婚約者が突然消えた。失踪の理由、彼女の過去、そして嘘とは?「傲慢と善良」試写会レビュー
現代人のリアルな恋愛観と価値観がこまやかな描写で描かれ、「人生で一番刺さった」と20代・30代を中心に共感を呼んでいる話題作。
監督は「ブルーピリオド」の萩原健太郎、脚本を「リバース」「最愛」の清水友佳子が手掛けています。
Kis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔と奈緒のW主演で送る、大人だからこそのラブストーリー。公開に先駆けて試写会に参加したSASARU movie編集部が映画の見どころをレビューします。
「傲慢と善良」の気になるストーリー
仕事も私生活も順調だった架(藤ヶ谷太輔)。しかし、長年付き合っていた恋人に振られてしまい、マッチングアプリで婚活をはじめます。
何件もの出会いを経て、控えめで気が利く真実(奈緒)に惹かれ付き合い始めることに。ところが1年経っても架は結婚に踏み切れず…。そんなある日、真実からストーカーの存在を告白されます。架は警察への相談を提案しますが、おおごとにしたくないと拒否する真実。そうこうしているうちに、友人との飲み会を楽しんでいた架に真実からの着信が。「架くん、助けて! …あいつがいる…!」電話の向こうから響く真実の悲痛な叫びに、架は店を飛び出し、真実のもとに向かいます。泣き崩れる真実を前に、彼女を守らなければとようやく婚約を決意する架。
そうして結婚に向けた準備を進める中、なんと真実が婚約指輪を置いて突然姿を消してしまいます。
両親、友人、同僚、過去の恋人を訪ね真実の居場所を探すうちに、架は知りたくなかった彼女の過去と嘘を知ることに…。
思わず共感してしまう、リアリティある心理描写
結婚目前に婚約者が突然失踪するというミステリーも気になるところですが、やはり最大の見どころは恋愛・結婚にまつわる巧みな心理描写。
勝ち組で選ぶ側という無意識の傲慢さを持つ架が、失踪した真実を追うために様々な人物を訪ねます。過保護気味の真実の母親や、それに反発してきた義姉、婚活とは何かを説く結婚相談所の所長、真実のお見合い相手、たびたび架の元カノと真実を比べる女友達…。彼らと言葉を交わすうちに、架は自分にとって真実はどんな存在なのか、結婚とはなんなのかを改めて考えます。
一方、失踪した真実は、たどり着いた先で災害ボランティアの人々やリーダー、飲み屋のママと出会います。彼らと会話をしていく中で、親の敷いたレールに従い善良であろうとした結果、選ぶことを避ける人生を送ってきた自分自身、そして架についてしまった嘘と向き合うことに。
登場人物たちの立場や価値観は様々。観る人によって感情移入する場面や人物が違うのもこの作品の魅力です。
作中に登場する美しい花をモチーフにした場面にも注目。真美の心情を解き明かすヒントになりますよ。
グサリと突き刺さる、心に響く言葉の数々
架が真実を探す中で、真実が地元にいた頃お世話になった結婚相談所の所長、小野里(前田美波里)と出会います。この小野里所長、婚活の核心に迫る言葉を容赦なく述べるのです。
「婚活がうまくいく人は、自分の欲しいものがちゃんと分かっている人」「自己評価が低い一方で、自己愛の方はとても強い」「ピンとこない、の正体は、その人が、自分につけている値段」などなど、観客である私たちもドキッとするセリフが目白押し。
この小野里所長との対話がきっかけで、架は自分の価値観と向き合うことに。
また、タイトルにもなっている「傲慢と善良」とはなにか、小野里所長が語るシーンも必見です。
他にも、架の女友達が真実を評するシーンや、真実と飲み屋のママが語り合うシーンなど、色々な形で心を揺り動かす言葉が登場します。
苦々しくて切実な大人のラブストーリー
30代だからこその切実さが滲む本作。東京のビル街が映る中で架と真実が寄り添うメインビジュアルの空は、夕暮れにも夜明けにも感じられ、決してきれいなだけではない二人の恋愛模様を表しているかのようです。
結婚に消極的だった架と、待ち望んだプロポーズから逃げてしまった真実。迫り来る現実の中でじわじわと苦しみ、もがいた先に二人がたどり着いた「一生に一度の選択」が明かされるラストは、原作者・辻村深月の助言を受けまとめ上げられた映画オリジナルの展開となっています。
二人が取り繕わず本心を打ち明ける姿にきっと胸を打たれるはず。
「傲慢と善良」作品情報
原作:辻村深月
『 傲慢と善良 』 朝日文庫/朝日新聞出版刊
監督:萩原健太郎
脚本:清水友佳子
音楽:加藤久貴
主題歌:なとり 「 糸電話 」 Sony Music Records
製作幹事:エイベックス・ ピクチャーズ
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
配給 ・ 宣伝:アスミック ・ エース
■公式サイト
https://gomantozenryo.asmik ace.co.jp
■公式X@goman_zenryo
■公式Instagram@goman_zenryo
■上映劇場
TOHOシネマズすすきの、札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌など