M!LK 吉田仁人がリーダーとして築いた働き方のマイルール 「“上手くやろう”から“自分らしく”」
5人組ボーイズグループ・M!LKのリーダーとして活躍し、2023年からはラジオ「レコメン!」の木曜パーソナリティも務めている、吉田仁人(よしだじんと)さん。中学2年生で芸能界入りし、現在25歳になった彼の働き方には、同世代のビジネスパーソンの悩みを解決してくれるであろうヒントがたくさん隠れています。
前後編でお届けする今回のインタビュー。前編では、 リーダーとして大事にしていること や、先輩・後輩との上手な付き合い方、自分らしく働くためのこだわり などを語っていただきました。
「常時オン」が一番ラク。働き方のスタイルが定着するまで
――最新アルバム『M!X』を引っ提げたツアー『M!LK CONCERT TOUR 2025 “M!X”』が4月から始まり、多忙な毎日だと思いますが、“働くモード”にスイッチを切り替える時に意識していることはありますか?
これは芸能の仕事をしている人間ならではの回答かもしれませんが、僕の場合、全く仕事をしていないっていう時がないんですよね。プライベートでやっていることもSNSやファンクラブ会員の方に向けて発信していたりするので、 基本的にずっと“M!LKの吉田仁人”なんです。あえてオンのスイッチを入れなくても。 だからこそ、オフの日は家に引きこもって、強制的に人との関わりを断つようにしていて。中には曲作りのように仕事に活かせるものもありますけど、1人で趣味に没頭する時間を作ることで気分を変えています。
――完全にオフの時だけ、徹底的に休むようにしているんですね。芸能の仕事を始めた当初から、そのスタイルだったんですか?
いえ、最初の頃は模索していて。一時期、切り替えを意識したこともあったんですよ。普段はオフにしておいて、仕事の時だけスイッチをオンにしてみようって。でも試してみた結果、いつでも100%切り替えられるわけじゃないなって学んだんですよね。人によっては切り替えたほうが気楽な人もいるのかもしれないけど、僕は「今日、あんまり良いクオリティでできなかったな」って反省することが増えて、それがすごくストレスだなって気づいたんです。だったら 常時オンの感覚で、いつも同じようなテンションでいたほうが、多少ミスをしても「これが自分だし」って納得できるなと。 そう思って今のスタイルに変えてからは、ずいぶん気持ちが楽になりました。
礼儀を忘れない 自然体で築く関係
――ラジオパーソナリティや俳優など、さまざまなジャンルの仕事に取り組む中で、無意識のうちに一段階ギアが上がってるなと思う瞬間はあるのでしょうか。
強いて言うなら、ライブの時ですね。ライブはお客さんを迎える場ですし、音楽は自分の仕事の軸にあるものなので、「楽しみだな」っていう気持ちが強くて。いつもの自分よりボルテージが上がっているのを感じます。
――2018年に山中柔太朗さんや曽野舜太さんといった新メンバーがM!LKに加入し、そのタイミングで吉田さんはリーダーに就任されました。リーダーとして心がけていることはありますか?
リーダーとしてメンバーを引っ張るっていう意識は、当時も今もそんなにないんですけど、昔から時間を管理するのが得意で、グループ内でタイムキーパー的な役割だったんですよね。僕、マネージャーさんがスケジュールアプリに入れてくれた時間を見ながら、その通りに生きてる人間なので(笑)。メンバーが時間に気づいてなかったら、「そろそろ打ち合わせしますか」とか「みなさん、そろそろ円陣を組みますよ」って促すようにしてます。とはいえ、結構みんなしっかり者ですし、僕が言わなくともグループやメンバーのために率先して動ける人達なので、僕がリーダーらしさを発揮するのは時間の管理くらいですね。柔太朗と舜太が加入してから約7年、すごく良い関係性で活動できているなと思います。
――では、リーダーという役割から離れて。メンバーや「レコメン!」スタッフなど、気心の知れた方々と仕事をする際に意識していることはなんでしょうか。
「レコメン!」のチームとは、ラフすぎるくらいラフに喋ってますね(笑)。対面の時は、その場の温度感が正しく伝わるので、「正直、ここはやりづらかった」みたいな本音も全部言えるし。「レコメン!」のディレクターは50代の方なんですけど、普段は年齢差を感じさせないくらいのノリで接してくれてます。でも文章で連絡する時は、軽いノリで言っちゃうとヘンな誤解を生みやすくなると思うので、メールなどはしっかりとした言葉遣いにしてますね。それはメンバー間にも通じることで、連絡上は礼儀を意識しています。あとは、 会話を重ねれば重ねるほど、「この人に対して、こういう言い方をすると嫌がるだろうな」っていう地雷がわかってくる ので、会った時にはできるだけたくさん会話することも大事だと思います。
――そうは言っても、近年のM!LKはメンバーの個人活動が増えていますし、オンラインでのやりとりが多いのでは?
そうですね。今は楽曲にしてもMVにしても、メンバーの意見を取り入れて作っていける環境にいて、すごくありがたいんですけど。その反面、全員が集まって喋る時間があまりとれないんです。だから、自分がメンバーに「こういう状況だけど、どうする? どうしたい?」って連絡して、各メンバーの意見を吸い上げてまとめてから、スタッフさんにお戻しするっていう中継をよくしてます。それもリーダーっぽい作業かもしれません。
虚勢を張らない勇気。「わからないことがあれば素直に」
――逆に、初対面の方と一緒に仕事をする時に心がけていることはなんですか?
俳優としてドラマなどのオファーをいただいた時は、自分の過去作を観てくださったり、普段の活動を見ていただいた上で、「吉田仁人にお願いしたい」って呼んでくださってるはずなんです。であれば、普段の自分と変えるほうがヘンだろ! って思いますし、このままの自分で行くのがベストなのかなと思っています。ただ、一緒に作品を作っていくからには良い雰囲気でやりたいので、裏でもコミュニケーションはちゃんと取るようにしてて。 それこそ昨年の主演舞台(『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS 幻影戦争 THE STAGE』)の時は、若いメンバーのチームとベテランの方々のチームに分かれそうになった瞬間があったので、あえて自分からラフに先輩方に話しかけることで、みんなが話しやすい雰囲気を作れたらと思って動いていました。
――吉田さん、先輩に可愛がられそうですよね。懐に入るのが上手そう。
あはははは!
――先輩に可愛がられるためのテクニックがあれば伺いたいです。
大前提として、可愛がってくださる先輩方の懐の深さのお陰なんですけれども……。「俺、できますよ! いつでも任せてください!」みたいな顔をしないようにはしてますね(笑)。 虚勢を張ると、後々苦しくなると思うんですよ。どんなに頑張っても、できて当然、できなかったらマイナスになるので。 そうじゃなくて「すみません、僕に何ができますかね?」っていうスタンスでいく。 わからないことがあれば、わからないって素直に言う。そうすれば、先輩目線で考えた時に、手を差し伸べやすいんじゃないかなって思います。 実際に僕も自分からたくさん質問するし、不安なところは「ここがちょっと不安で……」って共有するようにしてますね。それは先輩・後輩に関わらず、コミュニケーションの一環としてやったほうがいいんじゃないかなと思います。
――ちなみに、さまざまな年代のメンバーがいるEBiDAN(超特急、M!LK、さくらしめじ、SUPER★DRAGON、ONE N’ ONLY、原因は自分にある。、BUDDiiS、ICEx、Lienelなど、スターダストプロモーション所属のボーイズグループの総称)において、意識的にやっていることはありますか? こちらも、先輩・後輩が共存する会社内での立ち回り方に応用できるかな? と。
確かに、超特急には30代もいますし、ICExやLienelには10代もいて、年齢層は幅広いですけど。EBiDANは先輩・後輩の関係がハッキリしてるわけじゃないから、一般的な会社での立ち回りに活かせるかな……?
――EBiDANの場合、グループ自体は先輩・後輩だけど、個人の経歴だけを見ると実は同期とか、実は同い年とか、人間関係が複雑ですもんね。
そうなんです。例えばお笑い芸人さんの事務所とかだと、先輩は絶対に後輩に奢らなきゃいけないルールがあったりするじゃないですか? 先に事務所に入ったほうが先輩っていう考えで。でも、ウチはそういうルールがなくて。先輩もマイペースにやっているし、 後輩も先輩は先輩として敬いつつ、結構ラフに接してOKっていう空気が流れてますね。
――吉田さんも、後輩には“いじられてなんぼ”という捉え方ですか?
裏で幅を利かせたところで、ステージで愛されないと意味がないですから。後輩にいじられるくらいが美味しいと思いながら接してます(笑)。
「上手くやろう」より「自分らしく」。長く働くためのマイルール
――ここまでは仕事現場での振る舞い方を中心に伺ってきましたが、1つひとつの仕事と向き合う時に大事にしているマイルールはありますか?
僕は職業柄、芸能人としての振る舞いを求められることが多いんですが、そこに囚われすぎると自分の個性が見えにくくなると思うので、 “自分”がブレないように、というのを日々意識してますね。 どの仕事も、僕のことを良いと思ってオファーをくださっていると思うので、「僕がやってるんだ」というのがちゃんとわかるようにしたくて。MCとして場を回すにしても、ただ回すのが上手い人で終わらないように、僕なりの視点を入れて話すようにしています。芝居の現場でも「きっと、誰がやっても同じにはならないはずだから、今僕はこの場所にいるんだ!」と心を強く持って、 自分だからこそできるアプローチの仕方を模索しています。
――オンオフの切り替え方と同じく、そのマイルールも仕事を長く続けていく中で徐々に固まっていったんですか?
そうですね。仕事を始めたばかりの頃は、「褒められたい」とか「怒られないようにしよう」っていう気持ちが強くて。その場にきっちりハマるように上手くやろう! ってことばかり考えていたんです。でもある時、 上手くやったところで、ここに吉田仁人としている必要がどこにあるんだろう? って思ったんですよね。それなら誰がやっても同じじゃん! って。 そう気づいてからは、「下手でも僕らしくやろう」 って思えるようになりました。
――その上で、仕事と休みのバランスや、仕事選びのこだわりなど、吉田さんが考える“理想の働き方”とはどういうものでしょうか。
いただいたオファーに関しては、基本的に「スケジュールさえ合えばやります!」っていうスタンスなんですけど。なんといっても自分が一番やりたい仕事が音楽なので、自分で作詞作曲したソロ曲を発表して、M!LKとしてもライブができている今こそ、すごく理想的な働き方ができているなって思います。……ただ、自分のキャパを理解しているからこそ、ある程度の休みはほしいです(笑)。(メンバーの佐野)勇斗のスケジュール、凄まじいでしょう? 朝ドラも出て、ドラマや映画も同時に撮って……みたいな。M!LKの活動とも並行しながら、勇斗は「それが良いんだ! それがやりたいんだ!」っていう強い意志を持って、全ての仕事に全力で取り組んでいるんです。でも、もし俺が同じことを求められたら、多分できないんですよ。体力的にも難しいけど、なによりも気持ちが追いつかないと思うんです。だって、1つひとつの仕事にかける時間とか、気持ちの余裕とか、キャパがそれぞれ違うから。俳優としてトップになりたいなら、勇斗のようなやり方がベストかもしれないけど、僕は自分らしく、長く、今の仕事を続けていきたいので。 自分のペースとキャパと、現場に行った時に必ず100%の自分を出して帰れる自信があるかどうか ――そこを重点的に考えてスケジュールを組むことが、自分らしい働き方ですね。
プロフィール
吉田仁人(よしだ・じんと)
1999年12月15日生まれ、鹿児島県出身
2014年11月24日、M!LKとして活動開始
2024年11月1日、ソロ曲第一弾「カーテン」を配信リリース
2025年1月15日、ソロ曲第二弾「藍」を配信リリース
自身で作詞作曲 / ギター演奏を手がける。
スターダストプロモーションに所属する佐野勇斗、塩﨑太智、曽野舜太、 山中柔太朗、吉田仁人からなる 5 人組ダンスボーカルグループ・M!LKのリーダーとして活動中。 近年の主な出演作品は、舞台「FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS 幻影戦争 THE STAGE」(2024年/主演)、映画「女優は泣かない」(2023年)、ドラマ「モトカレ←リトライ」(2022年)など。 2023年3月より文化放送「レコメン!」木曜パーソナリティを務めている。
取材・文: 斉藤碧
編集: 求人ボックスジャーナル編集部 内藤瑠那