賃上げ、物価高に届かず 実質賃金マイナスから脱却するには?
3月13日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、木曜コメンテーターで京都大学大学院教授の藤井聡氏と寺島尚正アナウンサーが、企業の賃上げに関するニュースについて意見を交わした。
藤井氏「しっかりとしたデフレ脱却対策を行っていないから実質賃金は下がっていく」
2025年春季労使交渉では高い水準の妥結が相次いだ。24年も高水準の賃上げを実現したが、物価上昇に賃上げが追いつかず実質賃金はマイナスだった。足元でも食品など物価高に歯止めがかからず、プラス転換への道のりは険しい。賃上げ持続には生産性の改善も欠かせない。
25年春の労使交渉で、大手企業では連合が目標に掲げる「5%以上」の賃上げが続出した。中小を含む全体の賃上げ率は前年の平均5.33%から4.92%へと4年ぶりに低下する見通しだという。日本経済研究センターが主要エコノミストの予測を集計した。
寺島アナ「今年の春闘、12日が集中回答日でした。それぞれの企業の賃上げ、この姿勢が明らかになったわけですけれども、藤井さん、この辺りはどう評価されますか?」
藤井氏「これはどういうふうに解釈するかというと、日本は1997年から消費増税があって、デフレーションになったと言われていますよね。で、最近はコストプッシュインフレといって、ウクライナ戦争以降、輸入品が高くなって、石油とか食料品とかが高くなってきているということで、表面上はインフレになっていたので『デフレじゃないんかな』っていうふうに言われてきたんですけれども、事実上は賃金の上昇が物価上昇に合わないということで、実質賃金は伸びていないわけですよね」
寺島アナ「そうですよね」
藤井氏「それは結局どうなるかというと、実質GDPが伸びていないっていうことですよね。したがって、名目GDPを見ていると伸びているように見えるんですけれども、実質GDPは全然伸びていない。要するに経済は実質的に全然伸びていないということで、これはいわゆるデフレーションの帰結なんですよね。物価高というのがあるので、一般的なデフレーションとは少々違うように見えますけれども、実質GDPとか実質賃金のベースで見ると、やはり日本はいまだにデフレーションの状況にあると。厳密に言うとスタグフレーションと呼ばれる状況にあるわけですけれども、広い意味で言うところのデフレーションにあるということなんですよね」
寺島アナ「はい」
藤井氏「これはなんでそうなっているかというと、石破政権のみならず岸田政権も含めて、物価高状況において、しっかりと内需が拡大するような対策、消費税減税だとか公共投資の拡大とかが一般的なデフレ脱却対策なんですけど、それを行っていないからこうなっているわけで、民間でどれだけ賃金を上げようが、政府がしっかりとしたデフレ脱却対策をとっていない以上は残念ながらデフレ脱却はできないわけで、いまご説明させていただいたような実質賃金が上がらないどころか寧ろ下がるという状況からは脱却できないということになるわけですね」