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絵本『ホホジロザメ』と『イリエワニ』ブックレビュー 迫力満点の絵&怖いだけじゃない?

サカナト

『ホホジロザメ』と『イリエワニ』(提供:Miyuki)

気になっていたけれど、怖くて開けなかった絵本がありました。

それが沼口麻子さん文・関俊一さん絵の『ホホジロザメ』と福田雄介さん文・関俊一さん絵の『イリエワニ』(いずれも福音館書店)という絵本です。

怖さだけじゃない!絵本『ホホジロザメ』

『ホホジロザメ』は、大迫力の絵と共に、ホホジロザメの生態を紹介する絵本です。

表紙をめくると、水面下にうっすらと見えるホホジロザメの姿。まず、水中からオットセイを狙って捕食するまでが描かれます。灰色の背中は海の色に溶け込み、オットセイは全く気づきません。

大きく口を開けたホホジロザメの白い目と歯が光り、オットセイにかぶりつきます。ホホジロザメは、獲物にかぶりつく瞬間、白目をむくそうです。克明に描かれた絵が恐ろしく、思わず絵本を少し遠ざけてしまいました。

ホホジロザメ(提供:PhotoAC)

ホホジロザメは、映画『ジョーズ』に出てくるサメ。北極と南極を除く、ほぼ全ての海に生息しています。

海の最強捕食者のように見えますが、自分より大きな個体や、シャチに捕食されることもあるそうです。

絵本では、交尾や出産の様子も描かれます。怖さだけでなく、生態もポイントを押さえて網羅され、ホホジロザメという生き物の存在を確かに感じられる1冊です。

生き抜くには過酷な世界を描く!絵本『イリエワニ』

絵本『イリエワニ』は、リアルで迫力のある絵と共にイリエワニの生態が学べます。

オーストラリアに潜むイリエワニの重さは、約1トン。見開きいっぱいに描かれるイリエワニからは、ずっしりと重さまで感じられます。

イリエワニは、髪の毛の10分の1の細さしかないものでも感じ取れる、非常に敏感な感覚器を持っているそうです。たとえ水が濁って獲物が見えなくても、水の流れや皮膚で感じ取って狩りをします。

目が合っていないからといって、決して安心はできません。

イリエワニ(提供:PhotoAC)

また、イリエワニの噛む力は動物の中で最強と言われ、大きく育ったイリエワニに敵はいないとされています。しかし、弱肉強食の世界では、大人になるまでは厳しい道のりです。

最後のページには、過酷な世界を生き抜いた大人のイリエワニが堂々と描かれています。

文を担当するのはそれぞれのスペシャリスト

文を担当されている方は、『ホホジロザメ』と『イリエワニ』で異なります。

『ホホジロザメ』の文は、沼口麻子さんが担当。沼口さんは、世界で唯一のシャークジャーナリストとして世界中のサメを取材し、サメの魅力を発信している方です。

イリエワニとホホジロザメ(提供:PhotoAC)

『イリエワニ』の文を担当しているのは、福田雄介さん。ワニ研究の中心地であるオーストラリアで活動をする、野生動物博士です。野生ワニの撮影が趣味で、週末には自ら船を操縦し、巨大ワニを探しに行くこともあるのだとか。

それぞれのスペシャリストが、人生を通して培ったものをギュッと詰め込んだ絵本になっています。

両作品の絵を担当するのは関俊一さん

関俊一さんは、幼少の頃から自然や生き物を深く愛し、魚や動物の絵を描いていたといいます。

論文「“魚”を描くー魚の化学的な描き方・必須要素の線と図形・表現のポイントー」を書かれていることからも、相当な熱意が伝わってきます。

また、爬虫類にも深く精通しており、トカゲやアオダイショウなどの飼育を通して、生態や体の構造を把握していったそうです。重さまで感じる緻密な描写は、好奇心や愛による観察から生まれていたんですね。

恐しくも学び深い至高の2冊

生き物の生態を描く絵本『ホホジロザメ』と『イリエワニ』。どちらも大迫力の絵が非常に印象的です。

もし、私が子どもの頃に出会っていたらホホジロザメの怖さに夜通し怯えていたかもしれません。しかし、絵の魅力だけでなく、生物の生まれ方や成長過程など、生態もしっかりと学習できる内容になっています。

『ホホジロザメ』『イリエワニ』に続く3作目が出るとしたら、どの生き物がフューチャーされるでしょうか。怖い怖いと言いながらも、私はいまかいまかと発売を心待ちにしています。

(サカナトライター:Miyuki)

参考文献

『ホホジロザメ(文:沼口麻子、絵:関俊一/発行:福音館書店』

『イリエワニ(文:福田雄介、絵:関俊一/発行:福音館書店)』

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