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【子どものために言っている】違う! 言葉の暴力は許されない

こそだてまっぷ

ひどい言葉が、あちらこちらの家庭で子どもたちに浴びせられています。

ハラスメントとは、権力的な立場を利用したいじめです。
しつけが度を越えハラスメントとなっていないか、親は少し冷静になって子どもへの発言に気を配る必要がありそうです。
教育評論家の親野智可等先生にお話を伺いました。

パワハラ、ドクハラ

世の中にはいろいろな形のハラスメントがあります。
ハラスメントとは、つまりいじめです。
嫌がらせとも言います。

パワハラ(パワーハラスメント)とは、職場におけるパワー、つまり権力的な立場を利用したいじめです。

例えば、上司が部下に対して「なんだ、お前、こんな仕事もできないのか? 何度教えたらできるんだ?他の人はちゃんとできてるぞ。こんなこともできないようじゃ、一人前の大人って言えないんじゃないの?」などと言うことです。

ドクハラ(ドクターハラスメント)とは、医者が患者をいじめることです。

例えば、医者が患者に対して、病状などについて配慮に欠けた言動をしたり、患者の意見を無視したり、軽視したりすることです。

アカハラ、マタハラ

アカハラ(アカデミックハラスメント)とは、大学などの教員が学生をいじめることです。

例えば、教授が学生に対して「こんな実験も満足にできないの? 今まで何を学んできたんだ。せめて実験器具を全部きれいに洗っておくこと。何、用事がある? 単位は要らないの?」などと言うことです。

マタハラ(マタニティハラスメント)は、職場などにおいて、妊婦に対して嫌がらせをすることです。

例えば、妊娠の報告に対してネガティブな反応をしたり、職場において、一方的に業務時間や仕事内容の変更を行う、などです。

モラハラ、子ども同士のいじめ

モラハラ(モラルハラスメント)とは、相手の意思に反して自分の価値観やモラルを押しつけ、できないからといってとがめることです。

例えば、「挨拶をしても返事をしない」「話しかけても返事をしない」などの無視や、暴言を吐く、嫌味を言うなどの行為を指します。

ここまで、ハラスメントを5つ挙げましたが、子どもの間にあるいじめもハラスメントです。

子ども同士の場合、ハラスメントとは呼ばれていませんが、中身はハラスメントです。

これらはすべて、いじめであり、嫌がらせであり、ハラスメントなのです。

「あっても仕方のないことだ」から「許されないことだ」に変わった

昔はこういうことがおこなわれてもあまり問題になりませんでした。

部下が上司に言われるのは仕方がない、患者が医者に言われるのは仕方がない、学生が教授に言われるのは仕方がない、子ども同士の間にいじめがあるのも仕方がない。

でも、今は人々の人権意識が高まり、こういうことはすべて許されないことだという認識が広がってきました。

立場の違いや権力の有る無しにかかわらず、お互い一人の人間同士として、ハラスメントは許されないという認識が広がってきたのです。

これはとても良いことだと思います。

「あっても仕方のないことだ」から「許されないことだ」に変わったのは大きな進歩です。

親による子どもへのハラスメント

しかしながら、私が不思議に思うのは、これらのハラスメント以上に日々あちらこちらでたくさんおこなわれているハラスメントがあるのに、それは未だに「あっても仕方のないことだ」という認識にとどまっていることです。

それは、親による子どもへのハラスメントです。

「また○○してない。ちゃんとやらなきゃダメでしょ。何度言ったらできるの?もっとしっかりしなさいよ」

「そういうだらしがないとこ、誰に似たの?妹はちゃんとできてるよ。あんた、それでもお兄ちゃんなの?」

「なんでこんなこともできないの?何度教えたらできるの?まったくなさけない。こんなこともできないようじゃ、ろくな大人にならないよ」

「宿題やらないまま遊んじゃダメでしょ。遊びは勉強やってからでしょ。何度言ったらわかるの?そういうずるい性格を直しなさい」

「いつまで食べてるの? もう時間がないでしょ! そんなこともわからないの? ほらほら、はやくしなさい、はやく! もう、連れて行かないよ」

親によるハラスメントが子どもの健全な成長を阻害する

こういうひどい言葉が、あちらこちらの家庭で子どもたちに浴びせられています。

こういう親によるハラスメントは未だに「あっても仕方のないことだ」「子どものためを思って言っているのだから多少は仕方がない」などと思われています。

とんでもない間違いです。
こんな言い方は一切子どものためになりません。

それどころか、子どもの心は傷つき、自己肯定感が持てなくなり、親に対する愛情不足感も出てきます。

子どものためになるどころか、健全な成長を阻害するだけの罵詈雑言、言葉の暴力、親によるいじめ、嫌がらせ、ハラスメントでしかありません。

子どもを一人の人間としてリスペクトしていれば、こういうひどい言葉など出るはずがありません。

「親ハラ」「パパハラ」「ママハラ」

でも、こういう親によるハラスメントは許されないことなのだという認識が広がっていません。

なぜなら、子どもたちはそういう声を世間に向かって上げる方法を知らないからです。

他のハラスメントはすべて、被害者が声を上げたことから認識されるようになったのです。

認識が広がっていない証拠として、この種のハラスメントに対する名前もありません。

敢えて名前をつけるとしたら、「親ハラ」「パパハラ」「ママハラ」などになるのでしょうか?

これをお読みのみなさんには、ぜひ、こういう言葉がハラスメントであることを認識して欲しいと思います。

世の中の認識も、「あっても仕方のないことだ」「子どものためを思って言っているのだから多少は仕方がない」から「許されないことだ」に変わって欲しいと思います。

親も先生も、そして全ての大人たちがみんな、子どもを一人の人間としてリスペクトする、そういう世の中になって欲しいものです。

いずれはそうなると思いますが、一日でも早くなって欲しいです。

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