毒を持つ『ゴンズイ』の群れ「ゴンズイ玉」の構成員は全員兄弟だった 他の群れと混ざることは無し
ダイビング中に岩陰で動く魚の群れを発見し、海で生きる珍しいナマズかと思い撮影に夢中になりましたが、それは毒を持つ「ゴンズイ」でした。夢中になりすぎて危うく刺される危険もありましたが、今回はこの危険生物「ゴンズイ」について紹介します。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ゴンズイとは?
ゴンズイはナマズ目ゴンズイ科に属する海に住む魚。本州中部以南の西太平洋に生息しています。鱗はなく、表面は粘液で覆われています。
口元に4対のひげがあり、顔つきもナマズそっくり。幼魚のときは茶褐色に黄色の縦線がありますが、成長につれてこの模様は不明瞭に。成魚になると全長は20cmほどになります。
雑食性で小さなエビやカニを食べますが、他の魚の体を掃除する「掃除魚」としての一面を持っています。
その愛らしい見た目とは反対に、背鰭と胸びれに毒のあるトゲを持っています。釣り人には目的以外の魚として釣れることもあるので、針から外すときは十分に注意が必要です。なお、この毒は死んでも失われないので、死んだゴンズイを見かけても触ったりしないようにしましょう。
このトゲと、トゲの基底部を擦り合わせてギーギーやグーグーと鳴くことから、地方では「ギギ」や「ググ」と呼ばれることもあるようです。
兄弟の結束力「ゴンズイ玉」
ゴンズイは幼魚のときに集団で行動し、成魚になると単独で行動することが多いようです。幼魚の時の集団の群れを「ゴンズイ玉」と呼びます。
数十から数百匹の群れを作り、一斉に移動する様子はぎゅっと玉のようになっているため、この呼び名にも納得です。
では、ゴンズイたちはなぜゴンズイ玉をつくるのでしょうか?
それは外敵から身を守るためです。
幼魚のときは毒が成魚の時ほど強くありません。集団パワーの毒で身を守り、さらに塊になって大きく見せることで外敵を寄せ付けないようにしています。絵本の『スイミー』の物語を思い出しますね。
玉になった彼らは強気です。筆者はゴンズイ玉がこっちに向かって泳いできたときは、少し怖くなって思わず道を譲りました。
このゴンズイ玉は、実は兄弟で構成されています。
「ホスファチジルコリン」というフェロモンを出して自分たちの群れを認識しているため、他の群れと一緒になることはないようです。兄弟の結束力は強いですね。
刺されたときの対処法
万が一ゴンズイのトゲに刺されると、火傷のような強い痛みに襲われ、刺された箇所が腫れ上がります。刺されるのが2回目以降の場合、人によってはアナフィラキシーショックにより命の危険にさらされることもあるようです。
また、ゴンズイの毒針はギザギザした「かえし」のような形状です。もしかしたら皮膚にそのまま残ってしまうかもしれません。
もしも刺されたら、傷口を真水で洗い流し、火傷しない程度のお湯に浸けます。毒針が手に残っていることもあるため、医療機関で受診しましょう。
(参考:ゴンズイー環境省 せとうちネット)
ゴンズイの毒はオコゼやカサゴのようなタンパク質性の毒なので、加温することで毒が不活性化されるようです。
温度は45℃や50℃などとも言われておりますが、温度が高いほど毒は不活性化されますので、「やけどしない程度の温度のお湯」がいいようです。
見ていると癒されるゴンズイ玉ですが、毒針を持つ危険な生物。観察の際は十分安全に気をつける必要があります。
<keiko/サカナトライター>