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多種多様な音楽的冒険!イエロー・マジック・オーケストラが遺してくれたものは何だったのか?

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2025年05月20日 YMOトリビュートコンサート「MUSIC AWARDS JAPAN A Tribute to YMO -SYMBOL OF MUSIC AWARDS JAPAN 2025-」開催日(国立京都国際会館)

YMOが日本の音楽シーンに遺してくれたものは?


2025年の『MUSIC AWARDS JAPAN』を象徴するアーティスト「SYMBOL OF MUSIC AWARDS JAPAN 2025」に YELLOW MAGIC ORCHESTRA(以下:YMO)が選ばれた。巨大な足跡を遺したこのグループは、活動期間中はもちろん、1983年の散開(解散)後も、幅広い分野に多大な影響を与えている。日本の音楽シーンにYMOが遺してくれたものは一体何だったのだろう。

まずは、サウンド面での革命的な変化である。YMOは日本において、シンセサイザーのサウンドをポップミュージックに取り入れることに成功した最初のグループと言っていい。当時、テレビなどで見たYMOのライブは、ステージ狭しと機材が並べられ、それをテクニカルに動かしていく彼らの姿​​。そう、それまでのバンドやオーケストラとは全く異なる光景であった。リスナーはその姿を、明らかに近未来的なイメージで捉えたのである。

YMOが使用していた代表的な機材としてシーケンシャル・サーキット社の『プロフェット5』が挙げられるが、他にもコンピューター・プログラマーの松武秀樹が使って "タンス" と呼ばれていたモーグ『Ⅲ-C』、細野晴臣のコルグ『PS-3100』、坂本龍一のアープ『オデッセイ』、リズムマシンのローランド『TR-808』(通称:ヤオヤ)など、数々の名機がYMOの演奏によって広く知られるようになる。そして、数多くのアーティストがこぞってサウンド作りに用いるようになっていくのだ。

ⓒ 松武秀樹

YMOメンバーが全面的に関わったテクノポップサウンド


そうして作られていくサウンドもまた、日本のポップミュージックのあり方を大きく変えていった。YMOのメンバーは自身の作品のほか、アーティストのプロデュースや作曲、編曲、演奏といった形で、テクノポップサウンドを世に送り出していく。RAJIE『Love Heart』、近田春夫「エレクトリック・ラブ・ストーリー」、金井夕子「CHINA ROSE」、シーナ&ロケッツ『真空パック』、矢野顕子『ごはんができたよ』といった、1978年から1980年にかけての作品では、YMOメンバーが全面的に関わりテクノポップサウンドを展開している。

1982年の活動休止期間と前後して、細野はイモ欽トリオ、松田聖子、中森明菜、山下久美子らへの楽曲提供を行う。坂本は郷ひろみ、前川清らへの楽曲プロデュースや大貫妙子作品のアレンジ、そして「い・け・な・いルージュマジック」で忌野清志郎とのコラボレーション。高橋幸宏も伊藤つかさらへの楽曲提供などで、ポップスや歌謡曲の分野にそのサウンドを広げていった。

こういったYMOメンバーの作るサウンドがもたらす音楽界への影響は大きく、歌謡曲側でもシンセサイザーを用いたテクノポップが流行し、1980年代半ばには打ち込みによるサウンドが主流になっていく。YMOのファーストアルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』からわずか5〜6年で、シンセサイザーを用いたサウンドがごく普通に世の中に鳴り響き、多くの音楽リスナーもそれを違和感なく許容するようになったのだ。

ゲーム音楽とテクノポップの親和性


YMOはゲーム音楽への影響も多大であった。ゲーム音楽とテクノポップの親和性は高かったが、ファーストアルバム収録の「コンピューター・ゲーム “サーカスのテーマ”」「コンピューター・ゲーム “インベーダーのテーマ”」の2曲で、早くもゲーム音楽をシンセサイザーで再現している。

YMO散開後の1984年4月には、細野がプロデュースを務めたゲーム音楽のサウンドトラック『ビデオ・ゲーム・ミュージック』がリリースされる。細野が名作ゲーム 『ゼビウス』の生みの親である遠藤雅伸と雑誌で対談、意気投合したことがきっかけで、ナムコのゲーム音楽を集め、細野の編曲によってアルバム化した作品である。

ゲームのプレイ中に流れる音楽をサウンドトラックとして音盤化したのはこれが最初だった。今ではごく普通に聴かれるようになったゲーム音楽だが、そのパイオニア的存在もやはりYMOだったのである。ちなみに、坂本龍一も1989年にPCエンジンCD-ROM2の『天外魔境 ZIRIA』でゲーム音楽に参入したのを機に、セガの発売したゲーム機『ドリームキャスト』のサウンドロゴや、スクウェア・エニックスの『聖剣伝説4』などのゲーム音楽を手がけ、高橋も1987年に任天堂『銀河の三人』など、いくつかのゲーム音楽に関わっている。

細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏、散開前後の動向


メンバー3人の、散開前後の動向も興味深い。細野晴臣は散開後にアルファを離れテイチクに移り、ノン・スタンダードとモナドという2つのレーベルを立ち上げる。細野自身も1984年に『S・F・X』というデジタルシンセサイザーを導入したアルバムや、映画『銀河鉄道の夜』のサウンドトラックなどを発表。加えて新レーベルのノン・スタンダードからは、ピチカート・ファイヴやWORLD STANDARDなど、次世代のアーティストを輩出した。

坂本龍一は、YMO活動休止期に映画『戦場のメリー・クリスマス』に俳優として出演し、同映画のサウンドトラックも手がけることになる。この作品は坂本が数々の映画音楽を制作していく契機となり、彼は1987年に『ラストエンペラー』で日本人初のアカデミー作曲賞を受賞することになる。また、デヴィッド・シルヴィアンやアート・リンゼイなど、海外のミュージシャンとのコラボレーションも積極的に行なっており、1992年にはバルセロナオリンピック開会式のマスゲームの音楽を作曲、指揮するなど世界規模の活躍を見せていく。

高橋幸宏は、もともと自身のファッションブランドを展開するデザイナーという側面も持っており、YMOのステージ衣装デザインも手がけていた。セカンドアルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』のジャケットでメンバーが着用していた赤い人民服風の衣装は高橋のデザインによるもの。高橋は日本の音楽シーンにファッションの重要性を持ち込んだパイオニアの1人でもある。

また高橋は、YMO在籍時から鈴木慶一とTHE BEATNIKSを結成したり、サディスティック・ミカ・バンドの再結成、JAPAN解散後のスティーヴ・ジャンセンとのコラボレーションなど、多くのミュージシャンとの音楽的交流を行い、同時に高野寛や高田漣ら後輩ミュージシャンとも積極的に関わっていった。2014年には小山田圭吾、砂原良徳、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井ら、YMOに影響を受けたミュージシャンと “高橋幸宏&METAFIVE” を結成するなど、晩年までその姿勢は変わらなかった。

YMOが遺した多種多様な音楽的冒険


YMOとは偶然か必然か、3人の総合音楽家が集結した奇跡のユニットである。はっぴいえんどやティン・パン・アレーで革新的な作品を生み出してきた細野はもちろん、坂本と高橋もYMOでのブレイク以降、自身の持つ幅広い音楽性をさまざまな形で広げていき、それぞれ日本の音楽シーンの発展に大きな功績を遺している。

今、当たり前のように我々が受容している音楽の様々なスタイルは、YMO登場以前には存在しなかったものがいくつもある。彼らが遺してくれた多種多様な音楽的冒険は、結成から45年を経ても色褪せず、日本の音楽シーンに燦然と輝いている。今回、『SYMBOL OF MUSIC AWARDS JAPAN 2025』に選ばれたことで彼らの偉業が再び注目を集めることを願ってやまない。

MUSIC AWARDS JAPAN A Tribute to YMO -SYMBOL OF MUSIC AWARDS JAPAN 2025-
▶ 開催:2025年5月20日(火)
▶ 時間:17:30開場 / 18:30開演
▶ 会場:国立京都国際会館 Main Hall
▶ 出演(GUEST)
岡村靖幸 / 小山田圭吾 / 坂本美雨 / Ginger Root / 東京スカパラダイスオーケストラ HORN SECTION(Trumpet NARGO、Trombone 北原雅彦、Tenor Sax GAMO、Baritone Sax 谷中敦)/ TOWA TEI(DJ)/ 原口沙輔 / 松武秀樹 / 山口一郎(サカナクション)
▶ 出演(BAND)MVF Orchestra
高野寛(G, Cho)/ 網守将平(Key)/ 大井一彌(Ds)/ ゴンドウトモヒコ(Seq, Horns)/ 鈴木正人(B)/ 高田漣(G, Cho)

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