【沼津・川正商店】特別な製法で作る「砂干しのサバ」火山灰の砂が生む匠の味は“魚嫌いも納得”
静岡・沼津市は干物の町として知られています。下河原町にある「川正商店」では、ちょっと変わった製法の干物を作っています。「砂干しのサバ」という聞き慣れない名前の干物を調査しました。
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへ創業約50年の老舗が作る砂干しのサバ
にむらあつとリポーターが向かったのは、JR沼津駅から南へ車で約5分、沼津市下河原町の干物店「川正(かわしょう)商店」です。
工場の入り口には「砂干しのサバ」と書かれたのぼり旗がありました。
にむらあつとリポーター:
実はこの「砂干しのサバ」という名に聞き覚えがあって、初めてじゃないんですよ
にむらリポーター、なんと聞き覚えがある名前ということで、さっそく工場へ入ってみました。
中に入ってお店の方の顔が見えると、にむらリポーターは確信しました。
にむらあつとリポーター:
やっぱりそうだ、「(ラジオネーム)砂干しのサバさん」ですよね? 実は、僕が担当しているラジオ番組のリスナーさんで、イベントにもよく来てくれるんです
川正商店・川島雅子さんは、にむらリポーターが担当するラジオ番組のリスナーだったのです。イベントにもよく来てくれるということで、顔を見てすぐに気付いたようです。
家族経営で創業から約50年という川正商店では、雅子さんと夫の正さんが毎日手作業で砂干しのサバを作っています。
値段は1枚390円から、大きさにより異なります。
「沼津ブランド認定品」のシールも貼られ、一般的な天日干しとは全く異なる製法とのことですが、何が違うのでしょうか。
にむらあつとリポーター:
パッと見た感じ、一般的な干物とさほど違いはないかなと思います
川正商店・川島雅子さん:
見た目は特に変わらないかもしれないです
見た目は、一般的な干物と大きな違いは見当たりませんが、この干物の秘密は、その名の通り“砂”にありました。
この「砂干しのサバ」は、砂を使った特別な製法で作られていたのです。
鹿児島の火山灰が生む独特の食感
作業場に案内されると、そこには白い砂が用意されていました。
川正商店・川島雅子さん:
火山灰の白砂(しらす)という砂です。鹿児島の火山灰で、水分などを吸収する成分がある特別な砂です
手に取ってみると、サラサラしています。
この砂が、魚の水分と生臭みを抜く役割を果たします。企業秘密ではありますが、火山灰の他にも特別な配合をしている砂なのだそうです。
実際に作る過程を見せてもらいました。
まず、砂を敷き詰めたトレイの上に特殊な布を敷きます。
その上に水を通すという特殊なフィルムを敷いて、開いたサバを並べていきます。
川正商店・川島正さん:
またこの上にフィルムを敷いて、布をかぶせて砂をかぶせます
こうして、サバの上下を砂で挟み込みます。上と下からサバの水分が抜けていく仕組みです。
保管場所は雅子さんいわく「ほったらかし」です。
特別な保管場所があるのかとおもいきや、このまま置いておくだけなのだそうです。
この状態でどれくらい置くのかと尋ねると、それは企業秘密でした。
気温や湿度、使う魚の状態などを見極め、職人の感覚で仕上げる技が、この砂干しの要となっているようです。
試食 外はパリパリ中はジューシー
完成した砂干しのサバは冷凍され、静岡県内のみならず全国に発送されます。
気になるのは、その味です。特別に焼いてもらい、味わってみました。
川正商店・川島雅子さん:
脂がすごく乗ってるのと、余計な水分が抜けてるので、焼くのは意外に早いかもしれません。外側の皮がパリパリしてるので、そこを楽しんでください
一口食べると、身がホクホクで、脂がたっぷりと詰まっています。そして何より印象的なのが、皮のパリパリとした食感です。
にむらあつとリポーター:
ん~、おいしい! 本当に身がホクホクで脂が詰まっていますね。皮がパリパリなのは砂干しだからですか?
川正商店・川島雅子さん:
砂干しすると外側の砂に一番近い部分はしっかり乾くので、焼くと外はパリッとします。長時間干すと中も固くなってしまいますが、そこは調整してなるべく水分を残すようにして、脂がジュワッと出るように仕上げています
臭みが一切ないのも、砂干しのサバの特徴です。
砂干しは、サバ以外の海の幸でも行われています。
川正商店では、ウナギやホタテなど、素材の味を生かしたさまざまな砂干し製品を販売しています。
東京から沼津へ 受け継がれた伝統
砂干しのサバをはじめたきっかけを聞いてみました。
川正商店・川島雅子さん:
東京・勝どきで砂干しをやっていた方が、お年だったので廃業することになったんです。誰か継ぐ人を探してる時に、築地の競り人さんから夫が呼ばれて、「お前のとこだったら丁寧に仕事もするし、やってみないか」と言われたのが最初です
声がかかったのは、川正商店の仕事への姿勢が評価されたからですが、正さんが技術を継承することにした決め手は、その味でした。
川正商店・川島正さん:
魚が嫌いなんですけど、砂干しで作った干物を食べたらうまいなと思って。じゃあやろうかなと思って始めました。今まで魚を食べられなかったお子さんが、うちの砂干しで食べられるようになったと聞いて、手間はかかるけど頑張ろうかなと思っています
実際に食べておいしかったからこそ、この伝統を引き継ぐ決意をした川正商店。
こうして沼津で守り継がれることになった砂干しの技は、職人の感覚と丁寧な仕事が生み出す、唯一無二の干物でした。
■店名 川正商店
■住所 静岡県沼津市下河原町1丁目3-15
■営業時間 詳細はインスタグラム
■定休 詳細はインスタグラム
■問合せ 055-962-2841