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人間にとって厄介者の「流れ藻」は小魚たちにとっては大事な隠れ家だった

TSURINEWS

流れ藻の一部(提供:PhotoAC)

今の時期、海を漂い浜に打ち寄せられる「流れ藻」。一見するとゴミですが、とても重要な存在です。

厄介な海洋ゴミ??流れ藻とは

今の時期、海辺を訪れるとなんだかモヤモヤした物体が打ち寄せられているのをよく見かけます。場所によっては数m以上の大きさになり、景観を損ねてしまうことも。

漁港の片隅のモヤモヤ(提供:茸本朗)

このモヤモヤの大きな構成要素は「流れ藻」と呼ばれるものです。海藻類のうち、ホンダワラ科などの長く伸びるタイプのものが波の刺激や動物の捕食によってちぎれ、海中を漂うようになったものです。

この流れ藻は港湾の角に溜まったりすると見た目が悪いだけでなく、船のスクリューや漁網に絡んで厄介な存在となります。北大西洋にあるサルガッソー海は古くから遭難が多い場所と言われますが、サルガッスムという海藻の流れ藻が船に絡んで身動きが取れなくなってしまうことから名付けられたと言われています。

とても大事な魚たちのゆりかご

人の暮らしにとっては厄介な流れ藻ですが、自然界においては非常に重要な役目を担います。なかでも重要なものは「小魚のゆりかご」としてです。

流れ藻は上空を飛ぶ海鳥や海中の大魚たちから小魚を守ります。とくに外洋においては浮遊ゴミとブイなどの人工物、そして流れ藻くらいしか隠れ場所がないため、多くの小魚がその下に隠れて一緒に漂っています。

流れ藻になりやすいホンダワラ(提供:PhotoAC)

ブリの小魚は「モジャコ」と呼ばれていますが、これは彼らが流れ藻の下に隠れて成長するためです。そのため海藻の生育が悪い年には流れ藻が減り、ブリの漁獲量が減るとも言われています。

流れ藻食べてみた

そんな流れ藻でうが、ものによってはヒトが食べることも可能です。ホンダワラ科の海藻にはホンダワラとアカモクという2つの食用にされる海藻が含まれており、これらの流れ藻であれば口にしても問題はありません。

筆者は先日アカモクの流れ藻を見かけ、タモ網ですくって食べてみました。市販されるような若い新鮮なものと比べてやや硬く、珍重される「ぬめり」も減ってしまってはいましたが、ジャキジャキとした歯ごたえと豊かな磯の風味が好ましく、ご飯をおかわりしてしまうほど。

茹でたアカモク(提供:PhotoAC)

ただし、ホンダワラやアカモクは美味なために漁業権が指定されていることがあり、そういったところでは「流れ藻」にもその範囲が及ぶ可能性があります。どうせゴミだからいいでしょ…というわけにはいかないので注意が必要です。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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