衣替えは鬼門!水、太陽の光もダメだった感覚過敏の長男。特別支援学級2年生になった今は
監修:鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
服の素材、肌触りにこだわる長男。衣替えの時期は特に大変で……
わが家の長男はASD(自閉スペクトラム症)の傾向があり、小学校では自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍しています。季節の変わり目になると思い出すのが、毎年の衣替えが大変だったこと。半そでから長そでに、また長そでから半そでに変更する際にはいつも嫌がり、慣れるまで時間がかかっていました。
長男は特に、半ズボンを履くのが本当に苦手でした。困ったことに、長男が通っていた児童発達支援では、運動の際は半ズボンに着替える決まりだったため、先生方も着替えに大苦戦していました。ほかには、服の素材にもこだわりがあり、ジャージ素材やつるつる、サラサラした生地は嫌がり、スウェットのような柔らかい生地の服を好んで着ていました。靴下も、つま先の切り返し部分の縫い目が苦手で、気持ちが不安定な時は特に、靴下を履くまでにものすごく時間がかかっていました。喜ぶだろうと思って買ったキャラクターものの靴下も、肌にあたる面に刺繍の糸が出ていたのが気になったのか、まったく履いてくれず……。いつもこんな調子だったので、長男が身につけることのできる衣服を探すのは、とても大変でした。
困りごとはほかにも!さまざまな感覚過敏
幼稚園や保育園に入る前の1~2歳くらいの時は、太陽の光が苦手でした。朝起きた時に眩しくて泣き叫ぶので、しばらくカーテンを開けられなかったり、車に乗った際に日が顔に当たるのが嫌で泣き叫んだりすることもありました。ほかにも、水が顔にかかるのも苦手で、シャワーが顔にかかると泣いてしまうので、お風呂の時は常にタオルを近くに置いていました。
成長とともに少しずつ改善
それらの症状が感覚過敏だと分からなかった時は、わがままを言ってぐずっているだけかと思い、つい怒ってしまったり、我慢させてしまったりすることも多かったのですが、発達障害の傾向があることが分かってからは、発達支援センターの指導員の方や児童発達支援の先生からアドバイスをいただき、長男が嫌がることはなるべく排除できるように工夫するようにしました。そうしているうちに、少しずつですが感覚過敏が改善していきました。
現在の状況
小学2年生になった今では、たくさんあった感覚過敏での困りごとも、日常生活の中で感じることはほとんどなくなりました。学校の制服や体操着も半ズボンなのですが、あんなに嫌がっていたことが信じられないほどに、スムーズに履いてくれるようになりました。でも、もしかしたら我慢できるようになっただけで、まだ苦手だなという感覚はあるのかもしれません。今後も引き続き、長男の特性を理解した上で対応ができるように、変化を見守っていけたらと思います。
執筆/プクティ
(監修:鈴木先生より)
自閉スペクトラム症などの発達障がいの傾向が見られる場合は、小児科の神経や発達専門の外来を受診して、はっきりとした診断を受けることが将来に対して必要かと思われます。診断が出ることで、今後どのような問題が起きるかも予測できるからです。プクティさんのご長男は成長とともに感覚過敏の症状が見られなくなってきたとのことですが、感覚過敏以外でも困っていることがあるかもしれません。
また、感覚過敏のお子さんに対しては、リハビリのOT(作業療法)で行っている感覚統合訓練が有効なことがあります。長そでから半そでになったり、帽子をかぶったり、靴下を履いたり、腕時計をしたりといった触覚に敏感な場合には、ボールプールなどが有効なこともあります。感覚過敏は大人になってからも多少残っており、たいていの場合、我慢しています。ただ、大人は自分で服装を選べるので、自分に合ったメーカーやブランドで統一してしのいでいるのです。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。