夏に効くタイラバメソッド! シャローで有効な「キャスティング」のノウハウ!
日差しが日増しに強くなる初夏~夏のこの時期、瀬戸内のタイラバはシャローゲームが有効となってきます。このシャローゲームで話題になるのがスピニングリールを使用したキャスティングタイラバです。
では、なぜシャローではキャスティングが有利になるのでしょう? 「広い範囲を釣れるから?」「横方向に巻けるから?」なんとなく感じていた有利な理由について、バーチカルと比較したり、潮の流れる状況、タイの性質など細かく考えることで、より有利にキャスティングタイラバを楽しめると思いますので、解説していきたいと思います。
キャスティングタイラバがシャローで有利な2つの理由
キャスティングでヒットの瞬間
理由1:タイの追従距離を確保できる
【バーチカルでの問題点】
シャローバーチカルでのチェイス範囲
水深20mでバーチカルタイラバをする場合、タイは底から10mくらいまでは普通にタイラバを追いかけてきます。しかし、水深が10mしかないシャローエリアでは、10m巻き上げると、当然ですが水面まできてしまうことになります。タイは水面までは追ってこないため、バーチカルの場合、実質5m程度の距離でバイトをさせないといけないことになるのです。
【キャスティングの優位性】
シャローキャスティングでのチェイス範囲
では、水深10mのシャローで20mキャスティングしたことを考えてみます。この場合、船までの距離(直線的な斜めの距離)は水深とキャストの距離を考えると25mぐらいあることになります。巻き上げるたびにその距離は短くなっていきますが、少なくともバーチカルでリトリーブすることに比べれば、タイがチェイスできる距離は長くなります。
これにより、タイが十分に追いかけてバイトするまでの時間と距離を稼ぐことができるようになり、シャローではキャスティングが有利となるのです。
理由2:タイラバの動きを自然に保てる
【タイラバの理想的な動き】
タイラバを見切って戻るタイの魚探映像
タイラバは一定速度で動き続けることが重要です。不規則な動きをすると、タイは警戒して離れてしまいます。魚群探知機映像での観察でも、波で船が上下した際にタイラバが不自然な動きをすると、タイが帰っていく様子が確認されます。では、水深が深い場合と浅い場合で、タイラバの動きにどのような差があるのでしょう?
【バーチカルタイラバにおける水深による動きの違い】
深場での釣りでは、長いラインが天然のショックアブソーバーとして機能します。船が波で上下に動いても、ラインの伸縮性が船の動きを吸収し、タイラバの動きを安定させてくれるのです。
さらに、水中でのライン抵抗が大きくなることで、船の細かな動きがタイラバに直接伝わりにくくなります。この結果、タイラバは水中で自然なアクションを維持でき、タイにとって違和感のない動きを演出できるのです。深場でバーチカルタイラバが有利な理由の1つがここにあります。
一方、浅場でのバーチカル釣りでは状況が一変します。ライン長が短いため、船の動きがダイレクトにタイラバに伝わってしまいます。とくに波が高い日には、船の上下動がそのままタイラバの不自然な動きとなり、魚に警戒心を与えかねません。このように、シャローバーチカルはタイラバの動きが水深がある場合に比べて不自然になりやすく、不利な条件となります。
【シャローキャスティングでのタイラバの動き】
シャローでのタイラバの動き
シャローエリアでのバーチカル釣りの課題を解決する有効な手段が、「キャスティングタイラバ」です。キャスティングによってライン長を延ばすことで、シャローでも深場と同様の効果を得ることができます。延長されたラインは水中抵抗を大幅に増加させ、船の上下動を効率的に吸収してくれます。
この結果、バーチカルでは難しかった一定速度での巻き上げを維持しやすくなり、タイラバ本来の自然な動きを演出できるようになります。船の細かな動きに左右されることなく、安定したアクションでマダイにアピールできるのです。
キャスティングタイラバで注意すべき2つのポイント
シャローエリアでキャスティングタイラバが有利であることを、ここまで説明してきました。しかし、キャスティングタイラバにはバーチカルとは違う注意点もあります…。
ここでは、キャスティングタイラバの効果を最大限に発揮するために注意すべき2つのポイントについて解説します。
注意点1:潮流方向とキャスティング方向の関係
バーチカルタイラバとキャスティングタイラバとの違いについてまとめると以下のようになります。
バーチカル(潮立て流し)の場合
・船と潮が同調して流れる
・真下に落とすため、潮の方向をとくに意識する必要がない
・タイラバは潮に流されながらフォールし、斜め上方向に巻き上げられる
・潮の流れる方向に関係なく、常に同じパターンで釣りができる
バーチカルでのタイラバの動き
キャスティングの場合
・潮の向きとキャスティング方向の関係が重要
・投げる方向によってタイラバの動き方が大きく変化
・タイの向きと動作パターンを考慮する必要がある
ちょっとややこしいように思いますが、要するにキャスティングの場合には、潮の流れている方向を意識する必要があるということです。
ここで考えないといけないのは、潮流に対するタイの習性で、タイは潮流に対して頭を正面に向けて泳いでいる、つまり、潮が流れてくる上流側を向いているということです。このタイの習性と、キャスティングで潮の流れを考慮しなくてはならないということを考えると、潮の流れとキャスティングの方向は以下のようにまとめられます。
【推奨】潮流に対してクロスする方向
●タイの前を横切るようにタイラバが動く
●最も自然でタイが反応しやすい動き
●エサが横方向に逃げる動きを演出
潮流に対してクロスする方向のキャスティング
【要注意】潮上(潮が流れてくる方向)へのキャスト
●タイに向かって接近するような動きになる
●タイが警戒して避ける傾向が強い
●魚は自分に向かってくるものを敵と判断する習性がある
潮流に対してアップにキャスティングした場合
【効率悪】潮下(潮が流れていく方向)へのキャスト
●船がキャストした方向に流れるため、タイラバがあまり動かない
●同じ場所に何度も落ちる状況になる
●探れる範囲が狭くなり効率が低下
潮流に対してダウンにキャストした場合
このように、潮流の方向とキャスティングする方向は、潮に直交する、もしくは斜めに切るようにキャスティングすることが必要となります。実践においては、潮立て流しの原理や座席位置なども考慮する必要があります。ちょっとややこしいですが、以下に注意点をまとめましたので、実践の参考にしてください。
【キャスティングタイラバの注意点】
風と潮の関係を把握
●潮立て流しでは船首が風上を向く
●風向きと潮流方向の関係を常に意識
●胴の間からは船に対して直交方向(真横)にキャストするのが基本
遊漁船での対応
●船の向きは選択できないため、状況に応じた最適解を見つける
●可能な限り潮流にクロスする方向を選択
●隣の人とクロスしないように注意
注意点2:距離に応じた巻き速度の調整
タイラバにおいて巻き速度は重要な要素ですが、キャスティングはバーチカルよりも巻き速度のコントロールを細かく行う必要があります。
バーチカルの場合
・真下に落として真上に巻き上げる
・水平成分と垂直成分の比率が一定
・同じ巻き速度で常に同じタイラバ移動速度を維持可能
キャスティングの場合
・距離によって水平成分と垂直成分の比率が変化
・同じ巻き速度でも、実際のタイラバの動きが変わる
・距離に応じた速度調整が必要
キャストした距離と巻き速度の関係
巻き速度においてとくに注意したいのが、タイラバの鉛直速度、つまり水深変化に関わる移動速度です。タイは浮袋を持つ魚であり、水深の変化は水圧変化となるため、急激な水深変化を好まないように感じます。つまり、あまり早い鉛直速度は、追いかけるのをやめてしまう場合があるということです。
キャスティングした場合における、船からの離れと巻き速度の関係をまとめると以下のようになります。
フルキャスト地点(最遠距離)
●水平成分が多く、垂直成分が少ない
●水深変化が緩やか
●比較的速めの巻き速度が必要
中間地点
●水平成分と垂直成分のバランスが変化
●段階的な速度調整が必要
船近く(バーチカルに近い状態)
●垂直成分が多くなる
●水深変化が急激になりやすい
●ゆっくりとした巻き速度が必要
シャローゲームの新たな可能性
キャスティングタイラバがシャローゲームで優位性を発揮する理由は、「追従距離の確保」と「自然な動きの維持」という2つのメリットに集約されます。とくに水深10m程度のエリアでは、バーチカルタイラバでは得られない大きなアドバンテージを発揮します。ただし、キャスティングタイラバを効果的に行うためには、以下の2点への細心の注意が不可欠です。
(1)潮流とキャスト方向の最適化
推奨されるのは潮流に直交する方向へのキャストです。一方で、潮上方向へのキャストは回避すべきパターンです。常にタイの向きと動作パターンを意識し、最も自然なアプローチラインを選択することが重要になります。
(2)距離に応じた巻き速度調整
基本原則として、船に近付くほど巻き速度を遅くすることで、垂直移動速度の一定化を図ります。実践的には段階的な速度調整を行い、タイラバの動きを常に一定に保つよう心掛けましょう。
これらの注意点を意識することで、キャスティングタイラバの持つ「追従距離の確保」と「自然な動きの維持」という優位性を最大限に活用できます。シャローエリアでタイが活発に捕食活動を行う時期には、ぜひキャスティングタイラバを試してみてください。アグレッシブなタイのバイトと、最後まで続く強烈なファイトを堪能できるはずです。従来のバーチカルでは味わえない、新しいタイラバゲームの醍醐味を発見できると思います。
水深10m前後のシャローでキャッチしたタイ
#424【高松沖タイラバ】実証・シャローでキャスティングが有効な理由
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レポーター
プロフィール:つりばか3号
瀬戸内海タイラバYouTuberの「つりばか3号」です。名前のとおり瀬戸内海にてマイボートのタイラバをしており、その様子を動画にしてYouTube配信しています。魚探を利用した釣りが得意で、魚探データから海図を作ったりしています。タイラバのノウハウや、魚探の使い方、海底地形と釣れるポイントの関係などについて発信したいと思います。
YouTube:【高松沖タイラバ】つりばか3号のフィッシングドキュメンタリー