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Sizuk 14thシングル「君の知らないこと」&15thシングル「bookmarks」作曲家・俊龍さんインタビュー|1stアルバム発売や2ndライブ開催など、昨年末以降の活動を振り返る。「言い訳Maybe」を弾き語り楽曲に選んだ理由とは

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

2007年のデビュー以降、アニメ・アイドル楽曲を中心に数々の印象的な曲を生み出し続ける作曲家「俊龍(しゅんりゅう)」さん。

自身の活動と並行して、歌い手・作詞家・編曲家・イラストレーターなど様々なクリエイターと共同制作を行う音楽プロジェクト「Sizuk(シズク)」が、2023年1月より展開中です。

Sizukの最新楽曲となる、14thデジタルシングル「君の知らないこと」、15thデジタルシングル「bookmarks」が、2025年4月に2週連続でリリースされたことを記念し、インタビューを実施!

4月より放送がスタートしたTVアニメ『中禅寺先生物怪講義録 先生が謎を解いてしまうから。』と『ざつ旅-That's Journey-』、それぞれのED主題歌となっている両楽曲の聴きどころを伺いました。

また、昨年末の1stアルバム発売、2月の2ndライブ開催を振り返っての感想、そして5月に開催を控える、全曲“俊龍曲”のライブ「俊龍F~死ぬほどあのコールさせてやるよ~」への意気込みも語っていただきました。

ミステリー感や、図書準備室の“匂い”を意識した「君の知らないこと」

――まずは、4月8日(火)にリリースされた「君の知らないこと」について伺います。もう14枚目のシングルということで、改めてすごいペースですね。

俊龍さん(以下、俊龍):一日の中で、Sizuk関連でやることが何か一つはありますね(笑)。

――この曲は、4月より放送中のTVアニメ『中禅寺先生物怪講義録 先生が謎を解いてしまうから。』のED主題歌となっていますが、意識されたのはどんなことでしょうか?

俊龍:アニメの制作サイドからは、主人公の栞奈や学生たちが謎と向き合う中で成長していく映像にしたいので、それに合うような楽曲で、という割と守備範囲が広いオーダー・イメージをいただきました。

いわゆる、ほんわかしたエンディングにするのもアリかなと思ったんですが、やっぱり原作を読んだときに感じたミステリー感や、戦後が舞台ということで時代感を出したいなと。学校の木の床の感じとか、(栞奈と中禅寺がよくやり取りをする)図書準備室の匂いといった部分はすごく意識しました。

――確かに、どこか懐かしい匂いが感じられました。本作は、京極夏彦先生の作品のスピンオフなので、ミステリー感という部分も大切になってきますよね。

俊龍:いろんな事件・謎を解明しようと主人公や周りの人たちが動くんですが、その「不思議なこと」が起きたときの描写にすごくワクワクして。「何なんだろうこれ?」とか、「何で怖がっているんだろう?」とか、そういったところを描けたらいいなと思いました。

――AYAMEさんのボーカルも相まって、スケール感がすごく大きい楽曲に感じました。

俊龍:編曲のANCHORさんがすごく広げてくれたと思います。デモ段階では、木の感じを出すためにアコギをシャカシャカやりながら、エレキも鳴っている、という音像だったところを、カッコいいギターの音色を使って仕上げていただいて。歌詞もそれに引っ張られて、1番でピークを迎えずに、2番、3番と段々気持ちが上がっていくようなものになり、AYAMEさんもそのテンションに合わせて歌ってくださいました。

――Sizuk楽曲の中ではどういった「立ち位置」の楽曲になるんだろう?と、ふと思いました。

俊龍:「anemone」とも違うし、ちゃんと激しいところもあるんですが、「カッコいいぜ! 聴いてくれ!」というテンションともちょっと違うなと。ポジティブじゃない部分も含めた、みんなの気持ちに寄り添うような、沁みてくるような歌い方だなと思います。

あと、サビをほぼずっと同じフレーズにしていて、コードを一つずつ変えていくことで、明るくしたり、切なくしたり、カッコよくしたりとバリエーションを付けています。これまでにも何度かやっていて、自分の中で“しつこいシリーズ”って呼んでいるんですけど(笑)。自分的なトライアルかつ、テクニカルなことばかりを追及しないで、聴いた人が感動したり、楽しくなったり、グッと来るようなものにしようと思いました。

――AYAMEさんに、「こういう風にやってほしい」というオーダーは出されたりするのでしょうか?

俊龍:頻繁にではないですが、出すときもありますし、AYAMEさんのほうから質問されるときもあります。心持ち的なところと技術的なところをあいまいな感じで言わないことは意識しています。「ちょっと行き過ぎたので、ちょっと抑えて」とか「もっと出しちゃっていいよ」とか、割とハッキリ言ったほうが(その方向に)ブンと振ってくれるので。

――ボーカルディレクションはすべて俊龍さんがやられているんでしょうか?

俊龍:自分も(現場に)常にいますが、ディレクション自体はクリエイター(編曲)の方にお願いする、というのがプロデューサーの方針ですね。ただ、「蒼い孤島」など、カバー曲は自分でやっています。

――この曲は、日本語の歌詞が多いですが、これは意図したことなんでしょうか?

俊龍:意図はしていないですね。(制作サイドからの)オーダーにも特にありませんでした。

作詞のしほりさんも物語のイメージは掴んでくださっていると思ったので、「泣く(クライ) 泣く(クライ) 夜(ナイト)」の部分とかは、コーラス扱いになる、編曲とかでちょっと不思議な雰囲気になります、とお伝えして。しほりさんは作曲もされる方なので、まずは自由な、ファーストインプレッションで書いていただいて、という感じでした。

――「自分の限界を知って」という歌詞にちなみ、俊龍さんが限界を知った時、越えていかなきゃいけない時にどんなアプローチをされるのか、教えてください。

俊龍:後輩とか友達とか、音楽をやっている、いないに関わらずたまに訊かれますね。「曲が出てこなかったらどうするの?」と。

それは、「引きずり出します」ね。自分の中から。もちろん、リフレッシュするとか、一回忘れてとか、クリエイターの皆さんがやっていることと同じこともやりますが、何より、期日があって、自分のせいで何人もの仕事が止まっちゃうとご迷惑をかけるので、とにかく「引きずり出す」ですね。斎藤滋さんからの千本ノックが、本当に血肉になっていると思います(笑)。

「bookmarks」は、“自分史上一番”アレンジしてもらった楽曲

――続いて、4月15日(火)にリリースされた「bookmarks」について。こちらも4月より放送中のTVアニメ『ざつ旅-That's Journey-』のED主題歌となっています。ボーカルの春茶さんは今回初めてご一緒された方ですよね?

俊龍:そうですね。制作担当と一緒に「こういう方がいいんじゃないか」というやり取りは常にしていて、今回お声がけさせていただきました。

――レコーディングに立ち会って感じた印象などを教えてください。

俊龍:レコーディングに立ち会わせていただいたんですが、ミステリアスというか、言葉で語らないけれども、ボーカルブースを自分の空間に整えて歌われる方だなと。座って歌いたいとか、少し照明を暗くしたいといった、ご本人のやり方で没入していただいて、歌っていただきました。

――この曲の持つ「旅、孤独」といった世界観を作るのにすごく合っている方だなと感じました。

俊龍:温かくもあるし、寂しくもあるし。聴いている人が例えば、孤独だったり、ネガティブなことがあったとしても、そこに寄り添ってくれるような、そういうものを感じさせる。喜怒哀楽の真ん中とかも分かっていらっしゃるのだろうな、という歌声、佇まいだと思いました。

――どのようなイメージで制作されたのでしょうか?

俊龍:いつものように「オラァ!」って作る感じではなく(笑)、メランコリックで力んでいない感じなので、ちょっと跳ねているリズムが多いです。

満開の桜の下で、シートをひいて「イエーイ!」と花見をするのではなく、その脇を自分が一人で散歩している感じ。完全に孤独、世界に一人というわけじゃないけれど、集まって宴会をしている人よりかは、一抹の寂しさを感じるみたいな。

なんとなく浮かんでいたけれど、今まで出す機会がなかったメロディがあって、今回それを選んでいただいて、ビックリしましたね。

――曲が自分と一緒に歩いているような、そんな感覚を覚えました。

俊龍:主人公のちかは、ずっとネガティブというわけではないし、友達や先輩の漫画家、そして旅先で知り合う人がいて、孤独でもない。でもやっぱり人生には苦戦しているというのが、絶妙なキャラクターだなと思いました。

――また、アレンジもかなり印象に残りました。

俊龍:北川勝利さんのアレンジですね。たぶん自分史上、(いい意味で)一番いじっていただいたんじゃないかと。大先輩の指導を受けながら、編曲していただいたみたいな(笑)。

「ここ食わないほうがいいんじゃないですか」とか「コードこっちだからメロディ上に行くのはどうですか」みたいな感じで、北川さんからご提案いただいて、「原曲通りはこっちなんだけど、それでお任せしてみようかな」と。最後の転調も北川さんのアイデアです。

――歌詞はやなぎなぎさんが書かれていますが、歌詞とメロディで、お気に入りはどこでしょうか?

俊龍:2番のAメロ「気づいたんだ すぐ隣の歩調 たまにピタリと合う」ですかね。ここだけじゃないですが、ここは明らかに自分プラス一人、誰かの存在を近く感じるので、「完全な孤独じゃない」のがいいなと。暗いとまでは言いませんが、この部分は明るさがほぼないメロディなので、そこにちょっと温かみを注いでいただきました。

あと、仮歌をやなぎさんに歌っていただいて。「これ、売れちゃうじゃん!」と思いました(笑)。

あとはイントロも、フレージングというか、メロディの楽器があって、オケがある、という構成を、北川さんが雰囲気で心地いいなと感じるものにけっこう変えてくださったので、そこもぜひ聴いていただきたいところですね。

――俊龍さんは、ちかのような突発的な「ざつ旅」はされますか?

俊龍:旅はしたいなと思いますが、なかなかできないので、TVでそういう番組を見ることが多いですね。

でも一回、結構前の話になっちゃうんですが、山口県にある「俊龍寺」というお寺に一人で行ったことがあります。ここには、豊臣秀吉の供養塔があって、秀吉の戒名に「俊龍」と入っていることから、俊龍寺という名前になったらしくて。僕の名前と同じなのは偶然ですし、意識して付けたわけではないんですけど(笑)。のどかで、すごくいいところでした。

1stアルバム、2ndライブを振り返る。5月に控える全曲“俊龍曲”のライブへの意気込みは?

――昨年末(2024年12月25日)には、1stアルバム「es」をリリースされましたが、心境や反響などはいかがでしたか? また、皆さんにどういう風に聴いてもらいたいかも教えてください。

俊龍:自分の曲しか入っていないアルバムって考えると、すごいことだなと思います。

「この曲とこの曲を連続で聴くと、よりアツくなるよね」といった流れは、マスタリングのときに自分で考えたので、ぜひ通して聴いてほしいです。

――2月には、アルバム名を冠した2ndライブ「es」がありました。1stライブ以上に多くのファンが会場に集まりましたが、お客さんが増えた理由はどういったところにあると思いますか?

俊龍:やっぱり、AYAMEさん、Kotohaさんに楽曲を歌い繋いでいただいて、忙しさで大変なときもありつつ、休憩せずにリリースし続けたことですかね(笑)。そういった環境を与えてくれた制作に感謝しています。

あとは、自分で言うのもなんですけど、1stライブが意外と面白かったというか、お客さんが楽しんでくれたのかなと(笑)。

――ライブはもちろんですが、俊龍さんによるトーク、生演奏&歌唱も盛り上がりましたよね。今回はAKB48の「言い訳Maybe」などを、アコギで披露されましたが、どういった経緯だったんでしょうか?

俊龍:近年は鍵盤で曲を作ることが9割なので、アコギを知りたいと思って、数年前から練習を始めたんです。というのも、ギタリストとかギターが得意な人が曲を作る時は、アコギのいい音を直に聴けるじゃないですか。鍵盤の場合は、さすがに家にグランドピアノは置けないので、良い音源・シンセを使っても、どうしても電気を通った音になってしまいます。

いい音を直に聴きながら、家で曲を作れたらいいなということで、アコギをやっていくうちに、自分の曲はある程度弾けないとだし、自分でも「ギターならこういう動きなんだ」とか「自分で歌って気持ちいい」とか感じたいなと思って。そういった状況を制作担当が知っていて、ああいう無茶ぶりが来た形です。MCの鷲崎健さんの前で演奏するのはすごく緊張しましたけど(笑)。

――選曲はどういったところを重視したのでしょうか?

俊龍:Sizukのライブに来てくださる方は、コンテンツやシンガーが好きであると同時に、自分でそう思ったことはないんですが、いわゆる“俊龍節”というか、クセ、味わいも好きになってくださっているのかなと思ったので、それが濃い曲を選びました。「初恋の棘」(Pyxis)もそうですね。

――3月には、ポニーキャニオンのレーベルライブ「P’s LIVE! 08 ~P’s GR∞VE~」にも出演されました。こちらはいかがでしたか?

俊龍:リハに立ち会って、バンドさんと少しやり取りもしました。去年の11月に「Lemino presents ANIMAX MUSIX 2024 FALL」で生演奏をバックにAYAMEさんが歌う、という経験をさせていただいたのが大きかったです。それがなかったらすごく緊張していたかもしれないですね。

――AYAMEさんのボーカルはやっぱりすごいなと、改めて感じました。

俊龍:やっぱり歌うのが本当に好きなんだなと。歌以外の激しい動きとかも、いわゆるアイドルがグループでやるような振り・ダンスではない、“自分から出たもの”という感じで。初見で圧倒されて、後で改めて映像を見たり、聴いたりして「いいかも」とお客さんが思ってくださるようなパフォーマンスだったと思います。

――最初にガッチリとお客さんの心を掴んで、どんどん巻き込んでいったなと。

俊龍:「Dystopia」とか、「ここ飛びポイントだよ」というのをワザと作った曲ではないんですが、聴いていて「ここ飛びたくなるよね」となるというか。以前から、軽くそういう感じで、誘う感じでMCをしたらどうなんだろう?、とチームで話していて。AYAMEさんもお客さんの反応が欲しいタイプなので、やってみましょうかと。上手くいったと思います。

――そのお客さんの反応によって、AYAMEさんがさらにパワーアップしていって。

俊龍:すごくお客さんの反応を栄養にする人なので。おそらくバンドの時もそうなんだと思います。

――5月11日(日)には、俊龍さんの20周年を記念した、全曲“俊龍曲”のライブ「俊龍F~死ぬほどあのコールさせてやるよ~」が控えています。最後に、こちらの意気込みをお聞かせください。

俊龍:出てくださるアーティストの方には、カッコいい曲も明るい曲も、笑顔で披露していただきたいなと思っています。

また、20周年とは謳っていますが、「祝ってくれ」とかではなく、今まで楽曲提供してきた各アーティストのファンの方々とお会いして、コール(声)をたくさん聴けることを純粋に楽しみにしています。

[インタビュー/杉田裕孝]

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