「大阪芸大にピアノ科はない」ことが話題だが…“音楽はお金にならない”は本当か? 芸大卒の意外な稼ぎ口
「大阪芸大でピアノ科募集→受験生ゼロ」で炎上
参議院選挙で注目を集める参政党の「さや」候補が、街頭演説で「大阪芸大でピアノ科の募集をしたら受験生ゼロ」と発言し物議を醸した。
大阪芸大にピアノ科は存在せず、正しくは「演奏学科」の「ピアノコース」。SNSでは「嘘をつくな」と集中砲火を浴びている。
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問題は、ピアノ科とピアノコースの違いよりもその後に続いた発言である。「みんな音楽できなくなっちゃってるんですよ。楽器も買えない。ピアノも買えない。親がこんなお金にならない仕事は子供にさせられないから」。
元シンガーのさや候補は音楽の大切さを訴えたかったのだろうか。本当に音楽は「お金にならない仕事」なのか。芸大や音大で学ぶのは単なる趣味の延長なのか。どんな就職先が舞っているのか――。
国立(くにたち)音楽大学声楽科を卒業し、現在はフリーライターとして活動する西村愛氏に話を聞いた。
音楽大学出身者の見解は
保育園の頃から歌が好きで、高校1年生から本格的に声楽を学び始めた西村氏は、「当時の国立音大声楽科は、現役でバリバリ歌っていた教授陣が揃っていて、声楽なら一番レベルの高い大学だった」と振り返る。
卒業後は28歳頃まで舞台活動を続け、友人とユニットを組んで400〜450席のホールでコンサートを開催。先生からの紹介でオペラ出演なども経験した。
自衛隊や警察も就職先になる
「私は喉を痛めたので諦めたが、大学の同級生160人のうち、それぞれ何らかの形で音楽に関わって生計を立てている。オペラ団体や合唱団に所属したり、音楽教師になったり、様々な働き口がある」
音楽療法などを学び、病院や介護事務所などの福祉分野で活躍したり、自衛隊や警察などの音楽隊としての就職も音大卒ならではの就職先だ。
実際OBには「千の風になって」を歌った秋川雅史さんもいる。「結局は本人の努力次第。一概に『食えない』とは言えない」と指摘する。
経済的には「元は取れない」が…
では、費用対効果はどうか。西村氏は「経済的には元は取れない」と認めている。年間200万円を超える学費だけでなく、受験準備として島根県から毎月東京まで個人レッスンに通うなど、大学入学前から多額の出費があったからだ。
「音大の中でも特に高い部類で、経済的理由で入学できない学生も存在する」
それでも西村氏は「大学で学べてよかった」と断言する。その理由は、現在の仕事への応用だ。
「言葉の解釈や表現力、感じたことを言語化する能力は声楽で培ったもの。常に点数で評価される厳しい競争環境での経験や、反復練習による地道な努力の習慣は、今のライターの仕事にも活かされている」
確かに音楽教育には相当な費用がかかる。国の経済力が弱まれば、学びたくても学べない人が増えるのは事実だろう。だが、「食えるか食えないか」はその人次第であり、狭い世界だからこその稼ぎ口も存在する。
「食えない」などと決めつけられる業界ではない。
(コクハク編集部)