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タイヤの小川、研修施設の一橋学園、アートの鷹の台——「小平市」の各駅は個性バラバラ!? いろいろな駅前編【多摩のA面】

さんたつ

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東京都の西側、多摩地域全30市町村を歩き回って徹底調査する【多摩のA面/たまらんB面】。第2回は「小平市」。津田梅子ゆかりの津田塾大や、地元産果物を使用した新たなクラフトビール、そして癒やしの緑道も! また、FC東京のホームタウンの1つでもあります。江戸時代からの街づくり編につづき、【小平市のA面】のいろいろな駅前編をレポートします。

玉利堂(たまりどう)

【多摩のA面/たまらんB面】とは

東京都の西側、23区以外のエリアにあたる多摩地域。このエリアに越してきて日が浅い筆者が、30市町村を1つずつ歩き回って調査! 1つの市町村ごとに街の見どころを紹介する【A面】と、気になるテーマを深掘りする【B面】の二部構成でレポートします。

小平市 DATA

面積……20.51平方キロメートル
人口……19万6799人(2025年1月現在)

小平市内に5路線、7駅。西武鉄道網のラビリンス!?

「江戸時代からの街づくり編」では、江戸期の新田開発からスタートした小平の街づくりに触れました。

その後、近代化を経て、現・小平市域にはこんな路線網が形成されています。小平駅にあった「グリーンロードマップ」という石板がわかりやすいので、ご覧ください。

縦横無尽に鉄道路線が! 地図では、上方が南になってます。

西武新宿線、西武国分寺線、西武多摩湖線、西武拝島線、そしてJR武蔵野線……結構な路線数ですよね!

このうちJR武蔵野線だけ、やや特殊。小平には「新小平駅」の1カ所で、市内では大部分が地下のトンネル。開業時期も1973年で、他路線に比べて後発です。

ほかは全て、現・西武鉄道の仲間。それぞれ微妙に異なるタイミングで出来上がっていったのですが、経緯は超複雑。その辺は、各種の交通系YouTubeチャンネルに任せ、割愛させていただき……。

強引にまとめると、小平の鉄道の大体が「西武カルチャー」の中にあります。改札の脇に、各駅が推すライオンズの選手のポスターが貼ってあったりして……。

しかし! 駅前ごとの様子がまた、個性バラバラ! 本記事では、この拠点分散型シティ小平市で、駅周りの様子を何カ所か観察してみましょう。

「日本一の丸ポスト」とは!? 駅の北側には石材店が目立つ「小平駅」

まずは、市の名前を関する「小平駅」から。西武新宿駅からやってくる西武新宿線の急行が止まり、西武拝島線も分岐する駅です。

小平駅南口。名産・ブルーベリーのゆるキャラ「ぶるべー」と、練習場のあるFC東京のマスコット「東京ドロンパ」の像が。

南口には「ルネこだいら」という大規模な市民文化会館があるのですが、その手前にある、どうしたって目に入るシンボルがこちら。

に、「日本一丸ポスト」〜っ⁉︎

小平市内には、昔ながらの赤い円筒ポストが多数現存(都内で最多の保有数)。それを記念したのが、高さ2.8mのこのポスト!

胴体の材料は、上下水道に用いるヒューム管。上蓋部分は、なんと中華鍋! ちゃんと投函口もあり、実際に手紙を送れるんだそうです。

さて駅の反対側、北口を散歩すると、石材店が目につきます。

墓石の石材や、お参り用の手桶などを並べた店が並ぶ。

近隣に都立の小平霊園があり、その正門がほど近いのです。東京の近代発展に伴い、市中の墓地不足が深刻化。多磨霊園(府中市・小金井市)や八柱霊園(千葉県松戸市)と同じく郊外に開かれた小平霊園は、1948年に開園。壺井栄や小川未明など、錚々(そうそう)たる著名人が眠っています。

たそがれの小平霊園・正門。実は小平・東村山・東久留米の3市にまたがる広さ。

タワマン建設中。変貌を遂げるタイヤ工場の街「小川駅」

次は「小川駅」。西武拝島線、西武国分寺線が乗り入れています。

冒頭でバッサリ割愛した、近隣鉄道網の成立にもかかわる部分ですが……実はこの小川駅、東京都内「最古の私鉄駅」の一つ! 今の西武国分寺線の前身である川越鉄道が明治27年(1894)に開業した時からある、超古参です。

小川駅西口。手前に、工事の覆いが目立つ。

そんな小川駅の西側では目下、高層ビルの建設が進行中。地上27階のタワマン、その名も「アトラスタワー小平小川」。公益施設も入るそうで、行政サイドも気合十分。今、最も急激に変貌を遂げつつあるエリアではないでしょうか。

伸びゆくアトラスタワー。余談だが、手前の袖看板にある「吟雪」は、かつて武蔵村山市にあった酒蔵のもの。今はもうない銘柄です。

用地整備のため、元の商店街の一部はなくなってしまったようですが、今も風情ある個人店も健在で……。

かつては青梅街道の「小川宿」があったこの一帯。「あいあい中宿」という名もそれに由来するものか。

駅の北側にある「あいあい中宿商店会」。スペイン語講習会も開くコーヒー豆店に、肉まん&洋菓子の専門店など、個性的な店が目立ちました。

また、小川駅周辺を語る上で外せないのは、東口にあるブリヂストンの「技術センター・東京ACタイヤ製造所」でしょう!

天下のタイヤメーカー・ブリヂストンが、創業地・福岡県の久留米工場に次ぐ2番目の工場として、1960年にこの小川に工場を開業。現在、乗用車用のタイヤは作っていませんが、航空機タイヤの専門工場は敷地内にあります。

敷地内には「ブリヂストン イノベーション パーク」という一般公開施設も。
その隣には「タイヤ館」も。産直!?(実際は小川では自家用車用タイヤは作ってないので、違うぞ!)。

活気ある個人店が林立! あなたも研修で来たかもしれない「一橋学園駅」

次は「一橋学園駅」。国分寺駅が起点の、単線4両の西武多摩湖線のみが通る小さい駅ですが——。

一橋学園駅北口。じつはこの改札の中にも踏切があり、渡ってホームに上がる構造。

まず、この駅名から気になるのは、国立市に本拠地のある一橋大学との関係ですよね。語ると長くなるのですが……結論から言うと!

外国人学生寮が主体の「一橋大学 小平国際キャンパス」だけは、たしかに付近に存在します。が、やはり教育機能のほとんどは、国立駅周辺に集中。よって、昼間に一橋生が行き交うような学生街の感じは、あんまりないです。

が! 歩いてみると、全く違った種類の活気があり、驚きました。線路に沿って個人商店が並んでいて、夜には居酒屋の赤提灯が点々と。どの店内にもにぎわいがあるのです。

駅の北側にも南側にも、味のある商店街が。夜には酒場が活気づきます。

お客さんの多くは近隣の住宅地からでしょうが、周りにある特徴的な施設群にも、秘密がありそう。

代表的なのは「陸上自衛隊小平駐屯地」と「関東管区警察学校」——自衛官や警察官たちが寝泊まりする街でもあるんです。駅前には、2022年に開店した「ラーメン二郎 一橋学園店」が存在。デフォルトの盛りが多く人気ですが、若い隊員や警官の皆さんに支持されているのでしょうか。

他には、国交省の職員が研修を受けにくる「国土交通大学校」や、建設関係者向けの「全国建設研修センター」も。

国土交通大学校。測量や土木技術などの研修が行われている。

で、建設研修センターの目の前、線路を挟んだ真向かいにある居酒屋看板に、気になる一行を発見しました。

残念ながら、この店自体は閉店してしまったよう。

「歓迎!!研修生」

昼間の何らかの研修後、夜は仲間と情報交換がてら一杯……という需要が多々あるのでしょう。

実際筆者も、ふらりと入った一橋学園の居酒屋で、研修終わりと思しき宴に遭遇。全国各地、それぞれの地元の繁華街での「運転代行事情」について盛り上がっていました。

一見ふつうの小駅に見えて、全国から”たまたま”集まった人たちが活気を吹き込む街。他にない雰囲気です。

「ムサビ」をはじめ学校がたくさん! ちょっとアートな雰囲気の「鷹の台駅」

国分寺駅から延びる西武線というのは、2路線あります。先ほどの「一橋学園駅」のある西武多摩湖線。そうじゃない方は、西武国分寺線。いや、ムズいですよね……。

後者の西武国分寺線「鷹の台駅」でも降りてみましょう。昼間、車両が着くと、学生さんがワッと降りて駅の四方に歩いていきます。

鷹の台駅前の商店街。

それもそのはず。この辺りには津田塾大学、白梅学園大学、朝鮮大学校と、教育機関が集中。駅前には学生向けのランチなどを出す食堂に加え、オシャレな空気感のカフェやギャラリーが目立ちます。この雰囲気、武蔵野美術大学が近隣にあることも大きいでしょう。

武蔵野美術大学の正門。

多摩美術大学(八王子市)と並ぶ、私立美大の雄・武蔵野美術大学、通称ムサビ。噂では、漫画『ハチミツとクローバー』の舞台のモデルになったとも。駅からキャンパスまでの通学路沿いには玉川上水が流れており、木陰の緑道をキャンバスバッグを担いだ学生さんが急いで行きます。

玉川上水に沿った緑道。「ムサビ」への通学ルートの一つになっている。

1階はカレーとスイーツが人気の喫茶室、2階はギャラリー!? ——鷹の台の気になる建物

さて、鷹の台駅付近、玉川上水にかかる「水車橋」近くに、気になる茶色い建物があります。

玉川上水にかかる小さな「水車橋」。
キャラメル色の建物。1・2階まとめて「Zoeee(ゾーイー)」という名前がついています。

この建物の1階は、玉利さんというご夫妻が2024年から営む喫茶室『玉利堂(たまりどう)』。

夫・玉利高久さんの作る本格的なカレーと、妻でパティシエの愉生さんの手がけるスイーツが名物らしく……伺ってみましょう!

玉利愉生さん(左)と、玉利高久さん。ヴィンテージな木製レジも必見。

入ると古民家風の店内のそこここに、落ち着く風合いの調度品が。

一人でも、グループでも、ゆっくりできそう。
国立市を拠点に活動中のDJ「何何レコード」さんが選んだ音源のポップアップコーナーも、なじんでいます。

あちこちを見て回っているうちに、注文していたカレーが出来上がりました。

インドカレーのプレート2種盛り1300円。期間により、ネパールカレーのダルバート(定食風)スタイルにもなるそう。

2種盛りのカレーは日替わりで、取材日は、豚のキーマカレーと、ケララべジタブルカレーでした。ドライなキーマと、ココナッツミルクがまろやかなケララ。対照的な二つを少しずつ混ぜながら食べ進めましょう!

「次の一口はキーマ多めで」などと考えながらスプーンを口に運ぶうちに、バスマティライスがみるみるなくなっていき……。周りに添えられたひよこ豆のサブジ(炒め煮)、野菜のアチャール(漬物)、そしてライタ(ヨーグルト風乳製品)で、食欲も加速。ごちそうさまでした!

高久さんの実家は、2018年の閉店まで立川駅南口で長く愛された喫茶店「あちゃ」。同店の名物だったこともあり、昔からカレーという料理になじみがあったそう。インドにも足を運んで研究、現在のスタイルを作っていきました。

そしてもう一つの楽しみ、愉生さんが手がけるスイーツ部門「菓子処タマリのおやつ」。

今回は「喫茶店のかためのプリン」をチョイスしました。

喫茶店のかためのプリン550円、ホットチャイ550円。

高密度! 弾力があります。そして、つづけて何口食べても飽きのこない、ちょうどよい甘さ。

材料は卵、牛乳、砂糖、バニラのみとシンプルですが、一つ一つを厳選。山梨県北杜市の完全放し飼いの養鶏場で採れた卵に、低温殺菌牛乳……と、こだわりがあります。砂糖は奄美産で、精製度合いの低いキビ糖だそう。

「ちょっとコクのあるキビ糖を使うと、甘みがとんがって出てこなくて、丸みのある感じに仕上がります」と愉生さん。

そして話は、ここ鷹の台に出店するまでの経緯に。

「10代の頃、この辺、玉川上水沿いを散歩したら本当に気に入って。20歳前後になっても、ちょっと離れた当時の住まいから、そこの小平中央公園に一人で読書しに来たり。その頃から鷹の台にお店を出したい! と思ってたんです」

なんと、そんなにピンポイントに鷹の台への思いを抱きつづけたとは!

でも、そこまでほれ込む方がいるのもわかるような、緑と文化が調和した唯一無二の街なんです。

レジ前では、焼き菓子の販売も。この日はフロランタン、ショートブレッドなど。

実はこの『玉利堂』の2階は、『Zoeee Gallery』というギャラリーになっています。階段を上がって、そちらにもお邪魔しました。

『Zoeee Gallery』を運営する、オーナーの有路春香さん。

古民家調の1階とは雰囲気が異なり、明るい白壁。玉川上水に面する窓からの採光が心地よい空間です。こちらも『玉利堂』と同時、2024年にオープン。すでにこれまで、武蔵野美術大学の学生から91歳の写真家まで、幅広い方の展覧会を開催してきました。

しばしばギャラリーの来場者は、作家の関係者に絞られがち。ですがここでは、1階にお茶を飲みにきた人がたまたま立ち寄るような偶発的な動線が生まれているそう。

筆者が尋ねた日は、教員でもあり、コーヒーの探究活動をしている竹内英雄さんによる展示の期間中。ベトナムのコーヒー農園で撮影した写真が並んでいました(会期は終了済)。

展示作家の竹内さんはベトナムに通い、ロブスタ種というコーヒー豆を無農薬栽培する農園の風景を記録している。

五感でコーヒーを楽しむというコンセプト。実際に豆を触って、焙煎前後の重さの違いを知るコーナーに加え……最後には、竹内さん自ら抽出した一杯が提供されます。

ROKという手動エスプレッソマシンを操る竹内英雄さん。
表面にはきめ細かい泡が。

一口飲むと……目覚めるような鮮烈さ! その後に、香り高い風味が。コーヒーの余韻を感じながら、『玉利堂』と『Zoeee  Gallery』の建物を後にしました。

玉利堂(たまりどう)
住所:東京都小平市上水新町2-27-12 1F/営業時間:11:30〜17:00(日は〜15:00)/定休日:月・火/アクセス:西武鉄道国分寺線鷹の台駅から徒歩7分

Zoeee Gallery(ゾーイ―ギャラリー)
住所:東京都小平市上水新町2-27-12 2F/営業時間:10:00〜17:30(日は〜15:00)/定休日:月・火/アクセス:西武鉄道国分寺線鷹の台駅から徒歩7分

鷹の台駅付近。西武車両はやはり、黄色が好み……。

帰りの電車に揺られ、本記事の構成を考えました。

いや〜、まだ紹介できていない小平市内の駅も、あるんだよな〜。

実は小金井市にはなく、玉川上水の桜にちなんで命名された「花小金井駅」。市役所の最寄り駅「青梅街道駅」、唯一のJR勢「新小平駅」。でも、記事の文章量には限りが……。

あれ? 気づけば電車は、自宅と真逆、東村山駅方面へ……! やっぱりこのへんの西武ネットワーク、初見には難しい! 精進します。

取材・文・撮影=イーピャオ

イーピャオ
ライター
1989年東京都生まれ。週刊少年ジャンプのコラム「巻末解放区!WEEKLY週ちゃん」を連載中。小山ゆうじろう氏との漫画『とんかつDJアゲ太郎』で原案担当。個人冊子レーベル「いきいき発信プラザ21」にてZINE「多摩と酒」などを発行しています。

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