DJの本質はD4DJが教えてくれる――『D4DJ D4 FES. XROSS∞BEAT』DAY1レポート
■2024.05.25『D4DJ D4 FES. XROSS∞BEAT』@パシフィコ横浜 国立大ホールDAY1
5月25日(土)・26(日)の2日間に渡り、パシフィコ横浜 国立大ホールにて『D4DJ D4 FES. XROSS∞BEAT』が開催された。『D4DJ』全体の大型フェスとしては2年ぶりの開催となり、この間に登場した新たなキャストやユニットも含めた、全8ユニット、32名の豪華キャストが勢揃いする初の機会となった。ここでは初日のDAY1の様子をレポートする。プロジェクト始動から足掛け5年、2度のTVアニメ化などで盛り上がりを見せた『D4DJ』が、築き上げてきた全てが収束したライブだったと、そう感じた。
初日の出演者は、Photon Maiden(紡木吏佐、七木奏音、岩田陽葵、佐藤日向)、燐舞曲(加藤里保菜、大塚紗英、もものはるな、つんこ)、Lyrical Lily(反田葉月、進藤あまね、深川瑠華、渡瀬結月)、Abyssmare(May’n、相坂優歌、鷲見友美ジェナ、山田美鈴)の4ユニットに、ゲスト出演という形でPeaky P-key(愛美、高木美佑、小泉萌香、倉知玲鳳)とUniChØrd(小岩井ことり、高橋花林、由良朱合、天麻ゆうき)らが加わり、3時間弱のステージを展開していった。
また、『D4 FES.』ではお馴染みとなりつつある“牛タン串”など、フェスらしくキッチンカーの出店や、全キャラのパネル展示などもあり、開演前からすでに場内はお祭りモードで盛り上がっていた。
まずはPeaky P-keyとPhoton Maidenがコラボ曲「Eight Tones」で口火を切ると、改めてユニットの呼び込みVTRが流れ、Photon Maidenによるステージが始まる。挨拶代わりの「Photon Tale」からスタートすると「光」、「Collector」とfuture bass調のサウンドでジワジワと客席を温めてく。
続く「24」は英詞の割合が多い曲だが、洋画風の日本語字幕で歌詞の和訳が出ていたのが印象的だった。6曲目に披露した「Into the storm」はブレイクビーツでラップしてくとこがカッコいいし、彼女らの特徴でもある英詞パートもより映える音だと思っている。
そして間髪入れずに「4Challenges」を披露。Photon Maidenの曲は本当にリアルなクラブサウンドだからこそ、いわゆる普通の“アニソン”のようなコール&レスポンスが入れにくかったりもするのだが(入れにくい、というよりもその必要性があまりないが正しい)それでも隙を見て、声出して盛り上げてくれるディグラーの逞しさ、頼もしさを感じた。そのくらいに「Bang! Bang! Bang!」の声が出ていたし、合いの手などを入れずとも彼女らのダンスパフォーマンスなど、観客側もPhoton Maidenをどう楽しむべきかを理解している人が、以前よりも増えた印象である。
「この曲で最後になりますが、最後はみんなで一緒に踊りましょうね~!」と、咲姫が語りかけ「FriendShip」を披露。新生PhotonMaidenとして加入したばかりの七木の当時のライブ映像がカットインしてきて、また別の角度から泣ける演出でもあったし、個人的に最も硬派だと感じているPhoton Maidenが、トップバッターでありながらもしっかりと彼女らのサウンドと持ち味を全面に出したセットリストを披露してくれたのが嬉しかった。
続いてはLyrical Lilyが「Maihime」で登場。もちろんTVアニメのOP映像付きで現れると、一気に自分たちの空気に塗り替えていく。ある意味ズルいが、それは強みでもある。
「IFの踊子」「吾輩よ猫であれ」「わんわんとチョコレイト工場」と4曲続けて披露した所で「皆さん、ごきげんよう!」と、いつものご挨拶。
「この景色、久しぶりだよね!」
「2年ぶりです!皆さん覚えてますか!」
と春奈、美夢の掛け合いがあり、「みんなは牛タン食べた?マジ美味いよ!」と美味すぎて中の人の素がちょっと出ちゃっているみいこにも笑ってしまった。そして何より、5月25日は春日春奈のお誕生日当日ということで、胡桃のフリでお祝いのバースデーソングを歌うと「みんな、ありがとう!それではここからは、まずはカバー曲メドレー、みなさんよろしくて?」と、再びライブパートへ。
「創傷イノセンス」、「撲殺天使ドクロちゃん」、「Shiny Smily Story」、「adrenaline!!!」、「私、アイドル宣言」と5曲続けてのメドレーの中にも、スクラッチ入れたり、DJミキサーのエフェクターを組み合わせたり、サンプラーを叩いたり、巧みに繋ぎつつ「みんなタオル持って!一緒に振り回そう!」とマイクを挟み、盛り上げるのも忘れない。
最後にはステージを降りて客席へ飛び出し、アリーナをぐるりと1周歩き回るサプライズまで用意されていたのには驚いた。ここまで、散々盛り上げた上で「人間合格!!!!」ではお馴染みの”331137拍子”でギアがもう一段階上がると、最後にダメ押しの「冒険王!」だ。小さくて可愛い見た目に油断してると、気付いたら全ユニットの中でも1番汗だくになるくらいライブが楽しいのがリリリリなんだと痛感した。
そんな清楚で可愛いLyrical Lilyの直後だと、物騒すぎる曲名にも思える「KiLLiNGME」を容赦なくブチ込んでくるのがなんとも燐舞曲らしい(笑)。しかし、彼女らの本領発揮はここから。フロアの熱を一気に落とすことはせずに、「KiLLiNGME」でワンクッション挟んでから、「ラストソング」でほとぼりを冷ます。
気付けばいつもの燐舞曲の雰囲気に会場が包まれている。3曲目の「カレンデュラ」ではMVも流れる。三宅葵依役のつんこがまだ青髪で懐かしいな、などとうつつを抜かしていると「東京テディベア」そして「群青のフローセカ」に心が揺さぶられる。葵依が「最後の花、咲かせて帰ります!」と宣言すると「BLACK LOTUS」、「神蕾-シン・ライ-」で締めていった。
こんな大口はあまり叩くものじゃないけど、燐舞曲に関してはアニソン系ライターの中で私が1番ライブを追っているんじゃないかな? という自負がある。だからこそ、彼女たちは『D4DJ』でありながら、どこか『バンドリ!』のリアルバンドたちのようなメンバー間での絆が生まれ、どんどん強固になっているのがよくわかる。今日のパフォーマンスはそんな燐舞曲が育んできた絆を、チームワークを感じるステージだった。
各ユニットの個性が色濃く、明確になってきたのも『D4DJ』の“成長”だと私は思っている。だからこそ、個性と個性の橋渡し的な感じでコラボ曲が挟み込まれている進行も良かった。Photon Maidenと燐舞曲のコラボ曲「灰燼のアシェンプテル」を終えると、この日最後のユニット、Abyssmareのターンへ。
ゴリゴリのトラップサウンドの出囃子に乗せて登場すると、まずは名刺代わりの「Get into the Abyssmare」、そして「I AM THE BEST」を披露し、メンバーから挨拶。
「ネオ役、そしてAbyssmareの音楽プロデューサーを務めますMay'nです!私は、個人の音楽活動でも、ユニット活動でも、とにかくコンサートを何より大切にしています。そんな私の熱量についてきてくれるメンバーには感謝しかないし、これからも最強のライブ作り上げていきます!」
言葉通りの力強い歌声で、ライブパフォーマンスで、メンバーをグイグイ引っ張っていく様子が印象的だった。「怪物」「第六感」とカバー曲を2曲、そして「バイララバイ」を披露し終えると、「みんなー!D4 FES.楽しんでる~?みんなの様子を見ていたら、僕も歌いたくなってきたな〜!UniChØrdも参戦するのだ!」と、UniChØrdの4人が乱入し、あわやステージをハッキングという展開に。 慌てて戻ってきたAbyssmareとコラボで「CYBERPUNK」を披露すると、Abyssmareの4人がフラッグを掲げて歌う「AXIS the world」は、かなりマッシヴで正統派なドラムンベースのサウンドも相まって、まさにフェス!って感じの展開だ。
「この夏、Abyssmareの全てをご覧にいれましょう」「お前ら、夏はAbyssmareに捧げるんだよな!」「8月3日蹂躙なのです」「夏まで待てない体にしてあげる」と控える1stコンサートのアピール。そして「WINNER」へ。
この日のアンコールはPeaky P-keyとAbyssmareの「NUMBER 1 and ONLY!!!!」だった。もちろん出演するユニットが軸とはいえ、この日限りのコラボ曲も多数楽しめたのは、個人的に嬉しかった。
ここで今日の出演者が全員呼び込まれ、告知タイムと最後の挨拶へ。各ユニットを代表して1人ずつ、まずはUniChØrdから小岩井ことりが「今日は「CYBERPUNK」をカマしたけど、明日の2日目はもっと楽しくしちゃうんで!」と期待に胸を膨らませ、Peaky P-keyより愛美は「ウチらも今日はゲストでしたが、明日に向けてたくさん作戦練ったので!明日も楽しみに!」と本日のゲスト組から挨拶を済ませる。
燐舞曲の加藤は「皆さんなんと言っても2年ぶりのD4 FES.ですからね!燐舞曲はゲスト枠で出るので、明日も一緒に楽しみましょう!」とコメント。Photon Maidenからは紡木が「皆さん、ブチ上がりましたかー?Photonは好きか~?DD精神で誰でも愛して!Photon Maidenの事も『D4DJ』の事も愛して~」と彼女らしく切実に訴える。
「コンサートで得たものを、次の音楽、歌詞に繋げていくのがAbyssmareです。ドンドン次の音楽を作り続けていきます!」と語ってくれたMay'n。
最後はLyrical Lilyの反田葉月から「初めての客席降り、皆さんいかがでした?私たちも楽しかったです!……ということで皆さん、ここで終わりだと思ってませんか?せっかく豪華なメンバー揃ってるので、最後にあの曲をみんなでカバーしたいと思います!」と「LOVE!HUG!GROOVY!!」の全出演者verを最後に披露。ユニットごとにマイクリレーしながらも、メンバー同士のさりげないやりとりなどから、各ユニットの個性の違いが見えてくるのも面白い。
特に私はDJをしてるからこそ思う。DJという題材でこんなに多種多様なユニットがよく出来るものだと。確かに単にひと括りに“クラブミュージック”と言っても様々なジャンルがあるし、ジャンルごとに曲のBPMはもちろん、客層もバラバラだったりする。十人十色とはまさにこのことで、みんな違ってみんないい。一人一人の違う個性を繋ぎ合せていくこと、バラバラのそれぞれに繋がりを持たせること、それこそがDJの本懐であると私は考えている。つまり『D4DJ』って、DJをちゃんと体現しているよね、という話なのだ。
実は筆者は2021年の『D4 FES.』もレポートしている。その原稿には最後に
“正直当時はここまで大きく発展するコンテンツになるとは思ってもいなかった。しかし今、ネクストステージへ向かうD4DJに対してワクワクしている自分がここにいる。D4DJが連れていってくれる新世界をこれからも見届けていきたい。”
と記した。当時はまだどんなコンテンツに発展するのか、いまいち読めていなかったし、DJやクラブカルチャーをどうやってコンテンツ化していくんだ?という疑念がうっすらあった気もする。だが今なら断言できる。『D4DJ』はめちゃめちゃDJそのものだったと。
レポート・文:前田勇介 写真:福岡諒祠(GEKKO) 、池上夢貢(GEKKO)