80年代エモいアイドル再評価【甲斐智枝美】ビキニガールがもっとも輝いたサマーソング!
心をムギュっと掴んで離さない1曲、甲斐智枝美ウルトラCチックな「Si!Si!C!」
1981年7月初め頃のヒット曲と言えば…
「ブルージーンズ メモリー」近藤真彦
「長い夜」松山千春
「スマイル・フォー・ミー」河合奈保子
「夏の扉」松田聖子
「ルビーの指環」寺尾聰
「ハリケーン」シャネルズ
「キミに決定!」田原俊彦
などが思い出される、どれも容易に口三味線できる楽曲ばかりである。が、ここまでヒットはしなくとも、なぜだか記憶にはシッカリと残り、心をムギュっと掴んで離さない1曲がある。それが甲斐智枝美「Si!Si!C!」である。
甲斐智枝美(以下、チェミィ)ファンとしての贔屓目で物申したとしても、上記でズラリと並ぶヒット曲群には到底敵わず、どの口で喋ってみたところで「それらと匹敵します!」と威勢よく雄叫ぶことはできかねる。その事実は受け止めているので何卒ご容赦いただきたいところなのだが、この世にはヒットしなくてもなぜだが人々の記憶に残り続ける曲というのが存在するのである。ある意味、ヒットさせて後世にその名を轟かすよりも難易度がググっと高め? “ウルトラCチック” な離れ技とも言えようか。
「C」をキーワードに歌詞を紡いだ「Si!Si!C!」
そんな楽曲のひとつである、チェミィの「Si!Si!C!」が発売されたのは1981年6月21日。作詞は伊藤アキラ、作曲は和泉常寛、編曲は大谷和夫によるもので、レコジャケやタイトルからもお察しがつくとおりの夏ウタである。
この時のチェミィが着用した衣装は、フリルがふんだんにあしらわれたワンショルダー型の純白ミニワンピース。美脚はラインストーンがさりげなく散りばめられた白色の網タイツでキメこんだキュートなスタイルだ。
Si!Si!Si!Si!See Through
見えるかしら 今日の水着はちきれて
まるい素肌がこぼれそう
Si!Si!Si!Si!C!tic 港の町
和泉氏が紡ぐメロディは極めて明るくリズミカルであり、ザ・真夏のアイドル歌謡大作戦といった雰囲気でしこたま。太陽の光を受けキラキラ輝く真っ青な海原が広がってくるようなメロディラインであり、否が応でも気分はJOJO! リスナーめがけて “夏” を訴えかけてくるのである。
そして、本楽曲の歌詞内で使われている「C」についてだが、どうやら恋のABCのアレを指し示しているっぽい。そもそもの楽曲テーマはなんだろか?と思いあぐねた挙句に導いたものが…
夏のオトコ漁り
―― コレである。
燃える海は恋の海
彼の視線がからみつく誘惑の昼下り
恋をしそうな気がするわ
「C」とやらを期待して? 港町でアバンチュールにいそしむ主人公が描かれているのだ。伊藤氏と言えば、その内容に関して物議を醸し続ける石野真子「春ラ!ラ!ラ!」の作詞者であるからして、全くもってあなどれない存在。「Si!Si!C!」の「C」をSeeにしてシースルー、Seaにしてシーバードとカマす言葉遊びは愉快だし、その「C」を用いて ”C tic(シーチック)” とカマす… そのココロは? といったクエスチョンを投げかける仕掛けは職業作詞家のお仕事と言える。
「C」をキーワードに歌詞を紡いだ結果としてこうなったのではないかと考えるのだが、実はこの楽曲は「プラッシー」という武田薬品工業の清涼飲料水のコマーシャルソングであり、チェミィ本人が出演という別の「シー」絡みもあったからなのである。
Si!Si!Si!Si!ビタミンC
Si!Si!Si!Si!プラッシー
いきいき 今日もプラッシー
こちらは元ウタをちょっぴりイジった、ビタミンC入りドリンクを宣伝するためのコマソン仕様だ。
プラッシーは、いわゆる “よくある販売ルート” を持たなかった清涼飲料水であり、そこをカバーすべくお米屋さんがそれを担っていたという変わり種。「プラッシー、いかがですか?」なんて、筆者の母を相手にお米屋さんのオジサンがショーバイSHOWバイを繰り広げていた場面はよく目にしたもの。その口車にまんまと乗せられ1ケースごとたんまりと購入、家族みんなでゴックンしていたのがチェリー家だったことも書き加えておこう(笑)。
その知名度とレコード売上がなぜかリンクしれなかった甲斐智枝美
コマーシャルソングだもん… それまでは101位以下の惜しいところに甘んじていたチェミィ楽曲だったが、「さすがにこの曲は100位入りしたでしょ?」「この曲知ってるし!」というお声は多々寄せられるものの、それがまさかの111位どまりなのヨ。「ちょっとチャート屋さんよ、集計ミスってませんか?」と再計算を願い出たくなる結果には目を疑ってしまう。
新曲発表会と銘打った、デパート屋上でのビキニ着用プロモーションも展開したのだが… う〜ん、ニンマリ喜んだのは ”第3の足” を持つというオスだけだったらしい。チェミィはグラビア界でも大人気、出るところが出たぱっつんボディが魅力のGOGO!ビキニガールに違いはなかったが、この手法はやりすぎだったのではないか? アイドルとして大成するには女子からの支持も大切な要素だったでしょうに。チェミィだってハミ出し厳禁とばかりに? お手入れにはさぞかし手間ヒマかけさせられたことだろうヨ。
ドラマやバラエティでも活躍したことで筆者の親世代にもその名が轟いた、甲斐智枝美という80年代アイドル。が、その知名度とレコード売上がなぜかリンクしきれないという、川島なお美、大場久美子、相本久美子、高見知佳などの先人アイドル達が敷いた轍をそのまんま歩いてしまった感は否めない。チェミィのアイドル然とした可愛さ、現代においてはアニメ声と評されるであろうビブラートなしのシュガシュガボイス、歌に一生懸命に向き合うマジメさ、チェミィスタアと評されるキラキラした楽曲群… それらは筆者にとって魅力の塊に他ならないのだが。
あいにく、レコード売上では振るわなかったチェミィだったが、81年度には良きこともたくさん起こったのだ。
81年度甲斐智枝美に起こった良きこと4つ
良きこと・その1:「日本テレビ音楽祭」にて金の鳩賞候補に!
ノミネート大会を撃破! 日本武道館で開催された本選に駒を進ませ「Si!Si!C!」を熱唱。同賞候補者の田原俊彦、松田聖子、河合奈保子、岩崎良美、柏原よしえとトップ6として同じ壇上に勢ぞろいしたんだゼ! 前年度の新人賞ノミネートでは落選、悔し涙を流したチェミィだったが、このデビュー2年目のリベンジには大喜び!
良きこと・その2:レギュラー出演中だったドラマ「GOGO!チアガール」にて主役回が作られた!
三原じゅん子(当時:三原順子)主演、チェミィが準主役を務めたドラマだが、主役回のエピソードタイトルは『マーマレード・ラブ』… そそっ、チェミィのシングル3枚目「マーマレード気分」をモチーフにした物語だったのだ!
良きこと・その3:ワニブックス「青春ベストセラーズ・恋の気分はCチック」発刊!
当時の人気アイドルならラインナップ必至だった『青春ベストセラーズ』。このシリーズにてチェミィの単独エッセイ本が発刊されたのだ! これはもう人気アイドルの証と捉えてよさげ?
良きこと・その4:ブロマイドの売上絶好調で聖子、奈保子に続く3位に!
見てくださいよ、この可愛さだもん… そりゃ飛ぶように売れるでショ♡
ウルトラCチックな活躍を見せたチェミィがキラキラ輝いた1981年
ってなワケで…
Hey!Hey!いいじゃない
名前なんて関係ないわ
そそっ! レコード売上なんて関係ないわ~とヤケクソ気味の替え歌で一ファンが吠えたところでどうしようもないのだが。しかしだよ… そのどうにもこうにもパっとしなかったレコード売上からは考えられないような破竹の活躍ぶりと言えんじゃね?
Si!Si!Si!Si!C!tic(シーチック)
まさしく、コレ!ウルトラCチックな活躍を見せたチェミィがキラキラ輝いた1981年。その最盛期がこの楽曲を歌っていた頃であり、“Cチックサマー” と命名させていただきたい… GOGO!ビキニガールの甲斐智枝美がもっとも輝いた夏だったのであ~る。
▶ Si!Si!C!/ 甲斐智枝美
▶ 作詞:伊藤アキラ
▶ 作曲:和泉常寛
▶ 編曲:大谷和夫
▶ 発売日:1981年6月21日
▶ 発売元:ビクター
※2023年6月16日に掲載された記事をアップデート