【平均〇万】介護職の退職金はいくら?いつもらえる?勤続10年の平均相場・シミュレーションを詳しく解説
退職金制度の概要
退職金とは?
退職金とは、勤めていた会社を退職する際に支給される一時金のことを指します。日本では長期勤続した社員への報奨として退職金制度が広く採用されており、一般的には長年働いたことへの労いとして支払われ、老後の生活資金の一部にもなる重要な制度です。
ただし、退職金の支給は法律上義務付けられているものではありません。制度の有無や内容は企業ごとに異なり、労働基準法では「就業規則に退職金の定めがある場合は賃金とみなされ、法的な支払義務が生じる」と規定されています。
退職金は退職時に一括支給される「退職一時金方式」が一般的です。しかし、会社によっては企業年金として分割受取りの制度を併用している場合もあります。
令和4年厚生労働省の調査によれば、退職金や企業年金など何らかの退職給付制度を導入している企業は全体の74.9%でした。つまり、大多数の企業で退職金制度がありますが、一部には制度を設けていない企業も存在するのが現状です。
介護職での退職金制度とは
介護業界における退職金制度は、勤務先の法人形態や規模によって大きく異なります。介護施設の運営主体(社会福祉法人、医療法人、株式会社など)により制度が変わり、退職金が支給されるかどうかも施設ごとに決まっているのが実情です。
法的には退職金制度の有無は各職場の裁量に委ねられていますが、介護業界は比較的退職金制度が整備されているケースが多い傾向にあります。
令和4年度の調査によれば、医療・福祉分野の企業では75.5%が退職金制度を設けており、全産業平均を下回っています。
介護施設で導入されている代表的な退職金制度には、以下のようなものがあります。
社会福祉施設職員等退職手当共済制度 独立行政法人福祉医療機構が運営する共済制度で、主に社会福祉法人が加入しています。職員の退職時に共済から直接退職金が支払われます。 中小企業退職金共済制度(中退共) 国の中小企業支援策として設けられた公的な退職金共済制度で、主に中小規模の事業所が加入しています。事業主が毎月掛金を納付し、退職時に共済機構から直接退職金が支給されます。
これらの制度に勤務先が加入している場合、職員は退職時に共済から直接退職金を受け取ることが可能です。一方で、同じ介護職でも小規模な事業所では退職金制度自体がない場合もあります。
自分の勤める施設で退職金制度が採用されているかを確認し、ある場合はその制度の種類や条件を理解しておくことが重要でしょう。
退職金はいつもらえる?支給フローと税金
退職金が支給されるタイミングは、会社や加入している制度によって異なりますが、一般的には退職後1~3か月以内に振り込まれるケースが多いとされています。
たとえば、共済制度に加入している場合は、退職時に事業主が所定の手続きを行った後、共済機構から直接本人に退職金が支払われる仕組みです。会社独自の退職金制度でも、退職後の最終給与支給日から1~2ヵ月前後で一括支給されることが一般的といえます。
ただし、事務手続きの状況や必要書類の不備によっては支給が遅れる場合もあります。そのため、退職時には会社から案内される請求手続きの書類を速やかに提出し、控えを保管しておくことが大切です。また「退職金規程」で支給時期が定められている場合もあるので、事前に確認しておくと安心でしょう。
万一、退職後3ヵ月以上経っても振り込まれない場合は、まずは元の職場へ問い合わせ、必要な手続き漏れがないか確認することが重要です。
退職金には税制上の優遇措置があり、退職所得控除という特別な控除が適用されます。長期勤続者ほど手厚い控除が受けられる仕組みとなっており、一般的な給与所得よりも税負担が軽くなるよう配慮されています。
相場シミュレーション
介護職における退職金の相場
介護業界の退職金制度は、法人形態や事業所の規模によりさまざまです。金額は勤続年数や勤め先の規模によって大きく変わってきます。
東京都産業労働局の調査(令和4年版)では、中小企業の「医療・福祉」業種の定年退職者の平均退職金が、高卒で約332万円、大卒で約342万円と算出されています。また、福祉法人など公的色の強い法人では手厚い退職金を支給する例が多く見られます。
さらに、独立行政法人福祉医療機構や中退共といった公的な共済制度と連携している企業では、安定した給付が期待できる環境が構築されているのも大きな魅力でしょう。
勤務先によって導入されている制度は大きく異なるため、個別に確認することで自分に最適な職場を見つけることができるでしょう。
勤続10年の介護職員の平均退職金相場
勤続10年程度で退職した場合、介護職員が受け取る退職金の目安は概ね数十万円から百数十万円程度とされています。実際の金額は施設の制度によりますが、具体的なモデルケースをみてみましょう。
福祉医療機構の退職共済である「社会福祉施設職員等退職手当共済制度」では、基本給22万円で10年間勤務した場合の退職金支給額は約114万円と報告されています。
一方、中退共のデータや民間企業の例では、10年勤続時の退職金は50万円から100万円台前半が一つの相場となっているようです。
このように勤続10年では退職金額はそれほど高額にならず、勤続年数が増えるに連れて緩やかに増加していくケースが多いのが特徴です。
実際に自分の退職金がいくらになりそうか知りたい場合は、職場の退職金規程や共済制度の早見表を確認するか、人事担当者に問い合わせてみるとよいでしょう。
なお退職金額は勤続年数以外に最終給与額や退職理由(自己都合退職か会社都合退職か)によっても変動します。そのため、おおよその相場を知ったうえでも、自分自身の勤務条件に照らして見積もることが必要です。
退職金が少ない場合に利用できる2つの制度
万一、勤務先の退職金が十分でない場合や制度自体がない場合でも、公的な制度を活用して将来の備えをすることができます。代表的なものとして「中小企業退職金共済制度(中退共)」と「個人型確定拠出年金(iDeCo)」の2つがあります。
中小企業退職金共済制度(中退共)
国の中小企業支援策として設けられた公的な退職金共済制度です。従業員規模が小さく独自に退職金制度を設けにくい企業でも、この共済に加入すれば従業員の退職時に退職金を用意できます。
事業主が毎月掛金を納付し、従業員が退職すると勤労者退職金共済機構(中退共本部)から直接従業員に退職金が支払われる仕組みです。国からの掛金助成もあるため、中小企業で働く人の安心材料となる制度といえるでしょう。
まずは自分の勤務先が中退共に加入しているかどうかを人事担当者に確認してみることをおすすめします。就業規則や労働条件通知書に記載されている場合もあるため、これらの書類を確認することで加入状況を把握できる可能性もあります。
もし勤務先が中退共に未加入で、かつ退職金制度が十分でない場合は、転職時に中退共加入企業を選択肢の一つとして検討することも有効でしょう。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人が任意で加入できる公的な私的年金制度です。毎月自分で決めた掛金を拠出し、定期預金や投資信託などで運用して60歳以降に給付金を受け取る仕組みになっています。掛金全額が所得控除になる、運用益が非課税になるなど税制優遇が大きな魅力といえます。
退職金が少ない場合でもiDeCoでコツコツ積み立てておけば、将来受け取る老後資金を自分で増やすことが可能です。銀行や証券会社で申し込みでき、公的機関(国民年金基金連合会)が運営主体の安心できる制度なので、退職金の不足を補う選択肢として検討する価値があるでしょう。
退職金制度を確認する際のポイントと対策
就業規則と退職金規程
退職金について確認する際には、会社の就業規則および退職金規程を読むことが重要です。就業規則とは職場のルールブックであり、退職金制度がある会社では就業規則もしくは給与規程の中に退職金に関する記載が必ず設けられています。
退職金の支給条件や計算方法、支給手続きなどが具体的に記入されている場合もあるため事前に確認しておきましょう。厚生労働省では「モデル規則」として下記のような計算方法を紹介しています。
労働基準法上、就業規則に退職金の定めがある場合、退職金は賃金とみなされ法的な支払義務が生じます。したがって労働者は会社に対して退職金請求権を持つことになり、万一会社が支払いを渋った場合でも法的に保護される仕組みとなっています。
まずは自社の就業規則に退職金制度の規定があるかを確認し、ある場合はその内容を把握しましょう。
自社の規程を理解しておくことで、自分が退職金をもらえる条件や大まかな金額を事前につかむことができます。就業規則は従業員であれば自由に閲覧できるものですので、入社時や在職中に一度目を通しておくとよいでしょう。
おさえておきたいチェックポイント
自分の勤務先や、これから就職を考えている介護施設の退職金制度を確認するとき、以下のポイントに着目することが重要です。
支給対象と条件
退職金が支給される勤続年数やその他条件を確認します。「勤続3年以上」や「定年退職者のみ支給」など、施設によって要件はさまざまです。正社員以外の職員にも支給対象が広げられているかも要チェックポイントでしょう。
自己都合退職の場合に支給されるか否か、会社都合退職との金額差があるかなど、支給要件を詳しく把握しておくことが大切です。
金額の算定方法
退職金がどのように計算されるかも重要な確認事項です。多くの会社では「基本給×勤続年数×支給率」などの方式を採用しています。勤続が長いほど支給率が高くなり、退職理由(自己都合退職か会社都合退職か)によって金額に差を設けている場合もあります。
支払時期・受取方法
退職金がいつ支払われるか、どのように受け取るかも確認が必要です。多くは退職後数ヵ月以内に一括振込されますが、企業年金制度を導入している場合は年金形式で分割受取となることもあります。
就業規則や退職金規程に「退職手当は退職後○ヵ月以内に支給」などと定めがある場合は、そのスケジュールに沿って受け取ることになるでしょう。
制度の種類の把握
会社が社内積立方式の退職金制度なのか、外部の共済や企業年金に加入しているのかも確認しましょう。例えば中退共や福祉医療機構の退職共済に加入している場合、従業員の退職金はそれら外部機関から支払われます。
どの制度を採用しているかによって計算方法や手続きも異なるため、就業規則の該当箇所や人事部に確認することが大切です。
なお、会社が倒産して退職金が支払われない場合でも「未払賃金の立替払制度」により一定額が支給される救済措置があります。こうした公的制度の知識も踏まえ、+αの対策によって退職金が少ない・もらえないリスクを下げることができるでしょう。
自社の制度任せにせず、公的制度や貯蓄を組み合わせて自分自身の将来のためにしっかり備えておくことが大切です。