世界的に貴重な浮世絵展示 市民ギャラリーで「番場コレクション」
藤沢市民ギャラリー常設展示室で現在、神奈川県議会議員などを務めた故番場定孝さんの浮世絵コレクション展が開催されている。展示されている喜多川歌麿が江の島の鮑取りを描いたとされる作品は、世界で3点しか発見されていないもののうちの1つだという。
先月21日から市民ギャラリーで開催されている「番場コレクション展未来へつなげる浮世絵と郷土愛」では、番場さんが生前に収集し、没後市に寄贈された浮世絵が展示されている。
コレクションに共通するのは、藤沢に関する浮世絵であること。歌川広重『東海道五拾三次之内藤沢遊行寺(保永堂版)』や地引網漁を描いた浮世絵の下絵『題名不詳(江の島詣浜辺の図)』、江戸での江の島弁財天の出開帳を描いた歌川芳宗『弁財天開帳群集之図』など20作品が並ぶ。展示を行った藤澤浮世絵館は「下絵などは珍しく、番場さんの郷土愛が伝わる」と紹介する。
中でも目を引くのが、18世紀後期に活躍した喜多川歌麿が江の島の海岸での海女による鮑取りの風景を描いた美人画『題名不詳(鮑取り)』。3枚の絵からなる同作品は世界に3点しか発見されておらず、イギリスの大英博物館と東京国立博物館、番場さんのみが所蔵していた。
そのうち3枚が揃って現存するのは大英博物館と番場さんのみであり、「ロンドンに見に行った際に、『自分の持っているものの方が色が綺麗だ』とうれしそうに話していた」と番場さんの妻の恂子さんは振り返る。
貴重な収集品は、番場さんが大学生の頃から神田の古書店街などで生涯をかけて集めたもの。「色が綺麗なものだと高価だが、そうでないものは数千円で買えた」と恂子さん。「藤沢市が持っていないものを集めてやる」と意気込み、古書店から送られてくる目録なども頼りに収集を続け、『題名不詳(鮑取り)』に出合った。生前はあまり収集について多くは語らなかったが、同作品については自身の江の島での思い出を話していたという。没後は個人での管理が難しくなり、藤沢市に寄贈。藤澤浮世絵館で2021年にコレクション展を開催したが、新型コロナ禍であまり人目に触れず、今回改めて展示することになった。「主人も本望だと思う」と恂子さんは微笑んだ。
3月9日(日)まで。入室無料。平日午前10時から午後8時。土日祝は午後6時まで。JR藤沢駅南口徒歩2分。