Hello,UnHappy New Year――『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインⅡ』ReoNaにとって大切な言葉をエルザに託した新作。神崎エルザ starring ReoNa『ELZA2』インタビュー
逃げることにすら疲れ、心が痛んでも、涙さえ流せない日々。そんな時間を過ごしてきた少女・ReoNaは、アニメや音楽に出会い、少しずつ救われていった。そして今度は、“絶望系シンガー“としてアニメに寄り添いながら、「あなたへ」と語りかけるように、一対一の音楽をかき鳴らしている。今でこそ数々のアニメと向き合い、タイアップ曲を歌ってきたReoNaだが、すべての原点はTVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』(以下、『GGO』)に登場するキャラクター、神崎エルザとの出会いである。
2018年の『ELZA』、2019年の「Prologue」、そして昨年10月に行われたライブ『神崎エルザ starring ReoNa ✕ ReoNa Special Live “AVATAR 2024”』とクリスマスに届けられた『ELZA2』。その歩みの先で迎えたのが、2025年3月に開催された全国6都市7公演の「ReoNa ONE-MAN Live Tour 2025 “SQUAD JAM”」である。全公演オールスタンディング──全身全霊で、『GGO』シリーズと再び真正面から向き合った。ReoNaとエルザ。ふたりの旅が、ひとつの“終焉“を迎えた今。そして、『神崎エルザ starring ReoNa ✕ ReoNa Special Live “AVATAR 2024”』のライブ映像作品としてのリリースや、ライヴ・フィルム上映が決まった今だからこそ。改めて『ELZA2』という作品に込められた想いをここで振り返りたい。
【写真】神崎エルザとして楽曲制作に向き合った時間を振り返る|ReoNaインタビュー
その時にできる最大でぶつからなきゃいけない
──さて、お話をうかがっているのは12月中旬に差し掛かるタイミング。そして、2024年の締めくくりに、神崎エルザ starring ReoNaとしての2枚目のアルバム『ELZA2』がついにリリースされます。エルザとしての活動は続けていらっしゃったので、音源リリースという意味では6年ぶりになるのかと、改めて驚きました。
ReoNaさん(ReoNa):そうですね。私自身、エルザとしてのお歌と共に歩んできたので、確かに6年ぶりというのはなんだか不思議な気持ちです。6年前、エルザのお歌を歌っていた頃は、この先の1年後や2年後の自分の未来さえ信じられなかったんです。でも、6年という時間が経って、いま、もう一度エルザとして音源をリリースできるなんて……本当に、当時は考えていなかったですね。嬉しいことです。
──当時のインタビューを見返したのですが、まさに「実感がなくて、ドッキリなんじゃないか」とおっしゃっていて。
ReoNa:「実感がないです」って何度も口にしていたのを覚えています。もうずっと(ReoNaチームのスタッフに)言ってたんです。「いつ“ドッキリでした”とネタバラシされるんですか」と……本当に世界が変わりました。最早異世界転生したかのような気持ちです。その気持ちのまま走り続けてきて。今はもう現実に変わっていますけど、6年前の自分を改めて振り返ると、すごくガムシャラに、目の前の数ミリのことだけを考えて歩いていました。
──でもきっと、純粋なところは変わっていないですよね。
ReoNa:そう思います。その中で、よりエルザを実態として実感するようになったような気がします。当時はまだ、エルザに関する情報が本当に少なかったですよね。小説の中でエルザについて触れられているのは数行程度。その少ない情報をもとに、チームみんなで想像を膨らませていったんです。
当時はわずかな記述からイメージを紡いで始まったエルザが、アニメの映像になり、いろいろなライブで神崎エルザとして一緒にお歌を紡いできて、彼女がどんな想いを抱えているのか、どんな歌を紡ぐのか。それがよりリアルに感じられるようになった気がします。その果てで、またこうして新しい音楽でエルザと向き合えるのは、すごく特別なことだなと感じますね。
──ちょっと話がそれてしまうのですが……リアルタイムでエルザを追ってきた人は、その軌跡も一緒に楽しまれている方たちで。それはそれですごく尊いことなのですが、ある意味、今回エルザを知って追体験できるというのも羨ましい立場だなと。曲もたくさんあるし、情報もたくさんあるしっていう。
ReoNa:ああ、言われてみれば確かに。1stのときにエルザに出会ってくださった方にはずっと新譜お待たせしてしまいましたが、これから知る方であれば、すぐに音楽にも出会うことができますし、『Prologue』の中にある出自もすぐに知られることができる。これから聴かれるという方がいらっしゃったら、ぜひ『ELZA』のお歌も合わせて聴いていただけたら嬉しいです。
──前回のインタビューから想像するに、『ELZA2』に関しても、結構長い間制作に向き合われていたのですか。
ReoNa:結構長く走っていた気がします。今回はミニアルバムということもあって曲数もたっぷりありますし……1年弱くらい、この『ELZA2』と向き合ってたような気がします。
──「GG」も1年向かい合われてたというのに?
ReoNa:そうなんです。同時に動き出したこともあって、ReoNaとして「GG」を紡ぎながら、並行してエルザにも向き合っていました。ちょうど『ReoNa 5th Anniversary Concert Tour “ハロー、アンハッピー”』の準備も行っていたときということもあって、5周年後に届くもの、という意識がありました。
ただ、エルザに関しては自分の5thアニバーサリーとは関係ないといいますか……。というのも、私自身の時間は6年進んでいますが、『ガンゲイル・オンライン』の世界、つまり神崎エルザの“時”は、前回からあまり時間は経っていないんですよね。それは考えていたところでした。
──経験を積んできたからこそ生まれたお歌や新しいアプローチがありましたが、エルザに関しては時を感じさせないようにしなければいけないという。ある意味、うまく歌うことが正解ではない、といいますか。
ReoNa:まさにそうなんです。当時がむしゃらに右も左もわからない中で紡いでいたエルザの歌を、今あらためて何度も聴き返したんです。どのタイミングでも、その時々の瞬間最大風速を目指してお歌を紡いできてはいるのですが……成長してきているところもあるんですけど、当時の拙いがゆえのきらめきみたいなものもあって、それがまさにエルザの中にはあるなと。
なんというか、ギリギリの感情で叫ぶように歌っていたり、声が幼いなと思ったりする部分もあるんですが、あの時だからこそ紡げたものが『ELZA』の中に在って。その当時は、まさかこれだけたくさんの人が受け取ってくれているとは思っていませんでしたが、いろいろな方にお歌を受け取っていただいて……6年経った今もエルザを好きだと思ってくれている人がいると思うんです。
改めてエルザファンに向かって、エルザの歌を届けるために、当時の自分の声や歌を再インストールし直せないかと考えた時間がありました。
──6年の中で成熟してきたご自身を、エルザというキャラクターに合わせて“戻す”作業というのは、やはり大変だったのではないでしょうか。ReoNaとエルザは別人格なわけで。
ReoNa:最初はすごく悩みました。時間は戻すことはできないものですから。ただ、いざ制作が始まってみると、そんなに余裕に歌えるようなものでもなく。1曲、1曲、今の自分で精一杯向き合わないと、なかなか到達できないお歌だったんですよね。まるで神崎エルザが試練を課してきているかのような、そういった制作でした。
だから、良い意味で過ぎていった時間というものに、向き合いすぎずにいられたというか。やはり神崎エルザを歌うときは、余計なことをごちゃごちゃと考えず、その時にできる最大でぶつからなきゃいけないなと思いました。実際いざはじまってみると、エルザに引き戻されたというか……。
──なんだかReoNaさんの立場がレンちゃんのよう(笑)。
ReoNa:確かに、戦わざるを得ない状況にされるというか(笑)。
──前作とは状況的に向き合い方が異なる作品になったと。サウンド的にはどうですか。エルザはときに激しいナンバーもありつつも、基本は“切な明るい”ロックナンバーの印象があります。変わらなさはありつつ、そこに新しいエッセンスが加わっているように感じました。
ReoNa:いろいろなセクションで、みんながエルザのことを振り返りながら制作をしていたんです。でも、あえてあまり踏み出さないというか。ReoNaの制作は「5周年だから新しい挑戦をしてみよう」ってことがあったんですけど、エルザの場合は、エルザらしさに寄り添って作っていました。さきほど話した通り、エルザのファンの方に届けたい、という気持ちも、いろいろなセクションで共通していた想いです。
それでもこの6年間で(ReoNaとして)いろいろな方との出会いがあって。最初のエルザの楽曲を作ったときは、ハヤシケイさん(LIVE LAB.)、⽑蟹さん(LIVE LAB.)、ruiさん(fade)の3人とで作っていたものが、小松一也さんも加わって編曲に入ってくださったり、Panくん(LIVE LAB.)がいてくれたり。そして今回ははじめて宮田 “レフティ” リョウさんともご一緒することができました。まさにさきほどおっしゃっていたエルザらしい“切な明るい”ところに、さまざまな出会いのおかげで、新しい風が吹いた感覚がありましたね。
──7曲とは思えないほどの密度の濃さを感じます。
ReoNa:私自身も「濃ゆいな」と思いながら歌っていました。
──1曲目の「Oh UnHappy Day」には、ReoNaを象徴するような言葉である〈Hello,UnHappyDay〉という言葉が出てきて、それをエルザが歌っているのが印象的だなと。
ReoNa:ReoNaにとって大事な言葉を今回エルザに託しました。ReoNaは“Hello,UnHappy”というのに対して、エルザは〈OhUnHappyDay〉と伝えたあとに〈Hello,UnHappyDay〉と歌っている。そこにも一筋縄ではいかない感が溢れていると思います。この言葉がここに収まったとき、“Hello,UnHappy”という言葉はReoNaのものだからやめておこうよという話にはならなかったんですよね。どう言語化していいか分からないのですが……エルザの曲は、 やはりしっかりエルザなんですよね。
しかも、このお歌は第12話、最終話でアニメと一緒に届く予定です。そういう大切な局面で流れるお歌だからこそ、大切な言葉を託したいなと考えていました。そして〈ついてないぜ〉って。このアルバムでは1曲目。久しぶりのエルザとの邂逅に、すごくぴったりなお歌になったと思います。小松さんが華やかなサウンドにしてくれました。
──クワイアもなんだか今までと違う雰囲気というか……このタイトルからも、聖歌隊という雰囲気があります。
ReoNa:ああ、まさにそうです。ゴスペル感が強いというか。讃美歌感のあるブラス・ロックを聴いているような感覚になりました。
──ReoNaさん自身のコーラスも気になるところ。「GirlsDon'tCry」にも言えることなのですが。
ReoNa:ああ、確かに。今回は歌詞がないところでも、私がクラシックモチーフのメロディーを追いかけているところが全体を通して多いような気がします。
──現時点は最終回放送前(第10話)なので、どのようにこの曲が本作を彩るのか、とても楽しみです。
ReoNa:今(当時のリアルタイムで)アニメ見てる方は「あれ。第三回スクワッド・ジャムが早々に終わって、なんか新しいゲームはじまった」という感じになっているかと思います。私は原作の小説を読んでるのですが、SJ3の「ワン・サマー・デイ」は、特に映像で見たくてたまらなかったお話でした。沈みゆく豪華客船で、裏切り者がいる中で戦う姿は、まるで劇場版で見たいと思うほど壮大で魅力的で。そんなシーンに音楽を添えると聞き、すぐに(モチーフとなった)「水上の音楽」がピッタリでは?というアイデアも出てきたんです。ReoNaチーム一同、『GGO』が大好きなので、どんどんとアイデアが浮かんでくるんです。
──8話の特殊EDとなった「Toxic」についても、同じように制作されていったんでしょうか。
ReoNa:そうですね。どんな場面で使われるかは事前に伺っていたので、スクリューに向かってピトフーイが落ちていくところで〈堕ちた〉という言葉が入るように。ピトフーイと言うべきか、エルザの悔しさがみちみちに詰まったお歌になっています。
──映像と音楽がものすごくピッタリ合っていましたよね。見た瞬間、驚くと同時にニヤニヤしちゃって(笑)。
ReoNa:私もです(笑)。ニクいなと思っていました。フィルムスコアリングのような形で作ってくださったそうなんです。音としてギターが鳴る瞬間に、エルザがギターをかき鳴らしていたり……ああ、すごい、曲にあわせて映像が動いているって。自分が思い描いていたシーンに、自分が届けたかったお歌が一緒に届くって、本当に不思議な気持ちですね。何年経っても慣れないというか、新鮮さを感じます。
エルザの独特のひねくれ感
──改めて、ハヤシさんが作詞・作曲を、そして宮田さんがアレンジを手掛けた「Girls Don't Cry」についてもうかがいたいです。どのように制作されていったんでしょう。
ReoNa:宮田さんはいろいろなアーティストさんの曲やアニソンを手掛けていらっしゃる方で。本当に多くの楽曲を手掛けていらっしゃいますよね。宮田さんも含めてみんなで一緒に、「エルザってどんなキャラクターだったっけ?」「エルザらしさってこうだよね」って振り返りながら、手探りで、全力で作っていく中で、自然と生まれた新しい風が、レフティーさん×ケイさんというおふたりのコンビでした。
なにかのタイミングで「いつかご一緒できたらいいよね」と、レフティさんのお名前が挙がっていて。改めて今回、お声がけさせてもらったんです。ケイさん自身も、レフティさんも同じくボカロPで、もともとご親交の深いおふたりなので、今回のプロジェクトで邂逅できたらなと。そういうエモーショナルもあり、快く引き受けてくださって。だから作詞・作曲ケイさんだからこそ、エルザの根っこは色濃く残りつつ、レフティさんの作ってくれたアレンジが……不思議と“歌わせてくれる”お歌になったなぁと思っています。
音に乗って自然と歌うことで、聴き返したときにすごくナチュラルに良い歌が録れたと感じました。音の素晴らしさもさることながら、心地よい余白があって。すでにライブでもお届けしたお歌ですが、なにか新しい一歩を踏み出そうと意図したわけではなく、自然に生まれたその一歩が尊いと思っています。私自身も、曲の通り、心に風の吹くまま歌わせていただきました。
──ハヤシさんらしいし、エルザらしいなと特に感じたのは、〈ショーケースの宝石じゃなくて傷だらけの石ころでいようぜどこへでもどこまでも転がっていけ〉というか。
ReoNa:「ピルグリム」からずっとある、エルザの独特のひねくれ感というか。でも背伸びしない、ありのままの自分を肯定してあげたいエルザらしさがありますよね。「Girls Don't Cry」というタイトルも、女の子が大好きなエルザらしいなと。この曲に限らずですが、ケイさんならではの文学的なセンスが今回のエルザにもふんだんに反映されていると思います。
──神崎エルザと言えばハヤシケイさん、というイメージを持っていらっしゃる方も多いかと思います。
ReoNa:最初の『ELZA』は全曲ケイさんでしたし、神崎エルザと言えば、ケイさんの文学的で、少しひねくれた歌詞が象徴的だなと思っています。私の勝手な印象ですが、エルザの楽曲に関しては、ケイさんが自分の思いをぶつけてきてくださっている印象があります。まさにケイさんが描いたこと、ケイさんが思ったことがそのままエルザにイコールでつながっている感じです。
── 一方、さきほど話題に上がった「Toxic」は毛蟹(LIVE LAB.)さんが作詞から編曲までを手掛けられています。「Toxic」はゲームの専門用語でもあるんですよね?
ReoNa:そうです。ゲームスラングで、毒を吐く、いわゆる暴言厨みたいな意味があります。「あーくそ、負けたー!」っていうエルザの状況も相まって、まさに「Toxic」という言葉がぴったりだなと思っています。「負けた!」という悔しさを胸にゲームからログアウトしたエルザが、衝動のままにギターをひっつかんで、おもむろに「ボレロ」から歌い始め、怒りがヒートアップしていく……といったイメージが湧きました。
──毛蟹さんとはどのようなお話をされたんでしょう。
ReoNa:実は最初の『ELZA』のときに、7曲という制約の中にに収まりきらなかった曲がありました。そのうちの1つが今回の曲の元になっているんです。当時、毛蟹さんが『GGO』を読んで、銃撃戦をイメージしながら作られた楽曲だったんですけど、今回「ボレロ」と出会ったことで、6年越しに改めて形を変え完成しました。
──当時は「ボレロ」の要素は入っていなかったんですね。
ReoNa:はい。でも、今回作品側から「このシーンでこの曲を使わせてほしい」とご依頼をいただいたとき、最後のパーツとして「ボレロ」がハマり、新たに生まれ直したような感覚がありました。8話が放送になったときに「あ、ボレロだ!」と気づいてくださっている方が多くて嬉しかったですね。
──4曲目の「革命」も作詞から編曲まで毛蟹さんが手掛けられています。これは新たに作った曲ですか?
ReoNa:「革命」は完全に新しく作った曲です。神崎エルザの激しめの楽曲……例えば、「Disorder」「Independence」のようなデジタリーな側面を「革命」という形でアプローチしました。
──「革命」はデジタリーな曲ではあるんですが、ちょっとゴシックな要素もあって、ボーカリストとしての表現がとても多彩だなという印象がありました。まるでボーカリストが3人くらいいるんじゃないかって思うほど。
ReoNa:「新しいことはしない」と決めていたとはいえ、この6年間の歩みの中で、ReoNaの中で培ってきた手法がふんだんに盛り込まれていると思います。例えば「ないない」の歌唱法だったりだとか。それに加えて、毛蟹さんも「ReoNaならこうするだろう」というイメージを持って楽曲を作ってくださったのではないかなと感じています。
──レコーディングはいかがでしたか。
ReoNa:方向性やイメージが固まってからは、それに向かうのがすごく楽しかったです。普段、レコーディング自体を楽しめること自体は意外と少ないんですが、この曲は特に「ちょっと様子がおかしい」ところを意識して表現する場面があって、そこは歌っていて楽しかったですね。
──アニメには描かれない部分だからこそ、行間を楽しむような感覚もありますよね。普段のエルザがこういうことを考えているのかな、と想像しながら聴ける曲だなと思いました。
ReoNa:そういう余白はすごくあると思います。「誰に向けて書いているんだろうな」とか。「私の革命、私の宿命ってこういうことだよね」といった解釈が自然に湧いてくる、まさに行間を読む楽しさが詰まった曲だと思います。
──「ハレルヤ」という言葉がここで登場するとは!というのが、次の曲。作詞はハヤシさん、作曲はruiさん、そして編曲に荒幡亮平さんのお名前が。純粋に、すごくいい曲ですよね。
ReoNa:エルザのお歌の中には、いろいろなバリエーションがある中で、最初、軸足となったのが「ピルグリム」だったんですね。そして、そこから連なってきたあ足跡のその先という感覚がありますね。
──〈最終回〉という言葉が登場するのもいいですね。ReoNaさんならではの言葉なんだけども、考え方はエルザならでは。
ReoNa:そうなんです。最終回が得意ではない私ですけども、エルザはひねくれているから〈誰かの描いた最終回の向こうまで. Go away from everything〉と歌っている。このサビの後半は、ケイさんが言いたいこと、描きたいことを詰め込んでいるんだろうなって、歌いながら感じていました。
具体的にどこの場所かはわからないけれど、情景が自然と浮かんでくるというのが、ケイさん×神崎エルザの楽曲の魅力のひとつにあると思っているんです。たとえば「ピルグリム」の中でも〈世界の果ての滝〉〈砂嵐の彼方へ〉といった広大な景色が描かれていて、頭の中になぜか思い浮かぶんですよね。それが実に神崎エルザらしいなと。
──〈不協和音〉という言葉もあれば、〈Say goodbye for today.〉〈Tomorrow will be yesterday〉もあるしで、これまでのエルザを散りばめたような曲でもありますよね。
ReoNa:そうなんです。これまでのエルザがギュッと詰まっていて、宝探しのように、その足跡を探してもらえるんじゃないかなと思っています。
──6曲目の「Game of Love」はこのミニアルバムの中で最初に発表された曲です。〈また逢おうぜ Good Game〉とReoNaの「GG」を感じさせる言葉もあって、さらに「私たちの讃歌」につながる歌でもあって。でもそれこそ、しっかりエルザですよね。
ReoNa:「私たちの讃歌」の中にハマっていたとき……どう感じていただけていたかはわからないのですが、私の中では、明確にReoNaとエルザは「なにか違う」「別物にできてる」と思っていました。早めに制作していたこともあって、この曲は神崎エルザとの再会というイメージが残っています。「GG」というお歌と共に、このお歌が走っていたからこそ……ちょっとひねくれているというか。ゲームのことを歌っているんだか、音楽のことを歌っているんだか、っていうような、ひねくれ具合が詰まっているように思っています。
「YOU」あなたへ
──ラストの「YOU」は新しい風を感じさせるような曲。昨今おなじみとなってきたPan(LIVELAB.)さん、さらにストリングスで宮野幸子(SHANGRI-LAINC.)さんが参加されています。おふたりとも欠かせないメンバーですね。
ReoNa:Panさんは「Simoom」以来、ReoNaの制作に欠かせないメンバーとなって。また、宮野さんが書いてくださるストリングスのメロディーはもともとそこにあったストーリーや切なさを広げてくれる印象があります。想像力の掛け算をしてくださるものを載せてくださるんですよね。ストリングスのレコーディングを見に行ったあとに、そのメロディーを覚えて、鼻歌をすることがあって。それほど、耳に残る音楽を作ってくださる方々が「YOU」に携わってくれました。
──すごく余韻の残る曲ですよね。明確に誰かに届ける曲。
ReoNa:『ELZA』の時は「Rea(s)oN」で〈ここに生きるReason それはあなたでした〉という言葉で締めくくられて、それに対して〈I've been waiting for YOU〉……あなたを待っていたんだよという曲で終わるという。
──歌詞の中には「キミ」「あなた」「YOU」と、いろいろな言い方が登場しますよね。
ReoNa:そうなんです。少し細かい話にはなるんですが、10月19日のライブ(『神崎エルザ starring ReoNa ✕ ReoNa Special Live “AVATAR 2024″』)のときに「Rea(s)oN」を歌う前に、日笠陽子さんが「キミだよ」というMCをしていて。その日笠さんが発音したエルザの「キミ」がすごく心に残っていました。この歌詞ができたとき、自然とこの言葉たちを日笠さんが喋っているようなイメージが浮かんでいました。で、後半に〈あなたとなら〉という言葉が登場して。
──最後は〈YOU〉になって。
ReoNa:実は〈YOU〉で終わるところから始まったお歌でもあるんです。〈I've been waiting for YOU〉という言葉を最後に置きたい、という思いがありました。
──ReoNaさんから出てきた言葉だったんですか?
ReoNa:実はruiさんがもともと英語で入れてくださったんです。それがたまたま、この曲で伝えたい想いや「ここにいてほしい」と感じる場所にぴったりハマって。こんなことってあるんだなと思いました。それだけ強く、ruiさんが曲の中に込めていた思いだったんだと思います。
──〈YOU〉が大文字になっていることで、より言葉の存在感が際立ちますよね。
ReoNa:そうですね。この「キミ」や「あなた」という言葉は……メタ的な話にはなってしまいますが、『GGO』の世界でいう「神崎エルザの楽曲を受け取ってくれる人」かもしれないし「ゲームの中で出会ったレンちゃん」かもしれない。でも同時に、この歌をReoNaとして歌うときには、これまで私の歌を受け取ってくれたあなた、自分の中で重ねてきた特別な存在……例えば、「SWEET HURT」は「あなた」をお歌に変換しています。この言葉を誰に向かって届けるかを大切にしながら歩んできたんですけども……最初はなかなか言えなかったんですよね。お歌を受け取ってくれる「あなた」に「キミ(に送ってるん)だよ」ってなかなか言えなくて。
神崎エルザとしても、当時のタイミングではきっと描かなかった歌詞だと思います。今だからこそ、私自身がこの歌詞に思いを込められるようになったんです。
──最初に言えなかったのはなぜですか?
ReoNa:いくつか理由があるんですが、受け取ってくれる人がそう思っていなかったら、私が一方的に「君だよ」と押し付けても意味がないと思っていたんです。一方通行になってしまうのが怖かったんですね。それでは一対一ではない。それに、自分が「君だよ」と決めてしまうことにも納得できず、照れくささもあって(苦笑)、なかなかまっすぐ言えませんでした。でもそこで虚勢を張らなかったからこそ、まっすぐに「YOU」という言葉に向き合えたように思います。
──そういう意味で言うと、〈心 二つ 重なった〉にはいろいろな意味があるのかもしれないですね。キミとあなたかもしれないし、エルザと誰かかもしれないし、エルザとReoNaかもしれない。
ReoNa:いろいろな想像をしてくださったらうれしいです。
──ところで、お話をうかがっていると、『神崎エルザ starring ReoNa ✕ ReoNa Special Live “AVATAR 2024″』のあとに「YOU」はつくられているのでしょうか。
ReoNa:実は「革命」と「YOU」はギリギリまで制作していました。ライブの制作時期、音の制作時期が重なっていたこともあって、ライブの直前に一度制作を空けたんです。それで「YOU」はライブのあとに録音していました。それもあって、少し落ち着いた状態でレコーディングには臨めましたね。だからこそ、Aメロの様子のおかしさも振り切れたのかなって。
──エルザはエルザで変わらないのですが、やはり2作目だからこその進化はあるように思います。すごく豊かですし。
ReoNa:「Rea(s)oN」という曲が生まれて、1期の最後のシーンで、はじめてレンとフカが見に来たライブで披露して。そこから数ヶ月とは言え、いろいろな時間をエルザは経て、改めて言葉にしたくなったのは「あなたを待ってたんだよ」だろうなって。今まで欠けていた部分も、埋まらなかった部分も、足りないと思っていた部分も、あなたが座るために、あなたがここに収まるために、ずっと空けてたんだよって。
──久しぶりに、楽曲制作でエルザと向き合ってみた感想としてはいかがですか。
ReoNa:やっぱりエルザはいじわるだなって(笑)。1曲、1曲に向き合って作っているので、もちろん難局もあって。1曲1曲に真剣に向き合って作っていると、必ず難しい局面があって、そんなときにエルザから「そう簡単に作れると思わないでよ」と言われているような気がするんです。
実際アニメが始まると決まってからは「エルザ新作はまだ?」という声を少なからずいただいていて。それが嬉しい反面、当時の右も左も分からなかった私と、今の私では向き合い方が全く違うなと感じました。当時は感じられなかった部分、思えなかったことが、改めて浮き彫りになった気がします。
──当時は誰が歌うかも発表されていませんでしたし、かつReoNaさんはデビュー前。前段階の期待といったものがなかったわけで。
ReoNa:何者でもないがゆえに、そこは気楽だったのかなと気づきました。今回は逆に「待っている方がいる」という期待感がすごく伝わってきて、それが原動力にもなりました。今回は、期待に応えたい気持ちが強い分、より深くエルザの世界と向き合えたと思いますし、自信を持って「1枚、できましたよ」とお渡しできるものができました。
──ジャケットのエルザがまたかわいいですよね。
ReoNa:ずっと見てしまいます。黒星紅白先生が描いてくださったエルザ。まるで深海の中にいるようで……水底って暗くて静かで。しかもこんなにもダークなエルザは、初めてなんじゃないでしょうか。そして私がエルザから譲り受けたピトフーイカラーのエレキギターも描いてくださっています。
──ところで、2があるということは3もあると思って良いんでしょうか?
ReoNa:あってほしいなあと個人的には思っています。小説には、まだまだエルザは登場していますから。何度だって、何年越しだって、また会いたいです。これからも、共に歩んでいきます。個人的には今回、『ELZA2』 というタイトルで2作目を出せて良かったなぁってすごく思っていて。前回『ELZA』がすごくはじまりの瞬間だったし、あの『ELZA』で出会った人、あの『ELZA』を好きな方がたくさんいてくれているので、「やっと2枚目が出たよ!」って言えることを嬉しく思っています。
──ReoNaさんが音楽活動をしていくなかでエルザに出会えたことは本当に運命的というか……。
ReoNa:人生を振り返ったときに……本当に欠かせない出会いというか。いくつかある、最大の出会いのうちのひとつです。ずっとひとりぼっちで、「音楽をやりたい」って言えなかったような時期を経て、アニソンシンガーになりたくていろいろなライブハウスに出てみたり、SNSをはじめてみたりとか。ひとりぼっちだったReoNaのそばに、最初から神崎エルザという存在が横にいてくれたんだなぁってしみじみと思います。
改めて、久しぶりに『GGO』が見られて、みんなの声が聞けて、改めて嬉しかったです。私は結構ボスが好きで。SHINC (シンク)の皆さん、現実の姿とゲームの姿の声の野太さが全然違うじゃないですか(笑)。こんなに貫禄のある佇まいだけど、蓋を開けたら中学生の可憐な女の子たち。もうキュンキュンきますね。
──それにしても、あっという間に、もう2025年になるわけですがその心境はどうですか。
ReoNa:ありがたいことに、『GGO』と共に駆け抜けた2024年でした。来年は……どうなるんでしょうか。まだ言えないことがたくさんあるので……楽しみにしていてもらいたいです。
インタビュー・逆井マリ