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【倉敷市】地域おこし協力隊 宮崎菜央さん ~ 栄養士の資格も活かしながら、倉敷薄荷を使ったまちづくりに励む協力隊

倉敷とことこ

地域おこし協力隊 宮崎菜央さん ~ 栄養士の資格も活かしながら、倉敷薄荷を使ったまちづくりに励む協力隊

都市圏から地方に移住し、まちづくりや地域振興の活動をおこなう地域おこし協力隊という仕事があります。総務省のデータによると、2023年度の地域おこし協力隊の人数は過去最多の7,200名だったそうです。

かくいう筆者も、地域おこし協力隊として2023年に神奈川県から倉敷へ移住したひとりです。活動するなかで、地域おこし協力隊という仕事がまだまだ知名度が低いことに気が付きました。

地域おこし協力隊は地域の人たちとの連携が必要不可欠。少しでも多くの人に協力隊の存在を知ってもらうべく、協力隊の活動を紹介します。

紹介するのは、現役隊員の宮崎菜央(みやざき なお)さん。活動内容とともに、地域への想いを取材しました。

地域おこし協力隊とは

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎化に悩む地域へ移住し、その地域の協力活動をおこなう国の取組です。

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期はおおむね1年から3年です

総務省|地域力の創造・地方の再生|地域おこし協力隊 (soumu.go.jp)

一口に協力隊といえども、自治体から各隊員に与えられるミッション(依頼内容)は違うため、活動内容や働く場所もそれぞれまったく異なります。しかし、どの隊員にも共通しているのはすべての活動が倉敷の活性化につながること

どのような人が地域おこし協力隊となり、どのような活動をし、そして任期終了後にどのような未来を歩んでいくのでしょうか。

宮崎菜央さんについて

宮崎さんは兵庫県姫路市出身。2023年4月に倉敷市地域おこし協力隊として着任しました。

倉敷市地域おこし協力隊 宮崎菜央(みやざき なお)さん

地域おこし協力隊になった経緯

宮崎さんは、20歳のときに一人旅で広島県尾道市に訪れたことをきっかけに、「どこかに移住してみたい」という想いが生まれたと話します。

前職は、地元の兵庫県で栄養士の資格を活かして、保育園や児童養護施設の給食運営に携わっていました。しかし体調を崩してしまい、転職を考えます。

もともと移住に興味を持っていたこともあり、移住先を検討するなかで倉敷市と出会いました。倉敷は以前旅行で訪れたことがあったそう。地元の兵庫県からちょうど良い距離に位置し、また和の文化や雰囲気が好きな宮崎さんにとって、美観地区あたりの町並みは魅力的に感じられたそうです

そのときにちょうど見つけたのが、現在の地域おこし協力隊の募集でした。ミッションの内容は「地域資源である倉敷薄荷を活かしたまちづくり」。

当時、宮崎さんが特に関心を持ったのは、倉敷薄荷(くらしきはっか)を使った商品開発でした。前職時代、行事食や園内イベントでの食事提供メニューを企画した経験もあり、アイデアを形にする業務に惹かれます。

宮崎さんが開発したハッカ飴

採用面接の前に活動拠点となる倉敷薄荷陳列所に足を運んだ際、ゆったりとした倉敷の町の雰囲気に魅了され「あ、倉敷いいかも」と思ったそうです。

活動紹介

宮崎さんは、地域おこし協力隊としての活動と、地域と交流する活動を個人でおこなっています。

・倉敷薄荷陳列所の運営(協力隊活動)
・子ども向け料理教室「シェフ☆きっず」の運営(個人活動)
・「栄養士ミヤの夜カフェ」の開催(個人活動)

1.倉敷薄荷陳列所の運営(協力隊活動)

倉敷薄荷陳列所の外観

宮崎さんの協力隊としてのミッションは、特産品である「秀美(しゅうび)」という品種のハッカを活用したまちづくり。具体的には、合同会社吉備のくに未来計画が運営する倉敷薄荷陳列所にて、以下の業務をおこなっています。

・倉敷薄荷陳列所に訪れたお客さんへの接客
・新商品の開発や企業とのコラボレーション対応
・「倉敷薄荷だより」の制作や、卸業務や発注手続きなどにともなう事務対応
・倉敷薄荷の魅力を伝えるSNSの情報発信
・イベント出店などを通じた倉敷薄荷のPR活動

宮崎さんが特に力を入れたのは新商品の開発。倉敷薄荷陳列所では、もともとアロマミストやアロマオイルを販売していましたが、お客さんから「他にありませんか?」と別商品を求められることも多かったそうです。

そこで、カルディコーヒーファームのマーケティングや商品開発を参考にして、まずはOEMの製造委託に目を付けました。試行錯誤しながら新商品を開発し、現在はお土産にもぴったりなハッカ飴や、美容師監修のヘアミストやオーガニックバームなども販売しています。

店頭に並ぶ商品

2025年3月現在、宮崎さんに新商品について質問したところ、なんば牧場とコラボレーションしたカップアイスのハッカチョコ味を準備中だそうです。

倉敷薄荷陳列所のInstagramでは、商品紹介やハッカの豆知識などを投稿しています。気になるかたはInstagramもぜひチェックしてみてください。

2.子ども向け料理教室「シェフ☆きっず」の運営(個人活動)

宮崎さんは子ども向け料理教室「シェフ☆きっず」の講師としても活動しています。

シェフ☆きっずのようす 画像提供:宮崎菜央さん

地域おこし協力隊の任期は最長3年間。任期終了後も続けられる活動を探すなかで、香川を拠点に全国展開しているシェフ☆きっずと出会いました。

前職時代から子どもと関わることが好きだったこと。栄養士としての資格も活かせること。そして、倉敷薄荷の魅力を地元の子ども達に伝えたいという想いもあり、認定講師となって2024年に倉敷瀬戸内教室を開講しました。

シェフ☆きっずのコンセプトは、「料理はツール、子ども達の生きる力を育む場所」。料理の技術をただ教えるのではなく、子ども達の主体性や感性を育む料理教室を開催しています。

3.「栄養士ミヤの夜カフェ」の開催(個人活動)

2024年1月から1年間、定期的に「栄養士ミヤの夜カフェ」を開催していました。

ブラックミントを用いたノンアルモヒート

美観地区からほど近い場所にあるカフェ「ことりふらっと」を間借りし、倉敷薄荷の香りがただよう空間で、身体に優しいおやつとドリンクを提供していた宮崎さん。地域の人や岡山県内の地域おこし協力隊との交流の場を作ることができたと話します。

「栄養士ミヤの夜カフェ」は現在は終了しています。

協力隊としての活動だけでなく、個人でも地域とのつながり作りに取り組んでいる宮崎さん。どのような想いで活動をしているのか話を聞きました。

宮崎菜央さんへインタビュー

宮崎菜央さん

──はじめて倉敷薄荷に触れたときの感想を教えてください。

宮崎(敬称略)──

今までに嗅いだことのない香りでビックリしました。ハッカはツンとする香りのイメージを持つかたが多いと思いますが、秀美はペパーミントの成分が含まれており、甘くてすっきりとした香りが特徴です。個人的には、ず-んとした気分のときに嗅ぐと、気持ちも切り替わってリフレッシュできる香りだと思います。

乾燥した秀美

私はもともとハッカにそこまで関心がなかったのですが、倉敷薄荷陳列所を見学したときに、ハッカが思いのほか身近な存在であることを知りました。昔からハッカ葉やハッカ油は医薬品や医薬部外品などとして使われていて、香りを楽しむ以外の用途も多いんです

倉敷薄荷エアフレッシュナー 画像提供:倉敷薄荷陳列所

──倉敷薄荷を活かしたまちづくりで、挑戦してみたいことはありますか?

宮崎──

岡山県内でハッカの栽培が盛んだった歴史は、あまり知られていないように感じます。

ハッカの再生活動の取り組みが広く知られて、特産品としての認知につながるように、現代の子ども達に向けてハッカの魅力が伝えられる機会を作れたらうれしいです。まちづくりは長い目で見る必要があると思います。

任期中のミッションとして、薄荷手帳の改訂版の制作も控えているので、同時に倉敷薄荷の絵本を作れたら良いなと思っています。

薄荷手帳 画像提供:倉敷薄荷陳列所

また、倉敷薄荷の香りは、一度嗅いでもらえたらきっと刺さる人も多いと思うので、実際に香りを体験できる場を増やしていきたいと思っています。

ハッカの蒸留作業

香りを体験するなら屋内がベストなので、住宅展示場のような場所でアロマオイルを焚いてみたいです。倉敷薄荷のある暮らしをイメージできるような機会を提供できればと思います。

あとは、倉敷薄荷の香りは集中力も高まるので、学校関係のノベルティにもちょうど良い気がしています。アイデアはいろいろと湧いてきますね。

栄養士の資格も活かして倉敷薄荷の魅力を伝えて、暮らしをちょっと豊かにするお手伝いができたらうれしいです

──協力隊の活動を通して得られたことはなんでしょうか。

宮崎──

自分自身の成長面でいえば、ブランディングやマーケティングの知識を活かして、倉敷薄荷の啓発活動ができるようになったことです。

ただ勉強して知識を入れるだけではなく、商品開発などに落とし込んで実践できる環境なので経験がどんどん積めました。この経験を活かして、倉敷薄荷の魅力をより多くの人に届けられていたら良いなと思います。

倉敷薄荷オーガニックバーム 画像提供:倉敷薄荷陳列所

──なぜ料理教室のシェフ☆きっずを始めようと思ったのですか。

宮崎──

大きく二つの理由があります。

ひとつは、地域の子ども達や保護者のかたと知り合い、自分の得意なことを活かしながら、少しでも倉敷薄荷の魅力を伝えられる機会を増やしたかったからです。栄養士の資格を持っていても、現場から離れてしまえばブランクも長くなるので、移住後の不安のひとつでもありました。

ただ、ハッカを探求し始めると奥が深いことがわかり、栄養士でも学んでいた植物学や生物学、化学の世界にたどり着いて親近感が湧きました。「料理は科学」とも言われますが、本当にその通りだと思います。

理科の視点でハッカに興味を持ってもらう機会を作り、その延長戦で倉敷薄荷を知ってもらう機会に繋げられたら、一石二鳥ではないかと思いました。

まだ教室を始めたばかりなので、ハッカを使ったメニューを取り入れるところまではできていませんが、協力隊活動と掛け合わせて開催できたらうれしいです。

──子どものときから特産品に触れられる機会は貴重ですね。もうひとつの理由はなんですか?

宮崎──

もうひとつの理由は、倉敷に定住することを考えたときに、私がもっとも接点を持ちたかったのは、地域に住むかたがたでした。協力隊活動中に関わるのは、観光のお客様や受け入れ団体の取引先企業様が大半なので、地域のかたとつながる機会がなかなかありません。

栄養士の仕事を辞めて気づいたことは、やはり衣食住に関わる仕事が好きだということ。私にとってはシェフ☆きっずの活動は定住に向けたツールであり、退任後も資格を活かした職業を選択してくための準備でもあります。

──活動中のうれしかったエピソードや印象に残っていることはありますか?

宮崎──

市内のイベントに倉敷薄荷陳列所として出店した際、夜カフェやシェフ☆きっずで出会った地域のかたがたが「ミヤちゃーん」「ミヤ先生!」と来てくださったことです。

地域のかたがたと知り合いになれていると実感できましたし、地域のかたがたに特産品に触れていただく機会を増やせたと思いました

蒸留作業をおこなう宮崎さん

──最後にメッセージをお願いします。

宮崎──

これまでは夜カフェやシェフ☆きっずを通して、地域とのつながりを作っていました。協力隊を卒業しても、倉敷で仕事をしながら暮らしていきたいと考えているので、もし記事を読んで私とつながりたいと思ってくださるかたがいたら、ぜひ交流してください。

くらとこの記事を読んだよ」と声をかけてもらえたらうれしいです。

おわりに

筆者も倉敷に移住するまで、特産品にハッカがあることをまったく知りませんでした。

倉敷薄荷の香りは爽快感があるのに甘く、一度嗅いだら忘れられません。宮崎さんの開発した商品は、手軽に倉敷薄荷の香りを楽しめるので、倉敷のお土産にもおすすめです。

地域おこし協力隊としての活動だけでなく、個人でも地域活動に取り組んでいる宮崎さんの話を聞き、筆者も自身の活動をさらに頑張ろうとパワーをもらいました。

今後の地域おこし協力隊の活動にも、ぜひ注目してみてください。

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