ドゥッガ遺跡(チュニジア)を訪ねて~作家・秋山秀一「旅の記憶(33)」
訪れた国や地域90以上、海外への旅は225回。旅行作家の秋山秀一さんが、自身で撮影した写真とともに、世界の街を歩いた思い出をつづります。
秋山秀一さん
旅行作家、元東京成徳大学教授、NHK文化センター講師。日本エッセイスト・クラブ常務理事、日本旅行作家協会会員、日本外国特派員協会会員。『鎌ケ谷 まち歩きの楽しみ』『世界観光事情 まち歩きの楽しみ』『ウクライナとモルドバ』『旅にでる、エッセイを書く』など著書多数。鎌ケ谷市在住。鎌ケ谷市国際交流協会(KIFA)会長、鎌ケ谷市都市計画審議会会長。
アフリカにあるローマ帝国植民都市遺跡
チュニジアの首都チュニスにあるバルドー博物館に「オデュッセウスとセイレーン」のモザイクが展示されている。
古代ローマ時代の傑作として有名なこのモザイクは、ドゥッガ遺跡で発見され、移されたものだ。
チュニスから南西に約100㎞、ドゥッガは紀元前46年にローマ帝国の支配下に入り、3世紀末のディオクレティアヌス帝の時代に最盛期を迎えた植民都市だった。
アフリカ大陸最大規模のローマ古代都市遺跡で、フォルム(公共広場)を中心に、古代ローマの神々を祀る神殿や劇場、住居跡などがある。
古代ローマ神話関連の神殿や彫刻を鑑賞
円形劇場前の石畳の道を歩いて下っていくと、風の12方位を描いたモザイクが残る「風の広場」と呼ばれる広場に出る。
広場の右手(北側)に2世紀後半に造られた商売の神様マーキュリーを祀ったマーキュリー神殿があり、東にアウグスタン・ピエティ神殿、南側にはマルシェ(市場)の広場が広がっている。
正面(西側)に見えるのが、ドゥッガのシンボル的存在のキャピトルだ。
キャピトルの正面に立つと、6本の縦溝がついた高さ8mの砂岩でできたコリント式の円柱の見事さに圧倒される。
支えている神殿上部ペディメントのレリーフには、鷲に変身して美少年ガニメデをさらうゼウスの姿が彫られている。
隣接する西側の階段を降りると、古代ローマの都市の中心、フォルムに出る。
フォルムの端から下の方を見ると、丘の上から下まで、住居跡がびっしり残っているのがわかる。
(文・写真/秋山秀一)