【LIVE HOUSE UHUの「村田陽一ソロパフォーマンスライブ」】トロンボーン1本で重層的なオーケストラサウンド。「ルーパー」を使い、一人アンサンブル
静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は7月21日に静岡市葵区のLIVE HOUSE UHUで開かれたトロンボーン奏者村田陽一さん(静岡市出身)の「ソロパフォーマンスライブ」を題材に。
13年ぶりに村田陽一さんの「ソロパフォーマンス」を見た。録音、再生、オーバーダブを瞬時に行うエフェクター「ルーパー」を使い、トロンボーン1本で重層的なバンドサウンド、オーケストラサウンドをつくりだす。
「見ていただけるとわかるんですが、きょうは一人でやります。飽きさせない自信はあるんですが」とのMCで幕を開けたライブは、2010年にブラジルの音楽家、イヴァン・リンスと共作したアルバムの代表曲でスタート。
主題のメロディーを吹き、ベース、カウンターメロディー、ソロと重ねていく。音程の調整が難しいトロンボーンを使って、いわば「一発録り」で和音をつくり出す技術に惚れ惚れする。即興で編曲し、音の強弱、高低、長さを寸分の狂いなく演奏している。「ベースまでは決めておいたけれど、あとは全部適当です」というMCにも驚かされた。その後も自身のオリジナルや、ジャズ、洋楽の有名曲を次々披露した。
筆者はこの形で演奏を始めた頃のライブを見ている。長く演奏を続ける中で、この形態に対する村田さんの考え方の変化を感じ取った。複雑かつ曲芸的な演奏も試みていたかつてとは異なり、音数を整理しアンサンブルの妙を高めることに腐心しているように聞こえた。あらかじめ用意したリズムトラックを使う曲もあった。「10年前の作品は今の自分じゃないからね」というMCに説得力を感じた。
秋口に静岡市内で大きなコンサートを二つ控える。「今日はプロモーションのつもりです」という言葉とは裏腹な濃密な演奏の数々。希代のトロンボーン奏者の尽きせぬ創作意欲が伝わった。
(は)
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■富士山静岡交響楽団特別演奏会
「Playsガーシュイン vol.12 村田陽一凱旋コンサート with 静響ポップス・オーケストラ」
村田陽一(指揮・編曲・トロンボーン)
<村田陽一カルテット>林正樹(ピアノ)、納浩一(ベース)、渡嘉敷祐一(ドラムス)
日時:10月17日(金)午後7時開演
会場:静岡市清水文化会館マリナート(静岡市清水区島崎町214)
入場料:全席指定一般5000円(当日5500円)、学生2000円(25歳以下の大学生まで) ※未就学児入場不可
■「村田陽一ビッグバンド」ライブ
村田陽一(リーダー、トロンボーン、作編曲)
吉田治(アルトサックス)、鈴木圭(同)、小池修(テナーサックス)、竹野昌邦(同)、山本拓夫(バリトンサックス)、西村浩二(トランペット)、奥村晶(同)、佐瀬悠輔(同)、二井田ひとみ(同)、鹿討奏(トロンボーン)、東條あづさ(同)、山城純子(同)、松本圭司(ピアノ)、養父貴(ギター)、納浩一(ベース)、渡嘉敷祐一(ドラムス)、岡部洋一(パーカッション)
日時:11月15日(土)午後4時半開演
会場:グランシップ(静岡市駿河区東静岡2-3-1)
入場料:全席指定一般6000円、子ども・学生1000円(28歳以下の学生) ※未就学児入場不可