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インフルエンザの家庭内感染はどう防ぐ?高齢者がいる家庭のための予防チェックリスト

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インフルエンザの家庭内感染はどう防ぐ?高齢者がいる家庭のための予防チェックリスト

インフルエンザの家庭内感染の特徴とは?

家族の一人がインフルエンザに感染すると、同居する家族への二次感染リスクが高まります。まずは家庭内感染の実態と、特に高齢者がいる家庭で注意すべき理由を理解しておきましょう。

インフルエンザは家庭内でどれくらい感染しやすいのか

インフルエンザは非常に感染力が強く、家族の一人が発症すると他の同居家族に広がりやすい感染症です。一般的には同居家族への二次感染率は20〜30%前後とされますが、流行するウイルスの型や家庭環境によって変動することがあります。

このように家庭内は密接な接触が多く、感染リスクが比較的高い環境といえます。適切な対策を取らない場合、家族内で複数人に広がる可能性があります。

特に高齢者や小さな子ども、基礎疾患のある家族がいる場合は、より一層の注意が必要となるでしょう。

インフルエンザの感染経路(飛沫・接触)と家庭内特有のリスク

インフルエンザウイルスが人から人へ伝わる主な経路は、飛沫感染と接触感染の2つです。これらの感染経路を理解することで、家庭内での予防策をより効果的に実践できるでしょう。

飛沫感染

感染者の咳やくしゃみとともに放出されたウイルスを含む飛沫を、周囲の人が吸い込むことで起こります。飛沫は1〜2メートルの範囲に飛散することから、特に近距離での会話や看病を行う家庭内では注意が必要です。

家族との食事や団らんの時間など、マスクを着用せずに過ごす場面が多いことが、家庭内感染のリスクを高める大きな要因となっています。

接触感染

ウイルスが付着した手でドアノブや電気スイッチなどに触れ、その手で自分の鼻や口に触ることで起こります。家庭内には家族で共有する物が多く存在します。そのため感染者が触れた場所からウイルスが広がりやすい環境なのです。

また、家庭では近距離での長時間接触が避けられないため、感染のチャンスが増えてしまうのです。

こうした家庭内特有のリスクを認識し、適切な対策を講じることが感染予防の第一歩といえるでしょう。

高齢者がいる家庭ではなぜインフルエンザが危険なのか

高齢者はインフルエンザに感染すると重症化しやすいため特に注意が必要です。インフルエンザが重症化しやすいのは高齢者や乳幼児、妊婦などで、慢性の呼吸器疾患・心疾患・糖尿病・腎臓病などを抱え抵抗力が低下した人も重症化リスクが高いとされています。

高齢者は、加齢に伴い免疫機能が低下しやすいため、インフルエンザに罹患すると、肺炎や気管支炎などの合併症を引き起こしやすい状況になります。特に肺炎は高齢者に多く見られる合併症で、年齢が上がるほど肺炎で亡くなる確率も高まることが知られています。

高齢者の命を守るためには、家庭内に「ウイルスを持ち込まない」「うつさない」という意識が不可欠です。同居する家族全員が感染予防に取り組むことで、高齢者への感染リスクを大幅に減らすことができます。

家族の誰かがインフルエンザに感染した場合は、速やかに高齢者との接触を制限し、適切な隔離措置を取ることが重要です。

インフルエンザの家庭内感染が起こってしまったら?

万一、家族がインフルエンザに感染してしまった場合でも、適切な対応をすることで家庭内での感染拡大を防ぐことができます。ここでは感染者の隔離方法や対策期間、特に高齢者が感染した際の対処法について解説します。

インフルエンザ患者を家庭内隔離する際の注意点

もし家族の中にインフルエンザ患者が出た場合、できる限り早く他の家族と隔離することが重要です。適切な隔離措置を取ることで、家庭内での二次感染を大幅に減らすことができます。

まず患者は個室で休ませ、看病する人も最小限に絞りましょう。患者と看護者の両方が不織布マスクを着用することで、飛沫の拡散を防ぎます。

実際、患者がマスクを着用することで飛沫の拡散を大幅に減らせるという研究報告があります。家族で過ごしていると距離が近くなることが多いため、マスクの着用は特に効果的な対策といえるでしょう。

また、部屋の環境管理も重要なポイントです。可能であれば1時間に数回、数分程度窓を開けるなど、定期的に換気を行いましょう。

可能であれば加湿器などで湿度を50〜60%程度に維持してください。適切な湿度を保つことでウイルスの生存率が低下し、感染リスクを下げることができます。

患者が使用した食器やタオルは共有せず、専用のものを用意します。使用後の食器は他の家族のものとは別に洗浄するか、使い捨て容器の利用も検討しましょう。

ドアノブや手すり、電気スイッチなど家族みんなが触れる場所は、1日数回アルコール消毒液でこまめに拭きます。

看病後や患者に触れた後は必ず手指消毒・手洗いを徹底します。可能なら使い捨て手袋を着用し、使用済みティッシュやマスクはすぐビニール袋に密閉して廃棄しましょう。

高齢者や幼児など抵抗力の弱い家族がいる場合は、患者の部屋に極力近づけないことが大切です。完全な個室が難しい場合でも、せめて2メートル以上の距離を保つことで感染リスクを減らすことができます。

インフルエンザの家庭内感染対策はいつまで行う?

家庭内で感染者が出た場合、発症後5〜7日程度は感染力が続くため、この期間はできる限り徹底した感染対策を行うことが推奨されます。

インフルエンザウイルスは、発症する前日から発症後3日~7日の間、鼻や喉から排出され続けます。特に注意すべきは、発症後3日目までがウイルス量のピークとなり、感染力が非常に強い時期だということです。

つまり、熱が下がって症状が軽くなっても、発症後7日目程度までは他人にうつす可能性が残っているのです。

一般の成人については、学校では『発症後5日かつ解熱後2日(幼児は3日)』が出席の目安とされています。成人の外出・出勤もこれを参考に、発症後5日・解熱後2日程度までは人との接触を控えることが推奨されています。

また、看病を行う家族やそれ以外の家族も、この潜伏期間中は体調の変化に注意が必要です。感染曝露後、少なくとも4日ほどは自分が発症していないか慎重に様子を見るようにしましょう。

高齢者がインフルエンザにかかってしまった際の対処法

要介護の高齢者など家族の高齢者がインフルエンザに感染してしまった場合、迅速かつ慎重な対応が求められます。対処のポイントは大きく3つあります。

早めの受診 発症したら可能な限り早く医療機関を受診します。高齢者は高熱時の通院自体が負担になりますが、放置すると合併症リスクが高まるため往診や訪問診療の活用も含め、早期治療につなげましょう。 他の人にうつさない 高齢者本人が感染した場合も、周囲への感染拡大防止が重要です。特に家庭内に幼児や他の高齢者がいる場合、隔離と十分な換気で距離を保ちましょう。
介護サービスを利用している場合は速やかに事業所へ連絡します。デイサービスなど集団利用はしばらく控え、訪問介護も事業所に状況を伝えることで、ヘルパーへの感染や施設内での流行を防ぐことができます。 十分な休養 高齢者の体力回復には安静と水分補給が欠かせません。熱が高い間はとにかく暖かくして休み、汗をかいたらこまめに着替えます。室内は適度な湿度(50〜60%程度)を保ち、喉や気道を潤すようにしましょう。

水分補給については特に注意が必要です。食欲がない時は無理に固形物を取らせず、お茶やスープ、スポーツドリンクなど飲みやすいもので水分と栄養を補給します。

食欲が出てきたら、お粥や茶碗蒸しなど水分多めで消化によい食事を用意しましょう。

高齢者は体調の悪化に気づきにくい場合もあります。少しでも様子が普段と違えば早めに受診し、肺炎などの合併症を起こしていないか確認することも大切です。呼吸が苦しそう、意識がもうろうとしている、尿が出ないなどの症状が見られたら、すぐに医療機関に連絡しましょう。

インフルエンザの家庭内感染を予防するには?

インフルエンザの家庭内感染を防ぐには、日頃からの予防習慣が何より重要です。ここでは今日から実践できる具体的な対策を詳しく解説します。

今日からできる家庭内感染を防ぐ方法

インフルエンザの家庭内感染を防ぐためには、日頃から基本的な感染対策を習慣づけることが重要です。以下は今日からすぐに実践できる主な対策です。

手洗いの徹底 帰宅時や咳・くしゃみを手で押さえた後など、こまめな手洗いを家族全員の習慣にしましょう。外出先で手洗いできない場合は、アルコール消毒剤で手指をしっかり消毒してください。 マスクと咳エチケット 咳やくしゃみが出る人は必ずマスクを着用し、飛沫を周囲に飛ばさないようにします。マスクがない時はティッシュや腕で口鼻を覆い、他の人から顔を背けて咳をしましょう。 環境の清潔と換気 ウイルスはドアノブやテーブルなどに付着して数時間以上生存することがあります。共有する物や触れる機会の多い場所は1日数回の消毒を心がけましょう。また室内は1時間に2〜3回(数分程度ずつ)窓を開けて換気し、空気中のウイルス濃度を下げます。 発症者の隔離と距離確保 万一家族が発症したら、可能な限り個室に隔離し看病者以外は近づかないようにします。完全な個室が難しくても、できるだけ距離を保つことで、感染リスクを減らすことができます。

これらの対策は特別な準備が不要で、意識次第で今日から始められます。家族全員で取り組むことで、インフルエンザの家庭内感染リスクを大きく下げることができるのです。

家庭内感染を長期的に減らす"生活ルール"の作り方

家庭内でインフルエンザなどの感染症を持ち込まない・広げないためには、一家で長期的な生活ルールを決めておくことが有効です。継続しやすいルール作りのポイントを見ていきましょう。

手洗い・うがいの徹底 外出先から戻ったら必ず手洗いし、うがいもするルールを作りましょう。 玄関に消毒液を置いておくなど、動線を工夫することで習慣化しやすくなります。 マイタオル制 タオルの共有は接触感染の元になるため、各自専用のタオルを使う習慣にします。洗面所やキッチンの共用タオルは使わず、家族それぞれの色や柄で区別すると分かりやすいでしょう。 加湿器を置く 濡れタオルを干すなどして適切な湿度管理を行うことも一家のルールに加えましょう。湿度計を見やすい場所に置き、50〜60%を目安に管理すると良いです。 定期的な室内換気 「朝起きたら5分換気」「夜寝る前に5分換気」など時間を決めると継続しやすくなります。リマインダーをセットするのも効果的です。 十分な睡眠 専門家によると、睡眠時間が短いと風邪などにかかりやすくなるという研究報告もあります。最低でも6〜7時間の睡眠確保が望ましいとされています。 ウイルスや菌を持ち帰らない 持ち帰らない工夫も必要です。 流行期には人混みへの不要不急の外出を控える、人と会うときはマスクを着用するといった取り決めも家庭内で話し合っておくと良いでしょう。

これらのルールを家族全員で共有し、日常的に実践していくことで、長期的に家庭内感染のリスクを下げることができます。無理のない範囲で少しずつ取り入れ、家族の生活スタイルに合わせて調整していくことが継続の鍵となるでしょう。

家庭内感染を防ぐための予防接種のタイミング

インフルエンザワクチンの予防接種は、流行が本格化する前に早めに受けることが家庭内感染予防につながります。最適な接種時期を知ることで、より効果的に家族を守ることができます。

日本では例年、インフルエンザの流行は12月中旬から始まり、1月〜2月にピークを迎えます。最も効果的な接種時期は10月中旬から11月中旬とされています。ワクチン接種後、効果が現れるまでに約2週間かかり、その効果は接種1ヶ月後にピークとなって5ヶ月程度持続します。

つまり、例えば10月上旬にワクチンを打てば、シーズン中のピーク時期(1〜3月)を十分にカバーできる計算です。早めの接種を心がけることで、流行期に入る前に十分な免疫を獲得できます。

ワクチンの効果は大きく3つあります。

発症自体を予防する
重症化や死亡を防ぐ効果
第三に周りにうつしにくくする効果

特に高齢者や基礎疾患を持つ家族がいる場合、本人はもちろん周囲の家族もできるだけ早く接種しておくことで、家庭内での集団感染防止に大きな効果があります。家庭内にウイルスを持ち込むリスクや、持ち込んでしまった場合の感染力を下げることができます。

まとめ

インフルエンザの家庭内感染を防ぐには、日頃からの予防習慣と発症時の適切な対応が重要です。特に高齢者のいる家庭では、重症化リスクを考慮した対策が必要です。今日から実践できる対策を取り入れ、長期的な生活ルールとして定着させることで、大切な家族の健康を守りましょう。

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