将棋「NHK杯」本線トーナメント出場棋士紹介!将棋観戦記者・後藤元気さん連載「渋谷系日誌」【NHK将棋講座】
『渋谷系日誌』は、NHK「将棋講座」テキストの人気連載です。毎月、NHK放送センターや千駄ヶ谷の将棋会館など、渋谷界隈(かいわい)の棋士や関係者のエピソードを、将棋観戦記者・後藤元気さんがお届けしています。
今回は、テキスト7月号の「第74回NHK杯本戦トーナメント」出場棋士の紹介を、抜粋して公開します。前号6月号ではAブロックの棋士でしたが、今号はBブロックの棋士紹介です。
展望(?)の続き
先月号に第74回NHK杯本戦トーナメントの組み合わせについて書きました。そのときはつい展望と書いてしまいましたが、辞書で展望を引いたところ「社会の動き、行く末などを見渡すこと。見通し」とのことでした。改めて読み返すと未来を見通すような冴えた言説など全然なかったので、出場棋士の紹介というのが正しかったでしょうか。
そんなこんなで、前回半分までしか書けなかった棋士紹介の続きです。
トーナメントの左端は第73回でベスト4に躍進した増田康宏八段。A級棋士になり、『将棋フォーカス』でも準レギュラークラスの出演と勢いに乗っています。盛り上げるためにまたアレ宣言、いかがですか?
自分と佐々木慎七段は奨励会入会が同期で、十代のころに何度も貧乏旅行をしたっけ。懐かしいですな。丸山忠久九段は昨年に通算1000勝達成と銀河戦優勝を果たし、将棋大賞の敢闘賞を受賞。五十代になっても輝きを放ち続けています。
増田八段とともにA級昇級を決めた千田翔太八段は屋敷伸之九段との対戦。両者に加え、勝ったほうが当たる斎藤慎太郎八段もNHK杯戦の準優勝経験者。もうひとつ上の表彰台に立ちたいところです。
お隣のブロックは永瀬拓矢九段がシード。ご実家のラーメン店は将棋ファンの聖地になっているとか。
ひっそり音楽通の横山泰明七段は、にぎやかな陽キャの斎藤明日斗五段と。この将棋は本号に掲載されていますね。どうなったことやら。
すっかりタイトル戦の常連になった伊藤匠七段(※)は、初出場の梶浦宏孝七段が相手。梶浦さんは竜王戦本戦での活躍などもあり実力は確か。溜め込んだエネルギーが爆発するかも。
広瀬章人九段の趣味は麻雀とサッカー観戦。欧州のチームではずっとアーセナルのファンなので、近年の好成績や所属する冨安健洋選手の活躍はさぞかし嬉しいことでしょう。
渡辺明九段はスペインのアトレティコ・マドリードで監督をしているディエゴ・シメオネが大好き。時折見せる黒ずくめのコーディネートは、シメオネのそれを意識しています。
戦後唯一の栃木県出身棋士である長谷部浩平五段は升田幸三実力制第四代名人の系譜を継ぐ数少ない棋士。対する久保利明九段は坂田三吉贈名人・王将の曾孫弟子。そう考えると壮大なロマンを感じませんか?
佐藤康光九段と西尾明七段の一戦は、日本将棋連盟の前会長と元常務理事という組み合わせです。豊島将之九段は今期の名人挑戦者。バスケットボール観戦が趣味なのはスキがない講座を見てきた方なら、ね。
新人王戦で優勝した上野裕寿四段は、NHK杯初参加で本戦シード。対する澤田真吾七段は大のプロレスファン。東海研修会の幹事を務めるなど後進の育成にも積極的です。
黒沢怜生六段、冨田誠也五段はどちらも明るくさわやかなナイスガイ。
お次は木村一基九段と西山朋佳女流三冠の一戦。おそらくこれが1回戦の注目度ナンバーワンカードでしょう。そしてそして、主役は最後にやってくるとばかりにデンと構える藤井竜王・名人。あえて余計なことは言いますまい。ドキドキする面白い将棋がたくさん見られますように。
文
後藤元気
元奨励会、指導棋士四段。名人戦・順位戦や棋王戦の観戦記者。NHK将棋講座テキストの編集に携わっている。毎月『渋谷系日誌』を連載中。
◆NHK『将棋講座』テキスト2024年7月号より抜粋
※伊藤匠さんの段位は、2024年5月28日のもの。現在「伊藤匠叡王」になりました。