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【南陀楼綾繁さん著「『本』とともに地域で生きる」】 高久書店、あべの古書店…。店主の顔が浮かぶ書店巡りの実録

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアート&カルチャーに関するコラム。今回は、大正大学地域構想研究所編集の雑誌「地域人」の特集や連載をまとめた南陀楼綾繁さん著「『本』とともに地域で生きる」(大正大学出版会)を題材に。
全国で書店がピンチを迎えている。そんなニュースがここ5年ほど、ありとあらゆる媒体から流れ出ている。もちろん、静岡新聞も報じている。

よく使われるデータだが、出版科学研究所によると全国の書店数は2003年から20年間でほぼ半減している。出版文化産業振興財団の調べでは、今年8月末時点の無書店自治体は27・9%。静岡県も例外ではなく、4自治体に書店がない。

今春、苦境に陥っている書店業界を何とかしようと、経済産業省のプロジェクトチーム(PT)が立ち上がり、9月には「書店活性化のための課題」を公表した。書店を「文化の発信拠点」と位置づけ「国力にも影響を与えうる、きわめて重要な社会の資産」と記しているのが心強い。

ネット通販の伸長、デジタル書籍の普及、旧態依然たる商慣習。書店経営を難しくするファクターは枚挙にいとまがないが、嘆いていても始まらない。ライターの南陀楼綾繁さんが2018年から2023年にかけて全国各地の書店や図書館、出版社を訪ねた本書を読むと、「それでも紙の本は必要とされている」という実感が残る。南陀楼さんは書店、図書館、出版社をまるっと「本のある場所」と名付けていて、これがとても心地よい。

静岡にも来ている。キリッとした受け答えの高久書店(掛川市)。ひょうひょうとしたあべの古書店(静岡市葵区)。店主の顔が浮かぶ。「図書館」の章では「みんなの図書館さんかく」(焼津市)と「虹霓社/虹ブックス」(富士宮市)も登場。静岡の本好きを誘い込むような、抜け目ないセレクトである。(は)

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