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【困ったよね、さみしかったよね】“大人を困らせる子どもの行動”への声かけとは

こそだてまっぷ

大人が困る行動を子どもがするときは、実は子どもも困っている場合が多いそう。

2024年春まで5年間にわたり、NHK 『すくすく子育て』で司会を担当した鈴木あきえさん。
プライベートでは、5歳と3歳の二児の母として子育て真っ最中の彼女が、番組で長年活躍されている専門家の先生方と、毎日の子育てにおけるさまざまな疑問、困りごとに関して対談を行った著書『子どもと親のきずなを深めるやさしい声かけ』(Gakken)。
今回は、こちらから「大人を困らせる子どもへの声かけ」について、一部内容を抜粋・再編集してご紹介します。

大人を困らせる行動ばかりする!

あきえさん 我が家でも子どもが困った行動をすることはよくあります。そういうときに私がよくやるのは〝ミッション作戦〞。「あなたにしか頼めないミッションなんだけど… …」とお願い形式にすると、子どもたちは基本的には親を助けたい気持ちがあると思うので、聞いてくれることが多いです。番組では親の気を引こうと上の子どもが下の子どもにものを投げるなどの困った行動もありましたね。

困ったよね、さみしかったよね

柴田先生 大人が困る行動を子どもがするときは、実は子どもも困っている場合が多いんです。そしてその行動に対して大人が困っているんですよね。まず考えることは子どもが困らせる行動をする背景には、なにか理由があるということです。

あきえさん 気を引こうと下の子どもにものを投げるケースではどうですか?

柴田先生 困って気を引こうとしているのがわかっているならば、「そんなことしてはダメ」 としからずに、「困ったよね、さみしかったよね」と言って近くに行ってあげてください。子どもは親に好かれたいはず。なのに、困った行動をするのは、親に気持ちをわかってほしいから。ものを投げるのは「私は最近大切にされてなくてさみしいの。困っていることをわかって」という合図だと思います。本当に困っているのは大人ではなく子どもなんだから、子どもを見てあげればいいんじゃないかと思いますね。

あきえさん 子どもの今の気持ちを親が言語化してあげることが大切だと、私も番組でたくさん教えてもらいました。子どもが困っていることに「困ったね」と言うことが最初の一歩なんですよね。ついついそこをすっ飛ばしがちですが、まずはワンクッション置くことが必要なんですね。

柴田先生 気持ちを受け止めてもらえれば子どもも落ち着くので、そこから〝ミッション作戦〞などをやるといいかもしれません。

大事なのは

むやみにしからず、大人を困らせる背景を考えてみること

柴田愛子先生
私立幼稚園勤務を経て、1982年に“ 子どもの心に添う”を基本姿勢とした「りんごの木」を発足。現在は代表を務める保育者。講演や執筆活動を行いながら 、“ 子どもと大人の気持ちいい関係づくり”を目指す。

他の子どもにいじわるをする

あきえさん 私の5歳の息子も他の子どもにいじわるをしたりされたりすることがよくあり ます。最初はその都度、怒っていたのですが、 あまり伝わらず逆効果な気がして… …。 特に友だちの前で怒っても言い返してくるだけで、響いていないんですよね。なので、家で 落ち着いているときに「どうしたらよかったの かな?」や「今日は仲良くできていたね」と声かけをするように意識してみました。

どういう気持ちでやったの?

遠藤先生 まず前提として、大人からはいじわるをしているように見えても、子どもはいじわるをしているわけではないかもしれないということ。子どもは相手に気持ちを上手に伝える、 語彙などのスキルをまだ十分に持っていません。 気持ちを伝えようとした結果、攻撃的に見えるようなことをしてしまい、大人からはいじわるに見えてしまうのでしょう。実際は相手の子どもと遊びたかっただけかもしれません。そのため大人が最初から「いじわるをしてはダメ」と決めつけてしまうのは、子どもの気持ちを無視した形になります。ワンクッションおいて「どういう気持ちでやったの?」など、悪意を持っていじわるしたわけではないという可能性を確かめるのがいいでしょう。

あきえさん 子どもが育んでいる世界と親のフィルターで見る世界は、違うのでしょうか?

遠藤先生 そうですね。例えば上の子どもが下の子どもにいじわるしたように見えても、かわいくてちょっかいを出しただけかもしれません。 そういうことも想定して気持ちや表情を見てあげてください。

あきえさん 3歳の娘が友だちの赤ちゃんの顔をポンとたたくことがあり、その度に注意し ていた時期がありました。でも最近、別の表現方法を覚えて手が出なくなった気がします。

遠藤先生 かわいいと思って、相手に反応してほしいと思っていたのかも。でも手加減がわからず、強く押してしまっていたのかもしれませ んね。「もう少しやさしくさわってね」などと教えるのもいいですよ。

大事なのは

「いじわるをした」と大人が決めつけないこと

遠藤利彦先生
東京大学大学院教育学研究科教授、 同附属発達保育実践政策学センターのセンター長で、心理学者。専門は発達心理学、感情心理学、進化心理学。養育者と子どもの関係性と子どもの社会情緒的発達/感情の進化論・文化論を研究している。

自分が嫌なことを友だちにもしている

あきえさん うちの5歳の息子が乱暴な言葉を使いたい時期のようで、理由を聞くと「男らしくてカッコいいから」と言われました。なので、それをやめさせるというよりは、丁寧な言葉で話せているときに「やさしい言葉を使うとみんな気持ち良いよね、素敵だね」と声かけをするようにしています。一時期はしかっていましたが、そうすると「できないぼくがダメ」と落ちこむようになってしまったので、言いかたを変えてみました。

どうしてああいうことをしたの?

大日向先生 親は言葉かけの一つひとつに敏感になりがちですが、むしろ、どういうシチュエーションで、どういう表情で言ったか、全体をとらえることが大事です。 他人が嫌がることをするのは、子どもだけでなく大人にも起こりうること。自分がイライラしたときに、それを他の人にぶつけてしまうこともあると思います。そういうときは、良くないことだと指摘する前に、「どうしてああいうことをしたの? あなたはどう思っていたの?」と、確認することが大切です。そこで、もし子どもが「いけないと思ったけれどやってしまった」と言ったならば、「そう思えただけでもすごいね。私もそうしてしまうことがあるよ。それがわかるだけでもすごいと思うよ」と子どもをほめてあげてください。
親がこうした言葉をしからずに言ってくれれば、子どもは次のステップに進めるのではないでしょうか。そこにさらに愛のメッセージをひと言添えてあげれば、鬼に金棒ですね。

あきえさん 子どもの乱暴な言葉を聞くと、すぐ注意したくなる親心もありますよね。

大日向先生 いろいろな言葉があることを知っていることは大切なので、ただ「やめなさい」 と言うのではなく「いろいろな言葉を覚えたのね。どこで覚えたの?」と聞いてあげましょう。 それから「これはどういうときに、どういう場面で使ったらいいのかな?」といっしょに考えることで、子どもも言葉にはT P Oがあるとわかってくれるのではないでしょうか。

大事なのは

子どもがどんな理由でその行動をしているのかを聞くこと

大日向雅美先生
恵泉女学園大学学長、専門分野は発 達心理学。学術博士(お茶の水女子 大学)。半世紀余り、母親の育児ストレスや育児不安を研究。NPO法人あい・ぽーとステーション代表理事として、子育て家族支援にも注力している。

『すくすく子育て』が 私の子育てに伴走してくれた(鈴木あきえさん)

自分が親としてスタートしてからの5年間、 『すくすく子育て』に携われたことは私の人生のごほうび。ラッキーなことだと思い、とても感謝しています。 親を完璧にやりたいと思っていたけれど、そうじゃなくてもいいことを知れて、良い意味でガチガチでなく肩の力が抜けた子育てができるように。子育てに正解はないことがわかり、育児に臨む気持ちを変えてくれました。 これからも悩むことはあると思いますが、声かけだけでもいくつかパターンを知って引き出しを増やしておけば、それが役に立つと思います。みなさんもこの本でぜひ育児の引き出しを増やし、ときにはリフレッシュしていっしょにご機嫌なパパママを目指していきましょうね。

鈴木あきえさんを支えた「子育て中のやさしい言葉」

「子どもとの時間は、 量ではなく質」

うちでは子どもたちを、月齢が低い頃から保育園に預けていました。そのことに対して後ろめたさがあった時期に、この言葉を知ったんです。また番組で乳幼児教育実践研究家の井桁容子先生に、「子どもと接しているときは、10分でいいからうわの空をやめよう」と教えてもらったのも印象的でした。例えばスマホを見ながら子どもと接するのはうわの空だということ。ならば10分、難しければ3分でいいので全力で向き合うほうが良い時間だと気づいたんです。いっしょにいる時間は短いけれど質で考えるようになってからは、私も全力でいっしょに遊ぶようになりました。例えばなにかの作業をしながら中途半端に接しても、作業も進まないし子どももイライラするだけ。それなら、10分だけでも全力で向き合ったほうが、お互いハッピーな気がしますね。

※こちらの記事は『子どもと親のきずなを深めるやさしい声かけ』(Gakken)から、一部内容を抜粋・再編集してご紹介しています。

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