メタ認知とは?ビジネスへの効果やトレーニング方法を解説
自分自身の特性や思考を客観的に自覚する能力である「メタ認知」。自己認識が深まり成長機会や人間関係にプラスに働くことから、ビジネスパーソンとして身に付けておきたいスキルの一つです。
そこでこの記事では、メタ認知の重要性やビジネスに及ぼす効果、メタ認知を高める方法などについて分かりやすく解説します。
メタ認知の意味とは
メタ認知の「メタ」は「高次の」という意味を持ち、メタ認知は「 自分の認知状態をより高い次元から認識する能力 」を指します。つまり、メタ認知とは自分自身の物事に対する思考や記憶などを客観的に認知するスキルです。また、 自分の言動を自覚し、適切に対処したり言動を改めたり、自分自身をコントロールする能力も含まれます 。
この概念は、アメリカの心理学者ジョン・H・フラベル氏によって1970年代に提唱されたもので、主に認知心理学で使われている用語です。メタ認知が高いと知能以上に学習結果を高めるなどの研究結果も発表されており、教育の現場でも重要視されています。
メタ認知の重要性
メタ認知は、近年ビジネスや組織行動の分野でも注目を集めています。メタ認知が低いと、ビジネスシーンに限らず日常生活でも自己成長や人間関係に支障をきたしてしまうため、メタ認知を高めることは重要なのです。
以下でメタ認知が低い場合のデメリットを一部紹介します。
自分の欠点が受け入れられず、成長機会を失ってしまう 周囲の意見を聞き入れず、自己中心的な人だと判断されてしまう 問題の原因に気付けず、課題解決や目標達成ができない
自分を客観視して正しく自己評価ができなければ、自分の欠点を受け入れられず、他人からのアドバイスも素直に聞くことができません。メタ認知能力を伸ばせば、 物事を多面的にとらえられるようになり、問題の原因を見つけやすくなったり、目標達成のために必要な行動を明確にしやすくなったりする でしょう。
メタ認知の種類
メタ認知は大きく2種類に分かれ、さらにいくつかの要素から構成されています。ここでは、メタ認知の種類とそれぞれの構成要素について解説します。
メタ認知的知識
メタ認知的知識とは、「トラブルにも焦らず対応ができる」「人をサポートするのが好き」「同じ作業の繰り返しや単純作業が苦手」といった自分の長所や短所、得意分野や苦手分野など、自分自身を分析して得た情報・知識を指します。
メタ認知的知識はさらに3つの要素に分類されるので、下記でそれぞれ詳しく見てみましょう。
メタ認知的知識の3要素
メタ認知的知識を構成する要素は下記の3つです。
①「人間の認知特性」に関する知識
「人間の認知特性」に関する知識とは、 一般的な人間の認知の特性や自身の長所・短所、得意・不得意、趣味嗜好 などを自覚することを意味します。例えば、「一つのタスクに長時間取り組むと、エラーが増加する傾向がある」という人間の特性や「細かい作業が得意」といった自身の行動傾向に関する知識が挙げられます。
②「課題」に関する知識
「課題」に関する知識とは、 取り組むべき課題についての理解や知見 を指します。例えば、「イベントの企画よりも、舞台裏での実務のほうが現場の雰囲気をよく感じ取れる」「複雑な手順を習得するには、単純な作業を覚えるのと比較して、約2倍の時間を要する」といった認識が該当します。
③「問題解決の方略」に関する知識
「問題解決の方略」に関する知識とは、 問題解決のための手段について知っている情報 です。例えば、「複雑な事象の関連性を理解するには、図表化して視覚的に表現すると効果的」や「課題の本質を効率的に把握するには、どのような分析ツールが適しているか」などの知識が挙げられます。
メタ認知的活動(技能)
メタ認知的活動(技能)とは、メタ認知的知識をもとに、自分の行動や思考パターンを客観的に観察して、必要に応じて調整する能力を指します。メタ認知的活動(技能)はメタ認知的知識の応用であり、実際に問題解決などをする際に役立つスキルとされています。
2つの要素に分類されるメタ認知的活動(技能)について、それぞれ解説します。
メタ認知的活動(技能)の2要素
メタ認知的活動(技能)を構成する要素は下記の2つです。
①モニタリング
モニタリングは、自分の内外で起きている状況を自覚し、メタ認知的知識と照合しながら自身について評価することです。例えば、「自分の行動や思考パターンに問題がないか」「現在の課題に対して十分な知識や経験があるか」「自分の強みや弱みが状況にどう影響しているか」などの自分の認知を確認していくことを指します。
②コントロール
コントロールは、モニタリングの結果をもとに必要な対策を講じる能力です。感情をコントロールしたり、改善に向けた行動を取ったり、経験を踏まえて適切に能力を向上させたりといったことが挙げられます。例えば、「自分は○○が苦手だから、こうやって克服しよう」「前回の選択は○○の点で後悔したから、今回はより良い選択をしよう」といったような取り組みを行うことを指します。
メタ認知がビジネスにもたらす効果
ここでは、メタ認知がビジネスにもたらす4つの効果について解説します。
対人関係スキルが向上する
メタ認知能力が高まると、自分の考えと実際の表現の差異、また自分の表現と他者の理解の差異を認識できるようになります。これにより、組織内のコミュニケーションがより円滑になります。さらに、現在進行中の対話そのものについて客観的に議論する能力も身に付くでしょう。これは、場の雰囲気が悪化したときや、議論が本筋から外れたときなどに特に有効です。
課題解決能力が強化される
メタ認知能力により、問題の早期発見が可能になります。さらに、論理的な思考プロセスが自然と身に付き、問題の原因を段階的に分析して要素間の関連性を明確にし、状況の本質的な把握、迅速な解決策を立案できるようになります。その結果、さまざまな規模の問題や複雑な課題に直面しても効果的に対処できるようになり、組織全体の対応力が向上します。
自己認識が深まる
メタ認知能力が高ければ、自分独自の特性や能力を明確に認識できるようになります。これにより、自身の強みを最大限に生かした効率的な業務遂行が可能になります。さらに、自己分析能力も向上し、自分の弱点や改善点を冷静に把握できるようになります。これは個人の成長機会を増やし、継続的な自己改善につながります。
イノベーションが促進される
不確実性の高い現代の環境下では、前例のない課題に対する新たな解決策が求められます。メタ認知能力を発揮することで既存の枠組みにとらわれない斬新な発想が生まれ、革新的な価値創造につながるでしょう。また、メタ認知能力は技術革新やグローバル化で急速に変化する現代社会への適応力も高めます。メタ認知能力の高い人材は自身の知識や考え方が時代遅れになっていないかを常に確認し、必要に応じて柔軟に自己変革することができるのです。
メタ認知能力のトレーニング方法
前章から分かるとおり、ビジネスパーソンに欠かせないスキルであるメタ認知。そのトレーニング方法を3つ紹介します。実践できそうなものからぜひ取り組んでみてください。
自己観察を習慣的に行う
メタ認知能力を鍛える方法のひとつとして、 周囲の状況や他者の行動を観察し、自分の行動や考えが適切か考慮して調整することを指す「セルフモニタリング」 が役立ちます。
日常で起こる出来事について、下記のようなセルフモニタリングを行うことを習慣化してみましょう。
1.現在の心境や問題点などを書き出す 2.重要度を評価し、最優先の課題を特定する 3.選定した問題の根本原因を分析する 4.原因に基づいて対策を考案する 5.対策を実行に移す
セルフモニタリングを行うことで、メタ認知能力が高まるだけでなく、自分のストレスに気付きやすくなったり、パフォーマンスが向上したりというメリットも得られます。
マインドフルネスを実践する
「マインドフルネス」とは、善悪の判断や過去、 未来といった雑念にとらわれず「今この瞬間の気持ち」「目の前の経験」に意識を向けて、自分のありのままの心身状況を受け入れ、体や心を整える 方法を指します。
マインドフルネスの代表的な実践方法は下記のとおりです。
1.姿勢を正して着席する 2.呼吸に意識を集中させる 3.身体の部位ひとつひとつに意識を向ける 4.不快な感覚があれば呼吸と一緒に吐き出す 5.身体に向けていた意識をゆっくり戻していく
マインドフルネスを実践すると、感情をコントロールできるようになり、自然と自分を客観視することができるため、メタ認知能力を高められます。
マインドフルネスについては、こちらの記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
「マインドフルネスとは?効果や瞑想のやり方を分かりやすく解説」
他者からフィードバックをもらう
自分の行動や経験を振り返ったり、周囲の人々に意見を求めたりする のもメタ認知の向上に有効です。フィードバックをもらうことで他者の意見を踏まえた円滑なコミュニケーションが可能となり、人間関係の改善にもつながります。また、他者の視点からさまざまなコーチングを受けることで、自身の感情や考えに囚われず、客観的に自己分析をする能力も習得可能です。ときには、問題だと思っていたことが単なる思い込みだったと気付く場合もあるでしょう。
まとめ
今回は、自分自身の思考や認識を客観的に認知する能力である「メタ認知」について、ビジネスにもたらす効果やメタ認知スキルの高め方などを解説しました。メタ認知能力は自己成長を促し、結果的に組織全体の競争力向上にも大きく貢献します。変化の激しい現代社会において、メタ認知能力の向上は個人と組織の持続的な成功のための重要な要素なのです。この記事を参考に、ぜひメタ認知のスキルを鍛えてみてください。
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