「1億ドルよりも、1億人の友達が欲しい」巨匠コッポラ ─ 苦学生時代「1日1ドル生活だった」
巨匠フランシス・フォード・コッポラは米アメリカン・シネマテーク主催による新年の『メガロポリス(原題)』上映イベントに登場し、自身の半生を振り返りながら映画作りへの思いを語った。米が、彼の興味深いトークの一部をレポートしている。
85歳となる巨匠は、言わずと知れた『ゴッドファーザー』シリーズや『地獄の黙示録』(1979)などで、長年映画業界に重要なインパクトをもたらしてきた。最新作『メガロポリス』では、コッポラが自身のワイナリーの大部分を売却して製作費を調達するなど、経済リスクよりも作品への情熱を大切にしている。
長いキャリアの中でコッポラは波瀾万丈を繰り返しており、映画の興行的な失敗によって何度も破産を経験している。「私の人生は面白いものです。完全に無一文で破産していたか、金持ちになっていたか、どちらもありえた。すごく奇妙な人生だ」と、コッポラは自身の人生を言い表している。
「私が会社(※おそらくはアメリカン・ゾエトロープ社)を引き継いだのは、私が会社に対して異なるビジョンを持っていたからです。他の人たちは、クビになりたくないというビジョンだった。彼らは、私に倒産させたくなかった。彼らは保身していた。そして私は、保身などしないと言っていた。私は保身をしたことがない」。コッポラはそう語り、自身の映画製作はお金儲けとは異なる哲学を持っていることや、苦学生時代の思い出について、次のように続ける。
「『地獄の黙示録』(1979 )の時だって、私は21%の利息、3,000万ドルの借金を負担していました。私はお金持ちの出身ではないのです。UCLA(カリフォルニア州ロサンゼルス大学)に在学していた時も、1日1ドルで生活していた。そんなんだから、すごく太った。食べていたのは、19セントのクラフトのマカロニ&チーズ・ディナー。毎晩、それだけを食べていました。」
Kraft Macaroni & Cheese Dinner, 1960's
『メガロポリス』は賛否両論に荒れ、私財を投げ打って1.2億ドルを費やして進めたコッポラの思いとは裏腹に、累計興収は1,400万ドルにも満たない。
それでもコッポラは、『メガロポリス』の成績に絶望していない。「『地獄の黙示録』でも、当時の反応は“史上最悪の映画”というものでした。誰かがそう言ったんです。でも、それだけ賛否が分かれても、そのことが、逆にさらなる議論の材料になる。後になって語ることができる、ということです。『地獄の黙示録』はいまだに収益をあげている。つまり、どうかな、50年後かな?」
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つまりコッポラにとって、映画の成績、究極的に言えば映画の価値とは、公開後数週間程度の短期的な興行収入で指し測るものではないのだ。時代に耐えうる映画作りは、時に経済性と相対するものなのかもしれない。
そんなコッポラの価値観は、次の言葉によく現れているだろう。「もしも今、“1億ドルの小切手を書きます”と言われたら、私はそれよりも、1億人の友達の方が欲しい」。
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