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インバウンド6000万人計画に賛否、観光立国を目指すべく課題は?

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石破首相は2030年に訪日外国人旅行者を6000万人に増やす考えを明らかにしました。このニュースには、数多くのSNSユーザーが反応していますが、その大半は反対。なぜ、外国人観光客を増やすことに多くの人が反対するのでしょうか。外国人観光客増加のメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。

訪日外国人6000万人、旅行消費額15兆円へ 

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訪日外国人の数が過去最高を更新する中、数年後には日本を訪れる外国人の数が今の1.5倍以上に増えるかもしれません。

NHKの報道によると3月18日に開かれた関係閣僚会議で石破茂首相は次のように述べ、2030年の訪日外国人の数を6000万人に、訪日外国人旅行消費額15兆円に増やすための新たな計画をまとめるように指示しました。

「観光は地方の根幹的な産業であり、若者も女性も活躍できる『地方創生2.0』の切り札だ。官民一丸となり観光戦略を強力に進めてほしい」

2024年の日本を訪れた外国人旅行者は3686万人あまり。コロナ禍前を上回る過去最高を更新しましたが、5年後には今の1.5倍以上の外国人が日本を訪れることを目標にしているわけです。

このニュース、読者の皆さんはどう思いますか?SNS上では下記のようにネガティブな意見が大多数を占めました。

「観光立国なんてコロナみたいな事があったら一発で崩壊しかねないんだぞ。 日本は技術立国じゃなかったのか?」

「いつから日本は観光立国になったのか?産業立国を取り戻すべきだろう」

「そんな事より昔のように技術立国を目指し国力をあげて下さい 斜陽の観光地化は御免です」

「今でもインバウンド多すぎて観光地の住民の皆さんが迷惑していたり国民が旅行する気にならないというのに…」

とまあ、ボロクソに言われています。筆者が見たところ、9割5分以上が反対、賛成はほんの少しといった印象です。なお、石破首相を擁護するわけではありませんが、訪日外国人数6000万人、訪日外国人旅行消費額15兆円というのは最近決まった目標ではありません。2016年3月には閣議決定されており、その時は安倍晋三首相でした。

インバウンドのメリット・デメリット

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さて、訪日外国人6000万人、訪日外国人旅行消費額15兆円という政府の目標、なぜここまで叩かれているのでしょうか。ここで、インバウンドが増えることのメリットとデメリットを改めて見ていきましょう。なお、インバウンドとは、訪日旅行や訪日外国人旅行客を指します。

インバウンドのメリットは色々と言われていますが、突き詰めれば外国人観光客がもたらす経済的恩恵に預かれることに尽きるでしょう。2012年に1兆円だったインバウンド消費支出は、2024年には8兆円超に拡大しています。わずか10年ほどの間に8倍以上に成長する産業は今の日本にはないでしょう。

業種別に見ると当然ですが、宿泊業や飲食業、土産物などの小売業に特に恩恵が大きくなっています。長らく経済低迷が続く日本では国内需要が落ち込む中、宿泊業・飲食業・小売業がインバウンド消費に助けられていることは間違いないでしょう。

同じアジアに目を移してみると、インバウンドをきっかけに移住者が増えている都市もあります。それはタイの首都・バンコク。特に100万ドル(約1億5000万円)以上の流動資産を持つ富裕層の移住が活発で、2024年の富裕層の移住者は約300人と前年と比べると倍増しています。日本政府もインバウンド→富裕層の移住という流れを期待しているのでしょうか。富裕層は落とすお金がけた違いに多いため、移住者が増えれば日本経済は活性化するでしょう。

さて、8兆円もの経済的恩恵に預かっているのに、さらに外国人観光客を増やすことに対してなぜ反発が多いのでしょうか。インバウンドがきっかけで富裕層の移住者が増えれば、国の歳入が増えるにもかかわらずです。

インバウンド拡大の反対の理由のひとつは、経済的恩恵と言ってもその規模は極めて限定的だという点ではないかと筆者は思います。2024年の日本のGDP(国内総生産)は、約609兆円。対して、インバウンド消費支出は約8兆円。GDPに占めるインバウンドの割合は、わずか1.3%程度に過ぎないのです。

それでいて、インバウンドが拡大することにはデメリットは少なくありません。例えば、観光客が増えすぎることによって、その観光地の住民の生活が不便になる点。日本屈指の観光地である京都では、市営バスが混雑しすぎて市民が乗れないといった問題が実際に起きています。

京都と言えば、修学旅行の地としても有名ですが、外国人観光客が増え続けることで、最近では京都への修学旅行を回避する学校も少なくありません。旅行者が増えたことによって、街が混雑し、思ったように名所・旧跡を回れないことに加えて、需要の高まりに伴う宿泊料の値上げがその理由です。つまり、外国人旅行者が増えすぎたことによって、本来、日本の若者が学べるはずだった京都の歴史や文化、魅力といったものが学べないという構図になってしまっているのです。

また、観光密度(面積あたりの観光客数)が京都の2倍の鎌倉では、平日、休日を問わず中心部では慢性的な交通渋滞が発生。「市内の目的地に着くのに何分かかるのか読めない」と頭を抱える市民も少なくないと言います。

都市部から地方へ 

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こうした問題を放置したまま、現状の1.5倍以上の外国人を受け入れることに疑問や不安を覚えるのは多くの人が理解できるのではないでしょうか。特に、有名観光地やその近くに住む人の中には、「もうこれ以上来ないで」と思う人も少なくないでしょう。

とはいえ、日本の魅力が多くの外国人に知れ渡った今、SNSの世界的な普及拡大もあり、これからも外国人観光客が増え続けることは想像に難くありません。筆者は、政府が目標を立てようが立てまいが、外国人観光客はこれから先も増えていくと考えています。外国人観光客が増えすぎたからと言って、「来ないでくれ」とも「帰ってくれ」とも言えません。ましてや、政府が増やすことを目標にしているわけですから。

では、どうすればいいのでしょうか。筆者は、東京、京都、大阪といった訪日外国人が多いエリアから、現状ではまだ少ないエリアへと分散させる取り組みを政府が積極的に行うべきだと考えます。温泉、自然、食文化などその地域ならではの魅力を、国を挙げて発信し、都市部に集中する外国人観光客を地方にも分散させる取り組みです。

国土交通省の観光統計・白書によると、外国人観光客の延べ宿泊数(2023年1月~12月)でトップ5は、東京都(約4300万人)、大阪府(約1800万人)、京都府(約1200万人)、北海道(約680万人)、福岡県(約470万人)。

対して、少ないのは秋田県(約9万5000人)、山口県(約8万9000人)、鳥取県(約7万3000人)、福井県(約6万4000人)、島根県(約5万2000人)でした。こうした県は、他のエリアに比べて魅力に乏しいのでしょうか。多くの日本人はそうは思わないでしょう。どの県にも特有の魅力があることは大半の日本人が分かっています。延べ宿泊数が少ないのは、まだ外国人観光客がその魅力に気づいていないだけなのでしょう。

政府も都市部から地方へと外国人観光客を分散させる取り組みを始めており、地方特有の観光資源を前面に打ち出したプロモーションを行っていますが、結果だけ見るとまだ足りません。

そもそも、京都などの有名観光地ではこれ以上の観光客を受け入れようにもホテル不足などで受け入れられない可能性があります。「インバウンド消費の都市部から地方への分散」を早期に実現しなければ、政府の打ち出した「2030年に訪日外国人旅行者6000万人へ」の目標達成も難しくなるでしょう。

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