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機動戦士ガンダムの原点?「超電磁マシーン ボルテスⅤ」フィリピンで実写化されて逆輸入!

Re:minder

2024年10月18日 映画「ボルテスⅤ レガシー」劇場公開日(日本)

「超電磁マシーン ボルテスⅤ」が実写版で劇場公開


快挙だ‼ 1977年に放送された日本のテレビアニメ『超電磁マシーン ボルテスⅤ』が何とフィリピンで実写化。日本でも『ボルテスⅤ レガシー』と題し、フィリピン版には含まれないシーンを追加した “超電磁編集版” がこの10月に凱旋、劇場公開を果たした。

ジャパニメーションが世界を席巻する以前から、フランスでの『UFOロボ グレンダイザー』と共に、フィリピンでの『ボルテスⅤ』人気を耳にしていた。しかしながらその過熱ぶりは大人気などという生やさしいものでなく、国民の多くが老若問わず『ボルテスⅤ』を愛し、ミッチこと堀江美都子が歌う「ボルテスⅤの歌」は “第2の国歌” とも言われ、現地の人たちも当たり前のように「♪たとえ 嵐が吹こうとも」と、この歌を日本語で愛唱しているという。

マルコス政権崩壊後は最終回まで無事放送


1978年の放送当時、政情不安な状態にあったフィリピンでは、以下のような事態があったとか。

「カルト的人気作となったボルテスⅤだが、最後の4話を残したところでマルコス政府が放送中止を命令。理由は諸説ある。戒厳令下で「帝国に対する抗戦」をテーマとする本作は政府に不都合だった説、放送していたGMA−7は当時非政府系放送局だったため攻撃を受けたという説などだ」

日刊まにら新聞発行 フィリピン生活情報【ナビマニラ】2022年6月30日)

マルコス政権崩壊後は最終回まで無事放送されたらしいが、この国にとって如何に『ボルテスⅤ』が大きな存在であったかを語るエピソードである。

熱狂的なファンが番組終了後も強烈に支持していた、一種の伝説的作品


一方で、今回の映画化について “何を日本は先を越されとんねん” という気がしないわけでもない。一時期、日本でも往年の昭和アニメが続けざまに実写映画化されたが、その多くはリスペクトが感じられない残念な仕上がりであった。しかし、今回の『ボルテスⅤ レガシー』は予告編を見ただけでも原典に対する溢れんばかりの愛とリスペクトに満ちていると分かる。先を越されたという悔しさはさておき、期待するなというほうが無理な話である。

そしてもうひとつの不満。“日本では知名度の低い『ボルテスⅤ』とかいうアニメが、なぜかフィリピンで大人気” といった言い方をするのは、ええ加減にやめんかい。そういう言い方をする人は、きっと放送当時の熱気を知らないのだろうが、この『ボルテスⅤ』は熱狂的なファンが番組終了後も強烈に支持していた一種の伝説的作品。『勇者ライディーン』『超電磁ロボ コン・バトラーⅤ』に続く、長浜忠夫監督によるいわゆる “長浜ロマンロボットアニメシリーズ” の第3弾にあたるのだ(さらにこのシリーズは『闘将ダイモス』『未来ロボ ダルタニアス』へと続く)。

ⓒ東映

「ボルテスⅤ」が「機動戦士ガンダム」に与えた影響?


その『ボルテスV』の物語はーー
はるか彼方の宇宙ボアザン星から、若き総司令官プリンス・ハイネルの指揮のもと、地球征服軍が飛来し総攻撃をかける。地球の最期が来たかと思われたその時、密かに戦闘訓練を受けた5人の若者たち(3兄弟である剛 健一、剛 大次郎、剛 日吉と、峰 一平、岡めぐみ)が操縦する5台の戦闘機が合体し、巨大ロボ・ボルテスⅤとなってボアザン星人に立ち向かう。そう、剛3兄弟の父・剛健太郎が、この日を予見して完成させていたロボットが、ボルテスⅤなのだ。

といった導入部だけを見ると、作品をご存知ない方は “なぁんだ凡百のロボットアニメではないか” と思われるかもしれない。しかし、長浜忠夫監督は各話の演出担当者に “ボルテスⅤの演出方針” と題し、以下のようなメッセージを配布している。

『ボルテスⅤ』は、スタートこそ今までのロボット物の類似物と思わせ、いつの間にか、全く新しい画期的なロボット物が出来ていた…… ということにしたい。総員で協力して、新しいロボット物の歴史を築こうではないか!

そんな長浜監督の狙い通り、作品は序盤から急速に大河ドラマの様相を呈し始める。本作に参加し、切れ味鋭い演出を見せていたとみの喜幸(現:富野由悠季)は、のちに “長浜忠夫の方法論を横で見ながらいいところは盗んでいった” といった旨の述懐をしているらしい。後年、富野監督による『機動戦士ガンダム』をはじめ、ドラマ性の高いロボットアニメが続々と世に出るが、この『ボルテスⅤ』はそれらの作品群に少なからず影響を与えたに違いない。

ⓒ東映

敵側の登場人物が物語を牽引するという異色の展開


『ボルテスⅤ』というドラマの中で重要な役割を果たす2人の登場人物がいる。それは、ボアザン帝国の貴族でありながら、貴族の印である角(つの)が生まれつきなかった天才科学者・ラ・ゴール、そして前述したボアザン星の若き総司令官プリンス・ハイネルである。つまり、地球人から見れば敵側の登場人物が物語を牽引するという異色の展開とも言えるのだ。

特にプリンス・ハイネルは、その高貴で美麗な佇まいから “美形悪役キャラ” として、多くの若い女性ファンから熱烈な支持を受けた。長浜監督の発言からは、ハイネルのキャラクターには宝塚歌劇のイメージがあったと伝えられているが、そのドラマティックな生きざまには、他のどの登場人物も霞んでしまう程の魅力があった。また、『ボルテスV』のストーリーは『ベルサイユのばら』の影響も受けていたようだ。

ⓒ東映

人が人を差別する事の不当さを伝えたかった


今から『ボルテスⅤ』に触れる方のためにここでは詳述を避けるが、その最終回である第40話「崩れゆく邪悪の塔‼」は、日本のテレビアニメ史の中でも、最高に哀しく儚く美しく、そしてドラマティックな屈指の最終回だと断言できる。

金山明博作画監督のもと、作画面での素晴らしさも最高潮に達し、“このハイネル様のセル画が欲しい!!” と思わずにはいられないカットの連続で、クライマックスシーンの盛り上がりは筆舌に尽くしがたいものがある。のちに長浜監督は、『ボルテスⅤ』について次のように記しているが、その思いが見事に結実した最終回であった。

ⓒ東映

「『ボルテスⅤ』は、おそらくロボット物では初めて社会的テーマを正面にすえた作品であろう。戦争を少年時代に経験した私にとって、それは切実なテーマであった。戦争を知らない世代に、戦争の持つ、また生み出す悲劇を、人が人を差別する事の不当さを伝えたかったのである」

マジックボックス刊「COMBATTLER V・VOLTES V・DAIMOS ROMAN ROBO ANIME CLIMAX SELECTION」より

そして『ボルテスⅤ』は、剛健太郎の次のようなモノローグにより、大いなる余韻を残して幕をおろすのである…。

子供達よ
父や母や兄弟を愛するように
人間同士が宇宙を越えて本当に愛し合えるならば
そして地上のあらゆる動物や植物を
山や海を愛することが出来るならば
宇宙はいつまでも平和だ

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