2月末デビューの阪急2000系とそっくりな2300系「神宝線」と「京都線」の違いってなに?
text:鉄道ホビダス編集部
photo(特記以外):RM
取材協力:阪急電鉄
▲2025年2月24日から運行開始される阪急2000系(写真左)と2300系(写真右)。
先日、阪急の新型車両である2000系が報道公開されました。同車の外観は基本的に現在京都線で走っている2300系とほぼ一緒のように見えますが、細かいところで仕様に違いがあります。
【写真】写真で見る2000系と2300系の違い!そもそも車体規格が異なるってホント?
■特急車と一般車の違いは車内に
▲2月より運行開始する阪急2000系(写真上)の車内と2300系の車内(写真下)。内装を見ればその違いは一目瞭然である。
2000系と2300系の一番の違いはなんといっても車内にあるでしょう。京都線で特急運用を主にこなす2300系は、転換クロスシートに加えて、中間には特別車両「PRiVACE」を組み込む仕様になっています。
一方、2000系は神戸・宝塚線での運用が予定されている2000系に関しては、純然たる通勤型として、ロングシートの車内に。もちろん「PRiVACE」のような特別車両の組み込みもありません。
以上の点は「乗ればわかる」比較的わかりやすい違いですが、両者には決定的な違いがもう一つあります。それが運用される路線です。
■2000系は「神宝線」規格の車体
今回新たに導入される2000系は、先述の通り神戸線と宝塚線での運用が予定されています。その一方で2300系は京都線で運用されています。ですが阪急では神戸・宝塚線のことを「神宝(しんぽう)線」と呼び、京都線系統と明確に車両の規格が異なります。
これは京都線が地下鉄堺筋線との相互乗り入れを開始した際に決められた車体規格によるもので、京都線系統の車両の方が神宝線の車両と比べて幅が若干太く、逆に長さは若干短い寸法になっています。
実際2300系と2000系でも異なっており、前者は車体幅2,780mm・車体長18,380mm、後者は車体幅2,725mm・車体長18,480mmとなっています。そのため、神宝線用の車両が京都線に入線することは可能ですが、逆に京都線の車両は神宝線の規格をオーバーしているため入線が不可能となっています。
▲神宝線規格という利点を生かして、神戸線や宝塚線へも臨時運用されることもある「京とれいん 雅洛」。
‘19.11.19 阪急電鉄神戸本線 神崎川 P:松田信彦
(鉄道投稿情報局より)
一例として「京とれいん 雅洛」は神宝線用だった7000系を改造した車両で、京都線で営業運転を行なっています。そもそも検査などは京都線に隣接する正雀工場で行われているため、車体幅が狭い神宝線用の車両が京都線に入る分には何ら問題はありません。
■床下機器にも路線ごとの違いが
神宝線と京都線は地下鉄乗り入れの有無だけではなく、その成り立ちによる文化の違いもあります。それは京都線はもともと「新京阪鉄道」という京阪電鉄系の会社が敷設した路線であったことが強く影響しており、戦時中の阪急と京阪の合併、そして戦後再び京阪と阪急が分離した際に阪急側へ京都線が属することになってからも、細かい相違は残り続けました。
現在では規格の統一が進められたことで、先述の車体幅を除けばほとんど仕様に違いはありませんが、この2300系と2000系でもVVVFインバーターのメーカーに違いが見られます。2300系は東洋電機製造製のものを使用していますが、神宝線用の2000系では東芝製のものを使用しています。もちろんこれは今に始まったことではなく、長年神宝線用は東芝製、京都線用は東洋製とされ続けています。ちなみに補助電源装置に関しては東洋電機製造製に両車統一されているようです。
伝統のマルーンの塗装に身を包み、各車両統一されたイメージがある阪急電鉄の車両たち。ですが実際は使用する路線によって、こうした細かな違いがあるのです。