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ドライアイス争奪戦!環境に良いことをしたら、足りなくなった?

TBSラジオ

今日は「ドライアイス」のお話です。スーパーで冷凍食品を買うとき、宅配便で生鮮品が届くとき、当たり前のように入っていた、あの白い煙が出るドライアイス。

欲しい量の6割だけ!?ドライアイス争奪戦

実は今、このドライアイスが「足りない」という声があがっているんです。富山県の「とやま生協」の畑野 仁さんに聞きました。

とやま生協 畑野 仁さん

週一回、ご家庭の方の玄関先まで届けると。で、その時に冷凍商品でドライアイスだったと。

だんだんそのドライアイス自体が供給が少なくなって、価格がどんどんどんどん高騰していって、2020年ぐらいから「毎年1割増し」みたいな感じで上がっていってっていうのがずっと続いていた。

去年も結局、必要数のだいたい6割ぐらいしか入らなかったんですね。「本当はこれだけ使いたいんだけど」っていう風に発注しても、「数量制限で、すいません、6割しか納品できません」みたいな。っていうのもあって、どんどんど取り合いみたいな。

対応せざるを得ないんですけど、ドライアイス使ってるところは結構ひいひいだと思いますけど。

とやま生協のホームページより(2024年12月の案内)

宅配事業ではドライアイスは「必需品」でした。お客さんの帰宅時間に合わせて、200グラムから1キロまで、保冷に必要な量を調整して入れていたそうです。ところが2020年ごろから、じわじわと価格が上昇。畑野さんの記憶では、10年前は1キロ70円ぐらいだったのが、今年は150円ほど。10年で倍近く、値段が跳ね上がっています。

そこで、とやま生協では去年12月から、配送時のドライアイスを完全にやめることを決断。代わりに使い始めたのが、「保冷剤」。マイナス25度まで冷える特殊な保冷剤を、発泡スチロールの箱に敷き詰めて、今年の猛暑はなんとかこの方法で乗り切ったそうです。

また、同じような状況は全国の宅配業者で起きているようで、小さめのサイズで対応したりと各社、工夫を重ねているようです。

ドライアイス=CO2の塊!工場減少で原料不足に

では、なぜこれほどドライアイスがが足りなくなっているのか?その理由を、九州大学工学研究院の教授、星野 友さんに伺いました。

九州大学工学研究院・教授 星野 友さん

端的に言うと「二酸化炭素が足りなくて、(ドライアイスの)値段がどんどん上がっている」ということが起きております。

ドライアイスは、基本的には二酸化炭素の塊です。なので、今まではなるべく濃度が高いところ=「二酸化炭素排出源」から二酸化炭素を回収するっていうのが行われてきました。石油化学工場とかですね、そういったコンビナートの副生物として、結構な濃度の二酸化炭素が出てくる場所があちこちにありました。

もう多分10年ぐらいの流れで、いろんな化学メーカーっていうのは日本から工場を、アジアですとか、中東とかアメリカの方に進出しているので、日本国内の工場が結構もう減っていて、これまで工場から出ていたCO2が出てこなくなってしまう。そうするとなかなか高純度なCO2を簡単に得ることができなくなってきて、二酸化炭素およびドライアイスの流通価格がちょっとずつ上がっていると。

ドライアイス(イメージ)

ドライアイスはそもそも何から作られているかというと、「二酸化炭素」。工場で出るCO2冷やして固めたものです。これまでは石油精製や肥料工場などで「ついでに出てくるガス」を集めてドライアイスにしており、いわば「おこぼれ」の再利用だったそうですが、ところが今、その「おこぼれ」が減ってしまっているようです。

背景には、工場が海外に移転したり、「CO2を減らそう」という世界的な動きで製造方法が変わったりと、環境には良いことなんですが、副産物のCO2も減ってしまいました。

さらに、「じゃあ足りないなら、海外から輸入して賄おう!」ということで実際、韓国などからドライアイスを輸入する動きもあるようですが、これでは本末転倒。せっかく日本がCO2を減らしてきたのに、わざわざドライアイスとして輸入する…。しかも運んでいる間に半分近くが気体に戻ってしまうため、コストもかかるし、効率も悪いんです。

さらに、とやま生協のように「保冷剤」に切り替えた企業もありますが、ドライアイスよりも高くつく上、保管場所もとられるそうで、すぐには難しい企業も多いようです。

お風呂の排気ガスが資源に!? CO2を捨てずに循環させる

つまり、環境に良いことをした結果、ドライアイスが作れなくなってしまった…なんとも皮肉な状況ですが、そんな中、星野さんは「減ったCO₂を、別の場所からかき集める」技術を開発。CO2回収技術の社会実装を目指す九州大学発スタートアップ「株式会社JCCL」(本社:福岡市西区)の取締役も務めています。詳しくお話を伺いました。

九州大学工学研究院・教授 星野 友さん

皆さんのご家庭にある「ガス給湯器」。ベランダとか外に置いてあるガスの湯沸かし器でして、お風呂あるいはシャワーを浴びるときにそこで火がついて、あったかい排気ガスが「ふわーっ」と出てきてる。そこから出てくる排気ガスがありますよね。その排気ガスを吸い取って、我々の装置の中に導くと。吸収した二酸化炭素を今度は吸引ポンプで吸い取るとですね、高純度な二酸化炭素が得られる。

いまドライアイスの値段が上がってるとかいろんな話 出てますけど、今まで人類は物を燃やして二酸化炭素を「出す」のは得意だったんですけど、植物と違って二酸化炭素をうまく回収して使えていなかった。僕らはそれをなるべく低コストで、エネルギーかけずに二酸化炭素を濃縮する技術を開発してますので。我々人間も植物みたいに、ちゃんと排出した二酸化炭素を自分たちで回収して、有効利用するような社会ができるんじゃないかなと思います。

家庭の給湯器から、CO2をかき集める装置を開発。私たちが毎日お風呂を沸かすとき、給湯器の排気口から温かいガスが出ている。あの中に、7~8%のCO2が含まれているんです。星野さんの装置はそれを掃除機のように吸い取って、最終的に99%以上の高純度なCO2として回収。

すでに実証実験は成功していますが、ただ、家庭に置けるサイズまで小型化したり、回収したCO2をどう使うか、その仕組みづくりはこれから。将来的には、ドライアイスにしたり、燃料として使うこともできそうだと話していました。

お風呂のガスからCO2を集めるという、身近なところの資源を有効活用する技術が期待されています。

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)

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