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推し以外の魅力にも出会える。“贅沢なビュッフェ”や“フェス”のよう──「プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE 4th - Unison -」宵崎奏役・楠木ともりさん 暁山瑞希役・佐藤日向さんインタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

2024年12月13日(金)~15日(日)に大阪、2025年1月24日(金)~26日(日)に東京にて開催され、さらなる進化を見せつけた「プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE 4th - Unison -」。東京公演最終日の昼公演と夜公演を収めたBlu-rayが7月23日(水)にリリースされる。

iOS/Android向けリズム&アドベンチャー「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」のキャラクターたちが出演する3DCGによるリアルライブ「プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE(通称:セカライ)」。今回のライブでは、ファンサービス用カメラを新設。さらに、会場モニターを使った演出など、ステージ演出が多彩になり、セカライ4thのテーマである「Unison」に表現される一体感の詰まったステージとなった。

宵崎奏役・楠木ともりさんと、暁山瑞希役・佐藤日向さんは何を感じ、どんな未来を見ているのだろうか。音楽、映像演出、そしてキャラクターそのものが三位一体となって生み出されるステージ「セカライ4th」の魅力を余すことなく語ってくれた。

【写真】『プロセカ』楠木ともり×佐藤日向 対談で「セカライ4th」への想いを明かす

“現実”を超える「セカライ」の自由度

──お二人にとって「プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE(以下、セカライ)」とは、どのような存在でしょうか。

暁山瑞希役・佐藤日向さん(以下、佐藤):「コネクトライブ」や「セカライ」は、キャラクターたちがまるで本当にライブをしているかのような臨場感があって……“リアリティのある二次元”とでも言いますか。2.5次元とまではいかないけれど、2.3次元くらいの存在感があるなと感じています。

良い意味で、お客さんが“キャストを感じずに”ライブを楽しんでいる姿が、私はすごく新鮮なんですよね。キャラクターたちがキャラクターとして煽りをしていたり、観客の皆さんとやりとりしていたりする姿を見ると、「ああ、新しい形のライブが生まれているんだな」としみじみ感じます。毎回見入ってしまいますね。

──たしかに、キャストを感じながら楽しむライブは数あれど、キャラクターが全面に押し出されているライブは珍しいですよね。

佐藤:そうなんですよね。(キャストが)生身で出てキャラクターの声を出す機会はあれど、「セカライ」は登壇しないので。

宵崎奏役・楠木ともりさん(以下、楠木):ひーちゃん(佐藤さん)も言ってくれたように、キャストを感じずに、キャラクターをキャラクターとして感じる、その場に存在しているように感じる臨場感が魅力的ですよね。

やはりキャストがキャラクターとしてステージに立つ機会が多くて、それがひとつのカルチャーとして主流になってきていると思っています。私自身は詳しい歴史的背景はわからないのですが「キャラクターが実際にいる臨場感」を表現しようというのが、我々キャストが行うライブのはじまりだったのではないかなと考えています。「セカライ」は、それの進化系ではないかと。

あと、見ていて思ったのは、演出にムリが効くところが面白いなと思います。衣装の早替えなどの演出がその場でできるんですよね、「キラーン」って。あんな演出は生身の人間だと難しいので(笑)。各ユニットによってセットが大きく変わるのもそうですし……。

佐藤:転換(に間)がなくて良いよね。

楠木:そうそう。実際のライブで発生してしまう「諦めなくてはいけないポイント」がなくて済む。より便利にもなっているし、お客さんの受け取り方としても面白い形になっているのではないかなと思います。我々キャストも、自分と離れてキャラクターを見れるので、台本を見ていてさらに楽しいし……本当に、ライブの新たな形だなと思いますね。

──世界観をガラリと変えることも、シームレスにつなげることも無理なくできて。

楠木:もちろん「歌詞を間違えてしまう」のような生感のある出来事も、ライブの醍醐味としてある種魅力的だと思うのですが、「セカライ」は120%完成された究極系のライブを100%見ることができるんですよね。そこに波がない。それも含めて、いろいろな娯楽が溢れている今の時代に合っていて、選ばれていく形になるのではないかなと思います。

映像・CG……という言い方が正しいかはわかりませんが、彼らキャラクターの存在と、リアルな演出上の炎やスパークル、生バンドが融合されているからこその臨場感もあると思っています。その点も面白いですよね。

──私は今回の「セカライ4th」を映像で拝見しましたが、客席からステージに送られる声援やリアクションも含めて一体感がすごかったですよね。それこそ生感があるというか。

楠木:そうですね。もはや、ステージに立っているのは映像ではないですよね。本当に存在している雰囲気があります。

佐藤:お客さんも含めた全員が、ステージを作ってくださっているという感覚があります。特にフラスタ(フラワースタンド)なのですが、「セカライ」はフラスタをキャラクターに向けて出せるんですよね。これまで私自身にいただくことはあったのですが、キャラクターに向けたフラスタという概念がスゴイなと。

私は2年前の「セカライ」の現場に行かせていただいたのですが、それも圧巻でした。面白かったですね。「暁山瑞希様へ」と宛名が書いてあるフラスタははじめて見たので、なんだか不思議というか(笑)。

楠木:よりキャラクターが根付くよね。

佐藤:うんうん。実在性が高まる感じがする。

楠木:私は映像で見ていて感じたのですが、コーレスなど、音源ではできないライブならではの良さも拾っているんですよね。ライブ用に音源にアレンジを加えたり、コーレスの部分を作ったりすることでライブ感を味わえて、スタイリッシュな感じがしますね。しかも熱気もすごいなと思います。

──改めて、今回の「セカライ4th」の映像をご覧になった印象をお聞かせください。

佐藤:『プロセカ』は、ストーリー展開や楽曲実装のスピード感が非常に速くて。全ユニットのストーリーや楽曲すべてを追いかけるのは、特にお仕事などで忙しい方にとっては、なかなか難しいところもあると思います。

だからこそ、「推しユニットだけを追う」という楽しみ方をしている方も多いと思うんです。でも「セカライ」では、自分の推し以外のユニットにも自然と目が向く仕掛けがあって。「こんなにカッコいい曲があるんだ」と驚いたり、「気づかないうちにこんな関係性に発展してたんだ」とMCで知ることができたり……まるで“贅沢なビュッフェ”のように、どこを切り取っても魅力にあふれているライブだなと思います。

「このユニットはダークな楽曲が多いと思っていたけれど、こんなに爽やかなものもあるんだ」という発見ができますし、『プロセカ』が大きなコンテンツに育っている中でもお客さんを置いていかない気合いを感じます。集大成として年に一回、「どのユニットも魅力があるんだ」という想いをお客さんに伝えている感じがして。それを浴びたお客さんも「なんか良いものを浴びたなぁ!」ってなるんじゃないかなと(笑)。推し増しができるライブになっているなと感じます。

楠木:たしかに。『プロセカ』は最初にゲームを始めるときに、ユニットを選ぶところから始まるから、逆に入口が狭まるんですよね。一個のユニットに興味が向くようになっていて。でも、「セカライ」のようなイベントで「全ユニットが売りなんだ」ということを伝えてくれるから説得力もあるし、音源だけではわからなかった、MCも含めた各ユニットの魅力を気軽に見ることができて。

『プロセカ』という括りで見るとひとつのライブですが、ユニットの視点で見るとフェスのような形式になるじゃないですか。間口の広げ方としてとても良い方法だなと思います。ちょっとメタい表現になってしまいますけど……(笑)。

──「セカライ」は、各ユニットのスタイルや楽曲をはじめて見る方にもわかりやすい設計になっていますよね。

佐藤:そうですね。あとは、このライブではじめて振り付けがつく楽曲もあって。ゲーム内では見ることができなかった3Dの振り付けを見て「こういうダンスだったんだ!」という楽しみ方もできると思います。

私は普段からアーティストさんのライブに行かせていただくのですが、CDで聞いていた曲に振り付けや照明機構が加わったことによって、曲の印象がガラッと変わることがあって。音源で楽しんでいた楽曲が、より思い入れのある曲になる。ライブの中で育つ曲もあると思っています。それと同じ現象が生まれる「セカライ」は……そこに“ライブ”という名がつくだけの、一本の芯が通っている感じがありますね。

──見どころが満載なライブだと思いますが、特に映像で見るとステージアングルなども魅力のひとつかなと思います。

楠木:アングルの設定も難しいと思いますよ。

佐藤:かなりね。

楠木:だよね。私はMC中のアングルが好きですね。特にワンダショ(ワンダーランズ×ショウタイム)などは、誰かが喋っているときに「ガガッ」と揺れるカットが入っていたり……。

佐藤:司先輩とかね(笑)。

楠木:そうそう(笑)。逆にニーゴ(25時、ナイトコードで。)は引きの画角で全員を見れるようにしていたり、歌唱中もカメラに寄ってきてくれたり……この様子を見ることができるのは、映像ならではですよね。

──本ライブのオーディオコメンタリーもご担当されているお二人ですが、「このシーンが良かった!」「楽しかった!」というポイントと言うと、いかがでしょうか?

佐藤:全体を通して、舞台機構にかなりこだわって作っているなと思いました。

楠木:思った!

佐藤:ひとつのステージを作るのにいろいろな知識や労力が必要になると思うのですが、数曲披露したあとステージが転換して、そのあともどんどん新しい舞台が登場して……舞台人からして見ると、本当に贅沢だなと。

ステージにも各ユニットごとに特徴がありました。レオニ(Leo/need)だったらステージにスピーカーが積まれていて、それに「Leo/need」というロゴが入っていたり、ニーゴだったら月の満ち欠けのような映像パネルがあったり。その中にしっかりと特殊効果が置いてあって、バーチャルの中にある照明とリアルな照明がリンクしている。それがすごく面白いです。

また、各ユニットにはユニットカラーがあるのですが、それをしっかりと大事にしてくださっているなと感じました。モモジャン(MORE MORE JUMP!)の出番では、ファンのみなさんもペンライトを緑に変えていて、「一体感を作るぞ」という気合いが見えて「贅沢だなあ」と思いながら見ていました。

楠木:(ステージ全体が)一気に見えることで、各ユニットの色・スタイルをしっかりと見分けることができると感じました。

例えば、ステージに立つことを得意としているユニットは、しっかりとステージを大きく使っていてアピールも迫力があるのですが、ニーゴは必ずしもそうではないので、井戸端会議みたいになるんですよね(笑)。このような、クリエイター集団ならではのちょっとした所作や動きも、ゼロから作られるものですから……やはりキャラクター理解がないとできないことだし、それをそれぞれ見比べることで、各ユニット・キャラクターの良さがわかると思います。

──オーディオコメンタリーを、どのように楽しんでほしいですか?

楠木:実は、あまりステージについて語っていないんですよ(笑)。ある種、“我々が出ていないライブ”のオーコメなので、いちファンとして見てしまいました。「えっ!?」とか「次の曲ってなんだっけ?」とか「今のファンサ、めっちゃ可愛かった!」とか……それこそ「スピーカーにレオニのロゴがあった!」「衣装可愛い!」とか(笑)。友だちと見るつもりで見ていただくのがいいかもしれません。解説や裏話というより、ライブをキャストと楽しく見ましょう、といった雰囲気です。

佐藤:そうだね。めちゃくちゃ真面目に話してるっていうよりかは、途中で冷や麦の話とかしてますから(笑)。

楠木:(笑)

──あはは、冷や麦(笑)。

佐藤:真剣に聞いたら疲れてしまうかも(笑)。「ココ、いいよね!」って雑談しながら見ていただければと思います。

楠木:うんうん。「今のところ可愛いよね!」「ここの衣装、私も好き!わかる〜」とかって共感してもらえたら嬉しいですね。

そして実際に現地に行かれた方は「このシーン。映像には映ってないけど、こうだったんだよな」というような楽しみ方をしてほしいです。

ニーゴの舞台を振り返って

──「セカライ4th」で披露されたニーゴの楽曲の中で、特に印象に残っている曲というと……?

佐藤:(セトリを見て)アプリリリースを初期、現在を後期と捉えると、中期にあたる時期に録った楽曲が多かったですね。「フォニイ」「ノマド」「キティ」……「トワイライトライト」はワールドリンクイベント(「水底に影を探して」)でニーゴの第2章的な新たな見せ方を示した曲でもあるので、キャスト目線で言うと懐かしさを感じていました。

「キティ」に関しては、以前「感謝祭」の時にレンくんと踊ったことがあったのですが、その振りしか知らずで。その後「キティ」がステージングがついての披露だったということもあって「こんな感じになったんだ!」と思いつつ「感謝祭と同じ振り付けも入ってる……!」と懐かしみながら楽しめました。

『プロセカ』は新しいものがどんどんと生み出されるコンテンツなので、目まぐるしいところもあると思うのですが、「セカライ」は私たちが過去に魂を込めて歌った楽曲を拾ってくれるんですよね。振り返ることができるうれしい機会にもなっているのかなと思います。

──公式Xなどに投稿されている映像でも見ることができる「キティ」の瑞希、めっちゃ可愛かったですよね!

佐藤:ね! よかったですよね!

楠木:わかるー!

佐藤:自分のファンサをわかっているなって思いました(笑)。カメラをちゃんと使っているなって。

──バリエーション豊かな楽曲がぎゅっと詰まっていますよね。楠木さんはいかがでしょうか?

楠木:ニーゴは盛り上がる曲と落ち着いて聞ける曲のメリハリが大きかったなと思います。

ニーゴは他のユニットに比べると相対的にゆったりとしたイメージが強いので、ライブ映えが気になる方も多いと思うのですが、例えば「フォニイ」や「キティ」はガッツリと盛り上がれますし、「トワイライトライト」は椅子に座って歌う演出があって、「座ったままで聴いてほしい」という語りかけはニーゴにしかなかったことでした。

フェス視点で見ると、ニーゴらしさを出すための意図を感じるのですが、全体を『プロセカ』というひとつのアーティストとして見たときにはニーゴがメリハリという役割で大きなものを持っているなと思います。ぶっ放し系の楽曲ばかりではなく、落ち着いたパートを作りつつ、でもそれだけではない部分も見せる……各ユニットもそうなんじゃないかなって思っていて。はじめて聞く人もいるかもしれないからこそ、色々な面を見せようという意図を感じました。ただ人気な曲、盛り上がる曲を集めただけでなく、緻密なバランスでセトリを組んでいるなと。

あと個人的に思ったのは、連続して演奏された別ユニットの曲のつながりも意識しているのかなということですね。

佐藤:「Peaky Peaky」と「キティ」はリズムに共通点があるよね。

楠木:そうそう! こういうセトリは、アーティストが方々から集まるフェスだとできないことじゃないですか。ライブとしてのつながりも気持ちの良いものがあるなと感じました。これもちょっとメタい視点ですけども……(笑)。

──他にも、セトリ全体で気になったポイントはありますか?

楠木:「ビビバス(Vivid BAD SQUAD)のダンスが難しい」と、ひーちゃんに教えてもらいました。

佐藤:オーコメの中でね(笑)。

楠木:ダンスの中でも、歌詞のリズムに合わせて踊る振り付けと、歌ではなくバックで鳴っている音楽に合わせた振りがあって。ビビバスはどちらも入り乱れていて難しい、という話を聞いて「なるほど〜!」となりました(笑)。

──へぇ!

佐藤:ダンスってノーツと一緒なので……「さっきまで歌詞で(リズムを)取ってたのに、どうして今は裏(バックミュージック)で取ってるの!?」と(笑)。

楠木:ニーゴはコンテンポラリーっぽいといいますか、ゆったりした振り付けが多いと思うんです。でも他のユニットを見ていると結構ガッツリ踊っていて、ダンスを経験した方が気づく注目ポイントもあるんだと思います。

これはひーちゃんと一緒にオーコメを録りながら見たからわかったことだったので、ライブは一人でも楽しいけれど人と見るのも楽しいなと思いました。

佐藤:ビビバスのダンス、面白かったですね。ダンスのリズムの取り方って人によって違って、ビタビタに音にハメたい人と、歌詞で振り付けを取っているけれどバックの音にハメたほうが気持ちがいいから少し遅れてリズムを取る人がいるんです。ビビバスのキャラクターの中で、それぞれそのクセが出ているように思います。

──えぇっ!?

楠木:えっ、各々で!?

佐藤:そうそう。(青柳)冬弥くんはクラシックの素養があるからかビタビタに音にハマっていて、(東雲)彰人くんは曲によって縦にノッて踊っていて。

楠木:たしかに、振り付けは一緒だけどリズムの取り方は微妙に違うよね。これはまたひとつ、その場にキャラクターがいるという実感が湧くポイントかもしれないです。

佐藤:モモジャンも、動きが揃っているのですが個性が出ているんですよね。(日野森)雫ちゃんはなだらかな動きで、(桃井)愛莉ちゃんや(花里)みのりちゃんは元気!な振る舞い。このような違いが見えて面白いなと思います。この違いは、もしかしたら定点映像の方がわかりやすいかもしれませんね。

楠木:一昔前の技術では、一人ひとりの振り付けを分けるなんてできなかったかもしれないですよね。

──本当にそうですよね……! しかも「クラシックの素養」のような、キャラクターのバックボーンにも触れられているとは……。

佐藤:考えられているんじゃないかなぁ……と、オタクは思います(笑)。

楠木:考察も捗るよね!

佐藤:あくまで妄想の域を出ませんが(笑)。でも本当にすごいですよね。

ボカロと人、その境界を越えて次世代のカルチャーに

──バーチャル・シンガーとキャラクターたちが一緒に歌うライブは、『プロセカ』ならではだと思います。改めてお二人が感じる『プロセカ』の魅力を教えてください。

佐藤:入口の広さ……そして扉が何個もあることだと私は思っていて。

『プロセカ』に携わってくださるクリエイターさんの人数も膨大で、そこから興味を持ってくださる方もいらっしゃるかもしれませんし、「ストーリーが噂になっているから見てみたい」という方もいらっしゃるかもしれません。ゲーム実況をしてくださる方もいたり、2DMVの迫力然り、ニコニコ動画の文化と言いますか、そこからさらに新たな音楽ジャンルとして成長していて。マインドマップのようにどんどん枝分かれして広がっているのが面白いなと思います。

それと、自分たちが学生時代に聞いていた曲をカバーさせていただくこともあって。『プロセカ』のイベントって、パパママとそのお子様で来てくれることも多いんです。「娘が『プロセカ』の書き下ろし楽曲が好きで、僕(お父さん)は昔のボカロ曲が好きで」という声も聞くことがありました。

──なるほど。

佐藤:世代を飛び越えて『プロセカ』という軸でつながってくれているんだなと、劇場版(『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』)のときも感じましたね。色々な場で「子どもといっしょに観に行きます」と言ってくださったりして。それも『プロセカ』の魅力のひとつだと思っています。

最近は配信などでライブを見ることができるからこそ、現地に行くのもハードルが高くなりつつあるのかなとも思っていて。でも普段からアプリ内で「コネクトライブ」を見ているからこそ、「セカライ」も現地で見たいという方もいらっしゃるのではないかなと思います。『プロセカ』としての在り方を確立しつつあるのかなと。

──世代も、次元も飛び越えているといいますか。私自身も子どもがいるのですが、今や子どもたちの方がボカロ曲に詳しかったりして。

佐藤:皆さん好きですよね(笑)。私が学生のころもボカロが好きでしたが、時代って変わらず、小・中学生に刺さる魅力があるんだなと思いました。

楠木:VOCALOIDをツールとして捉えたときに、今までのカルチャーだと人とVOCALOIDが明確に分かれていたなと個人的に思っていて。人が到底歌うことができないボカロ曲に人が頑張って挑戦したり、逆にボカロをより人に近づけた調声をした曲が発表されたり……ハッキリと人とVOCALOIDが分かれていたからこそ、カルチャーが育まれていた背景があると思っています。でも今ってその次のステップに移行しているのではないかなと。

ボカロはボカロ、人は人で、単純に交わるのではなくそれぞれが尊重された上で同じ楽曲を歌うスタイルが広がり始めたのは、最近のことだと思うんです。それは『プロセカ』の影響もあったのかなと。

これはどのように表現するかが難しいのですが、当初「ボカロって機械でしょ?」という印象が強かったと思うんです。私が学生のころ、両親にオススメをしたときも難しい顔をしていた記憶があります。当時、すんなりと受け入れられたわけではない「電子音」というもの……でも人との明確な分離があったからこそ、若い世代を中心に広がっていったと思うんです。

──だからこそ、カルチャーとして根付いたという見方もできると。それが少しずつ変化しつつありますよね。

楠木:今は人も歌うしボカロも歌うし、一緒に歌うときもある。入口が広がったのかなと思います。キャラクターの声といっしょに聞くことで「ボカロっていいな」と思った方もいれば、ボカロが好きな人は「キャラソンっていいな」と思うかもしれない。ボカロを介すことでお互いの良さを見つけてくれる人が増えた気がしています。

『プロセカ』に書き下ろされた楽曲のコメント欄で、我々の歌に対してニュアンスの発見をコメントしてくださる方が多いのですが、最近だとバチャシン(バーチャル・シンガー)に対しても「ここのミクちゃん、泣いてるように聞こえた」のようなコメントがあるんです。今までもきっと、クリエイターさんがこだわっていて、でも気づいてもらえなかった部分に気づいている人もいて。新たなボカロの広まり方、キャラソンの広がり方をしている、歴史的な瞬間なのではないかなと思います。

──『プロセカ』はいろいろな歴史、音楽シーンを更新していく存在なのかなと思いました。

楠木:最初に『プロセカ』の企画書をいただいたときはビックリしましたね。「ボカロと人がいっしょに歌うんだ」って。

──たしかに、リリースが発表されたときは衝撃的でした。

楠木:挑戦的だなと思ったのですが、結果としてそれが受け入れられて、広まっていって。これはとても大きなことなのではないかなと思います。

──今の若い世代からすると、すでに「違和感がない」のかもしれません。それに加えて、CGやAR、VRなど、ライブも進化を遂げていて。

楠木:「初音ミク」はCGライブが早かったですよね。何なら第一人者的な立ち位置で。早い段階から取り掛かったからこその技術発展の早さもあるのかなと思います。誰も追いつけないような技術に段々となっているのはすごく感じますよね。

──『劇場版プロセカ』「セカライ4th」と大きなイベントが続き、『プロセカ』も5周年が見えてきています。今のおふたりのお気持ちを聞かせて下さい。

佐藤:いろいろな準備期間を含めると、20歳のころから『プロセカ』に携わらせていただいていて。個人的には20代の色濃い時間を『プロセカ』とともに歩んできているんですよね。もうすぐ5周年と考えると……あと1年経ったら小学校一年生のときに『プロセカ』を知ってくれた子は卒業しちゃうんですよね。

楠木:ほんとだぁ! やだあ(笑)。

佐藤:時の流れが早いなって思います(笑)。若い子にとっての時間の流れは早いと思うから、もっと『プロセカ』との色濃い時間を過ごしてくれているのかなと。

『プロセカ』は物語も楽曲も、詩的な表現が多いので、言葉を大切にしなければいけないと思う瞬間も多いんです。私自身、小学生のころに見た本やコンテンツの言葉を「当時は分からなかったけど、そういえばずっと頭に残っているな」と思うこともあって。大人になるにつれて『プロセカ』から離れてしまっても、ふとした瞬間に思い出してくれるような言葉や歌声の残し方をしていきたいと思っています。

ラジオでも、変わらず「小学生です!」という子たちからお便りをいただくんですよね。毎年必ず、7歳の子が現れます(笑)。新しく『プロセカ』に入ってくれる子たちにも、ずっと追いかけてくれている方たちにも、5年目も新鮮に物語や歌を届けていきたいです。

楠木:今回は「セカライ」をピックアップしていただきましたが、『プロセカ』には「セカライ」以外にも、アプリの中でライブを見る機会もあります。この取り組みも、今まで敷かれていなかった場所に新たにレールを敷いていくのを意識されているのかなと。最初はなかった機能がどんどん追加されたり、アップデートされたり……「マイセカイ」もそうですよね。

楽曲も人気のものから最新のものを集めていて、新たなものを作っていこうという気持ちをとても感じています。でもそれって、今の時代だと難しいことだと思うんです。新しいことはリスキーだと思いますが、挑戦を続けてきたことで5年目を迎える今も新鮮な気持ちで楽しむことができるし、新たなユーザーが入ってくるのかなと思っています。

我々は引き続き頑張るだけなので大きな力にはなれないけれど、『プロセカ』がボカロや2次元コンテンツの新しいものを作り続ける存在になればいいなって。祈ることしかできませんが、長く続いて、どんどん新たなことに挑戦して、我々がサポートできたらと考えています。

──どんどん進化していく『プロセカ』ですが、次の「セカライ」はどうなるんだろうという期待も、もちろんあると思います。

楠木:もっと技術が進んだら、今はステージを正面からしか見れないけれど、センターステージが実現可能なんじゃないか、とオーコメで話していました。

佐藤:花道を使ったり……。

楠木:ワイヤーアクションだったり……。

佐藤:トロッコとかも!

楠木:いろいろできたらいいね、って。きっと『プロセカ』が長く続けばできるのではないかと思うので、さらに進化して新しい姿が見れるのが楽しみですね。実はこの5年で、CGも進化していますから。

──10年後はどうなっているんでしょう……?

楠木:今のペースだと、2、3年で新しい技術が生まれたりしますからね。

佐藤:ちょっとややこしくなりますけど、ステージの上で瑞希と歌いたいですね。8人全員で。

楠木:わかる! やりたい、やりたい! でも今までは夢だったことを実現してくれているから、いずれできるのではと思うとめっちゃ楽しみです。

【インタビュー・文:逆井マリ 撮影:小川遼 編集:西澤駿太郎】

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