岸壁で採集活動をしていたら遭遇した<謎の寒天質物体> これは生き物?意外な正体
岸壁などで採集活動をしていると幼魚や貝類、クラゲなど様々な生物が採れますが、中には正体不明の物体が採れることがあります。
これは生き物なのかと、謎が深まることもあるのです。
今回はその実例を2つほど紹介します。
寒天質&円錐の物体を採集
3年前、ゴミや流れ藻が多い日。それらに混じった生物を探していたところ、見慣れない寒天質(透明なゼリー状)の円錐が漂っていました。
2つほど見つけたので、網で掬って観察。どうやら口も内臓も見当たらず、かといって何かが千切れたような断面も見当たらず、何の仲間の生物かは見当もつきませんでした。
というか、生きているのかどうかすらも怪しい。
一応自宅に持ち帰り、飼育を試みましたが、餌をあげようにも口が見当たらずピクリとも動きませんでした。3週間ほどすると、とうとうしなびて溶けてきてしまい、どんな生き物か最終的な結論が出ませんでした。
円錐型生物の正体とは?
その1年後に採集をしていると、なんと同じ形状のものが大量に漂っていました。
大きさも形も様々。久しぶりの不明物体に驚愕しながらも、辺りを見渡してこれはもしやと思いみつけたのは……ビゼンクラゲです。
この年以降、ビゼンクラゲをよく見るようになりました。そして、口腕と呼ばれる餌を捕食するための部分がちぎれて漂っていたのです。
まだ新しいものはしっかりと千切れた所の断面があるようで、2年前に拾ったものは少し劣化してその断面がツルツルしていたということが分かりました。
まさかそうとは知らずに、口腕の一部を一つの生き物だと思い込んで3週間も水替えなどの世話をしていたとは……。なんだか悔しい。
寒天状の魚?
“円錐”の正体が分かったと思った矢先、また寒天質の不明物体が流れてきました。
こちらはもう既に息絶えており、頭部と思わしき部分が千切れているのがみえました。その形はまるで魚のよう。
尾びれのようなものがあり、表面は数本の線に沿って細かい突起がついていてザラザラしています。
最初はダルマガレイ類の幼魚だと考察しましたが、骨格も鰓も見当たりません。脊椎動物ではないことは明らかです。
今回の不明物体はもう生きていないことがはっきりと分かり、また、体の一部に過ぎないと判断できたため、持ち帰らず映像を残しておくことにしました。
まさかすぎる正体
同じ年の12月にクラゲ採集を行っていたところ、またもや同じ物体が荒波に乗って漂っていました。それどころか見覚えのある棒状のもの、長い吻がバラバラになっていくつも流れてくるのです。
ようやく全身が整っている生きた個体が採集できました。そう、それはハダカゾウクラゲだったのです。
図鑑でよく見ていたハダカゾウクラゲ。私自身も何度か実際に見たことがありましたが、そこまで詳しくなく、結びつけられませんでした。確かに、尾の部分を見ると夏に拾った物と形が一致するのです。
その個体ももうボロボロで食道が逸脱しているのが見えたので、おそらくこのまま逃がせば他の個体と同じように波にもまれ、バラバラになってしまうと考えて持ち帰ることに。
自宅に持ち帰り水槽に水を張って、その最期を安らかに見守りました。翌日には動かなくなったことを確認してアルコール標本にしました。
海では摩訶不思議な物体と出会う 新たな発見も
このように、海に出ると摩訶不思議な物体に出くわすことがしばしばあります。
正体が分からずに困惑することもありますが、その意外な正体に度肝を抜かれたり、してやられたような発見があったりと、面白いことが多々あります。こういった一面も、岸壁採集の醍醐味でしょう。
(サカナトライター:俊甫犬)