「恥ずかしい」と思わない。3年前の軽度認知障害(MCI)を改善させた88歳の現役俳優・山本學氏からのアドバイス
インタビュー前編では、俳優・山本學さんが本山式感覚神経トレーニングを通じて軽度認知障害(MCI)の症状を改善された経験を伺いました。後編では、トレーニングの具体的な効果や、MCIと向き合う上で大切な心構えについて、山本さんと本山先生からの貴重なアドバイスをお届けします。
日常生活に支障はなし
MCI改善には周囲の協力が不可欠
――山本さんは『本山式筋トレ』を実践する中で、具体的にどういう部分で効果を感じられたのでしょう。
山本:トレーニングを続けることで、徐々に痛みを感じるようになりました。それが「感覚神経が刺激されて、つながっている」証拠でもあるので、先生の言うとおりだなと。私はひとり暮らしなんですけど、日常生活で必要なことも全部やれていますし、特に支障なく過ごせています。
――本山先生も先ほどから「継続が大切」ということをおっしゃっていますが、山本さんがトレーニングを継続できた理由は?
山本:やっぱり自分の身体のことなので、自分でしっかりと責任を持ってやらなければいけませんよね。俳優という職業柄、トレーニングが身近にあったのも大きいと思います。あとは、MCIや認知症を「恥ずかしいものだ」と思わないことですね。MCIや認知症と向き合う上で、周囲の理解や協力は不可欠です。これは、断言できる。だからこそ、隠すのではなくしっかりと自分の症状や状況を伝えて、周囲のサポートを得ることが絶対に必要になってくる。ひとりで抱えてしまっても、良いことなどありません。
――「他人に言いにくい」という風潮が早期発見を妨げているとも言えそうですね。
山本:私に言わせれば、年齢を重ねれば脳の機能が低下するなんて当たり前のこと。単なる老化現象です。なにも恥ずかしがることはない。私自身にはそういう意識が皆無だったので、本山先生から「隠したがる人がほとんど」と聞いたときには驚いたくらいです。
本山:もちろん「隠したい」という心情は理解できるのですが、それをすると早期発見が遅れ、結果的に早期回復も見込めなくなってしまう。だから學さんのような方がこういう発信をしてくれるのは、とてもありがたいです。
山本:少し話がそれてしまうかもしれませんが、診断を受けた当事者だけでなく、それをサポートする人間にも、社会全体でもっとやれることがあるはずなんです。なぜ「隠したい」かと言えば、恥ずかしいという思いもあるでしょうが「迷惑をかけられない」という切実な事情もある。そういう部分で、社会のシステムとしてもう少し「サポート側」の人たちにも手厚くできるようになってくれればいいんじゃないかなと感じます。
写真:1時間以上のインタビューに応じていただいた
――今回、本山先生の著書である『認知機能改善 30秒スクワット』では、山本さんも実践された感覚神経トレーニングを自宅でもできるように簡易化して紹介しています。本を読んだ感想も聞かせて頂けませんか。
山本:素晴らしいと思います。私は自分自身でいろいろと勉強して、そのうえで実際に先生のトレーニングを実践したので、自信を持っておすすめできますよ。本山先生は、腕はあるけど、「宣伝」が上手くないから、この本にはもっと売れてもらわないともったいないです(笑)。
本山:いやいや……(苦笑)。學さん、本当にありがとうございます。
――貴重なお話をありがとうございます。最後に、認知症やMCIに悩む方に向けて、メッセージをお願いします。
山本:先ほども言ったように、まずは「恥ずかしいこと」だと思わないでほしいですね。そんな風に思う必要はないんです。とはいえ、これは当事者本人だけでなく社会全体の問題です。これだけ診断を受ける人が増えている現状がるあるなかで、MCIや認知症への理解がより深まることを心の底から望んでいます。私自身も、その経験をこうして語ることで、少しでも多くの人の参考になってくれたり、症状緩和や改善の手助けになれば、これほどうれしいことはありません。