隣の空き家の雪で数百万円被害…「明日はわが身」の問題に“再生”で地域の財産化も
住む人がいなくなり放置された「空き家」。
自身も当事者になりかねない、実は身近な「空き家問題」を、深掘りします。
連載「じぶんごとニュース」
建設から60年以上経った石狩市浜益区の空き家。
外観に崩れなどはないようにみえますが、中を見ると、天井が崩れ落ちています。
下には集められたがれきが積まれている状態です。
横の壁は中の木造がむき出しに…。
なんとも危険に見えます。
実際に3年ほど前には老朽化した煙突が隣の空き地に倒壊したのだといいます。
石狩市は、空き家の持ち主に修繕や解体を求めてきましたが、危険な状態が放置されたため、空き家を強制的に撤去する「行政代執行」に初めて着手しました。
解体には約2か月かかる見通しで、費用は市が所有者に請求します。
石狩市建築住宅課佐々木勇次課長は行政代執行に至った理由について、「土地柄、風が強い場所でもあるので、飛散物など地域の方々に迷惑がかかると判断した」と話します。## 被害は数百万円も
小樽市の住宅地では、空き家による周りへの被害も。
空き家の隣の敷地は徳丸工業を営む北田大輔代表の作業場兼資材置き場です。
2025年3月、空き家の屋根から、大量の雪が落ちてきたといいます。
「ものすごくびっくりしました。もう家が崩れるんじゃないかって規模で…」
雪は壁を突き破って屋内へ。
柱をへし折り、トイレも断熱材が露出するほどの被害を受けました。
一時的な修理にかかった費用は、100万円あまり…
一方、空き家の持ち主はすでに相続を放棄していて、いまは国の財産になるまで弁護士が建物の管理をしています。
本格的な修理にはさらに数百万円かかる見込みですが、金額面で折り合いがつかず、弁護士を通して話し合いが続いているといいます。
HBC報道部は、建物を管理する弁護士に取材を申し込みましたが「一切お答えできない」と断られました。
徳丸工業の北田代表は「私も実家に両親がいて、ここと同じくらい山奥。空き家問題は明日は我が身の問題なのかな」と話します。
「立地が面白い」場所は再生も
石狩市の隣、当別町では空き家を再生する試みが。
運営するのはT&Tの辻野修太朗代表です。
「1階は靴屋さんで、2階はオーナーが住んでいた。前のオーナーからいただいた兜や神棚はここを訪れる海外の方に喜んでもらえると思ってディスプレイしている」と紹介してくれたのが、4月にオープンした民泊「oheso(オヘソ)」です。
辻野さんが、築50年以上の「くつ店兼住宅」を無償で譲り受け、町の補助金なども活用して改装しました。
駅や商店街から近く、1棟貸しで最大16人が泊まれるため、7月と8月は、大学のサークル合宿などで予約が半分以上埋まっています。
もちろん、どんな空き家でも再利用できるわけではありません。
「立地が面白いなと思うのが大きなポイントだと僕は考えています。想定外の費用がかかることもありますので、購入前にしっかりチェックするようにしている」
空き家問題に詳しい北海学園大学の岡本浩一教授は、空き家に対する意識を変えていくことが重要だといいます。
「空き家=社会悪・問題というとらえ方ではなくて、空き家も地域の財産になる可能性があるという見方をしていくのは大事」
空き家は「じぶんごと」
1戸に対応するだけでも大変ですが、空き家は今や北海道内に40万戸以上…。
私たちの身の回りにもきっとあります。
空き家を放置することのリスクについても、岡本教授は次のように指摘しています。
・倒壊や損壊で他人にけがをさせる
・景観の悪化
・放火や不法侵入
・落雪による交通遮断
空き家問題の解決が難しくなる背景についてもこう教えてくれました。
・所有者が近くにいるとは限らない
・相続で権利が分散しているケースも
・問題が起きたときに、自治体が人手不足で支援も手薄になりがち
では、どうすればいいのか…
まずは、親子や親族で「元気なうちに」話し合っておくことが第一です。
長期入院や施設入所の際に、自宅をどうするかアドバイスを受けるなど、医療や福祉との連携を強化することも大切です。
私たちも当事者になるかもしれない、空き家問題。
市町村によっては解体や改修の補助金もあるので、悩んでいる方は、まずお住まいの市町村にご相談ください。
連載「じぶんごとニュース」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年7月1日)の情報に基づきます。