マダニ感染症が過去最多 今年8人目は80代女性 日本紅斑熱も…症状と予防策は?
■マダニにかまれた自覚なし 80代女性が救急搬送
静岡県内で、マダニが媒介する感染症の発生が続いている。県は、80代女性が新たに「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に感染したと発表した。今年に入って8人目で、年間最多を更新。さらに、日本紅斑熱の患者も確認され、こちらも20人目と過去最多を上回った。
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SFTSの感染が確認されたのは、賀茂保健所管内に住む80代の女性。9月10日に発熱し、13日に意識がもうろうとしたため救急搬送された。その後、県環境衛生科学研究所で検査が行われ、18日にSFTSと診断された。マダニにかまれた自覚はなく、刺し口も確認されなかったという。
また、日本紅斑熱の感染者も確認されている。神奈川県内に住む80歳代の女性は9月10日に発熱して13日に入院。翌日に発疹が出現し、検査の結果19日に日本紅斑熱と診断された。発症前には農作業を行っており、感染したマダニに咬まれたとみられる。現在も入院中だが、快方に向かっている。
SFTSは、SFTSウイルスを保有するマダニに咬まれることで感染する。6〜14日の潜伏期を経て発熱や消化器症状が現れ、重症化すれば死に至る危険もある。血液や体液を通じて人から人へ感染する事例や、犬・猫を介した感染も報告されている。県内では2021年に初めて確認されて以降、毎年感染者が報告されており、今年はすでに8人確認され、そのうち3人が死亡している。
■日本紅斑熱の患者も過去最多20人 死者も1人
一方、日本紅斑熱は日本紅斑熱リケッチアという病原体を持つマダニが媒介し、潜伏期は2〜8日となっている。高熱や発疹が特徴で、重症化すれば命に関わる。人から人へ感染はしないが、県内では2020年以降、毎年5〜20人の発生が続いている。今年はすでに20人に達し、死亡例も1人確認された。
県は、マダニの活動が活発な春から秋にかけて特に注意を呼びかけている。野山や畑に入る際は長袖・長ズボン・帽子などを着用し、肌の露出を減らすことが重要だ。ズボンの裾や袖口から侵入することもあるため、服装の工夫も欠かせない。また、市販の忌避剤は有効だが、完全には防げないため複数の対策を組み合わせる必要がある。
屋外活動後は、入浴時などに全身を確認し、マダニに咬まれていないかチェックすることが勧められている。もし付着が見つかった場合は、無理に取らず医療機関を受診するよう求めている。発熱や発疹、食欲不振、だるさなどの症状が出た場合も、速やかに受診し、マダニに咬まれた可能性を医師に伝えることが大切だ。
犬や猫などのペットにマダニが付着して家庭内に持ち込まれることもあるため、駆除剤の使用や体調観察も欠かせない。外で生活する動物がどのような病原体を持っているかは分からず、接触によって感染リスクが高まる可能性もある。特に動物の体液や死骸には不用意に触れないことが求められている。
県では近年、マダニ媒介感染症の発生件数が右肩上がりに増加している。県感染症管理センターは「予防策の徹底と早期受診が命を守ることにつながる」と強調する。今後も感染の拡大が懸念される中、日常のちょっとした心がけが安全につながると言えそうだ。
(SHIZUOKA Life編集部)