って何だったんだろう」と悩みに入っちゃってですね。
それで、作曲が止まった時期もあるんですけど、配信でライブをやってみたり、ちょっとずつマスクしながら人が帰ってきてくれたりした時のリアクションで僕らも勇気をもらって、そこからスイッチが入ったって感じですかね。
ちょっと時間はかかりましたけど、これほど自問自答した時期はなかったんじゃないかなという印象でした。
鬼頭:タイトルが「Master of Ceremonies」。どんな思いでタイトルをつけられましたか?
GAKU:いろんなことをやってる中で、「自分の芯はラッパーですよ」と今一度皆さんにお伝えして、「悩みあぐねたラッパーの本音を聞いていただきたい」みたいなところはあったかもしれないですね。
鬼頭:今回、トラック抜きにすると楽曲は12曲ありますが、サッカーにまつわる曲も入ってるんですよね?
GAKU:1曲、静岡出身の大岩剛さん(パリ五輪・サッカー男子日本代表監督)とお話してた時に、ふっといただいた言葉がすごく印象に残ってて、それから作った曲が入ってます。
ヒデ:ちなみにワードというのは?
GAKU:「人間万事塞翁が馬」っていう昔からあることわざなんですけど、剛さんはそれが座右の銘だと言ってました。オリンピックの直前に、「どんなときにも平常心だ」とおっしゃってくださったんです。
彼のタイミングと思いと、いろんなものが相まって、その言葉が輝いて見えました。すぐに曲を作って、海外にいる試合直前の大岩さんに「できたんで聞いてください」と送りました。
ヒデ:彼は芯があるし、今回のオリンピックで面白いサッカーをしてくれました。
GAKU:素晴らしかったですね。
ヒデ:この番組に出ていただいたことがありますが、魂を感じる人ですもんね。
11/3 静岡「LIFE TIME」でライブ
鬼頭:11月、静岡でライブがあるということです。
GAKU:静岡にはいつも大好きで伺わせていただいてるので、今回も11月3日に静岡の「LIFE TIME」で。
ヒデ:メッセージがすごい来てます。「『勝利の笑みを 君と』、もう10年前になりますが、いつも聞いています。アイスタでのMV撮影のときの裏話を聞きたいです。エスパルスのチャントにも使いたいぐらい、本当に好きな曲です」
GAKU:「勝利の笑みを 君と」は、2014年のワールドカップの前に完成して、MVはエスパルスのホームスタジアムで撮りました。あそこのスタジアムはめちゃくちゃ芝がいいじゃないですか。僕らもちょっと入れたんですけど、「撮影なんかしないでサッカーやりたい」「サッカーさせろ」って言ってましたね。
ヒデ:ボール蹴りたくなりますよね。
鬼頭:Jリーグアウォーズ「ベストピッチ賞」をもらっていますからね。
GAKU:ベストピッチ、素晴らしかったです。
鬼頭:「Master of Ceremonies」から1曲流す前に、皆さんにメッセージをお願いします。
GAKU:静岡に本当に足しげく通わせていただいてましたので、静岡の皆さんとまた仲良くなりたいので、ぜひ聞いてください!
ヒデ:これからも我々サッカーファンを盛り上げる、鼓舞する曲を作ってください!