二人三脚でエンタメ支え ショーのイルカ、健康に
これまで「新江ノ島水族館」での学術研究や一風変わった展示の軌跡について紹介した。来場客を楽しませるエンターテインメントを陰で支える人もいる。華やかなショーを担当するトリーターの浦崎晴楓さんと獣医師の白形知佳さんに焦点を当てた。
「痛いけれど検査だから我慢してね、と言いたい。でも…」と語るのは、イルカの世話をする浦崎さん。同館では生き物の飼育や展示を担当する職員のことを「トリーター」と呼んでいる。イルカショースタジアムで大きなジャンプやかわいらしい仕草を披露するイルカたちと共に来場客に笑顔と感動を届けているが、浦崎さんの役割はそれだけではない。
海の動物たちは日々の健康維持のため、獣医師の白形さんによる血液検査や超音波検査を定期的に受けている。白形さんと協力し、適切な処置が行えるよう動物をトレーニングするのも浦崎さんの仕事の一つだ。
もちろん動物には、自身に向けられる採血用の針や超音波測定の装置が健康管理に必要な物だと言葉で伝えることができない。怖がらせずに診療を行うために大切なことは「スタッフと動物の信頼関係を築くこと」と浦崎さん。検査日から逆算し、普段の遊びの中に少しずつ検査のための姿勢や装置に慣れるトレーニングを取り入れている。
例えば採血が予定されていれば、まず針に見立てた指を対象箇所に当てることから始める。徐々に慣れてくれば爪楊枝に変えるなど、実際の検査の状況に近づけていく。「この人は怖いことをしない、これは楽しい遊び」と感じてもらえるよう動物とのコミュニケーションを欠かさない。
また個体差に合わせた最善の健康管理法も常に模索し続けている。「病気がちだったカマイルカが、トレーニングによって対応できる検査が増えたことで、以前より体調が安定するようになったこともある」と浦崎さんはうれしそうに語った。
水族館の獣医師は、全国に約60人しかいない。昨年まで1人で館内の全動物を診ていた白形さんだったが、新米獣医2人が今年入社。フレッシュなメンバーを迎え、トリーターと獣医の二人三脚による健康管理は、今後さらに充実しそうだ。