【ミリオンヒッツ1994】ミスチル「Tomorrow never knows」心に残り続ける3つのポイント
リレー連載【ミリオンヒッツ1994】vol.29
Tomorrow never knows / Mr.Children
▶ 発売:1994年11月10日
▶ 売上枚数:276.6万枚
Mr.Childrenのシングル史上最高の売上を記録した「Tomorrow never knows」
1994年11月、フジテレビ系ドラマ『若者のすべて』の主題歌として発売されたMr.Children「Tomorrow never knows」は、オリコンシングルランキングのトップテンに12週間もランクインしています。しかも、12月に発売された「everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-」と2曲同時のトップテン入りを7週にもわたって続けるほど。
CDの売上枚数は、当時の大型タイアップの大ヒット指標であるダブルミリオンを優に突破する276万枚に達し、ミスチルのシングル史上最高の売上を記録しています。これは、平成期におけるシングルCD売上の第6位にランクされる枚数なのです。
曲を聴くたび、歌うたびにこの曲に心を動かされる「Tomorrow never knows」
筆者は「Tomorrow never knows」を聴くたびに、自分の体の中に楽曲が丸ごと入り込んでくるような感覚を覚えます。良い曲を聴くと、感情が刺激されたり衝撃を受けたりすることがありますが、そういうビビッとくる感覚というより、温泉につかったときのようにじんわりと、はっきりと満たされていく感覚。40年以上音楽に接してきた中で、こんな感覚になったのは唯一この曲だけです。
この曲を聴くたび、歌うたび、心を動かされてきました。筆者にとって、今まで聴いてきたあらゆる音楽の中で、一番たくさん聴き、歌った回数も最も多く、心のベストテン第1位に30年間ずっと君臨している名曲、それがこの「Tomorrow never knows」なのです。
なぜそれほどまでに心に残るのでしょう? メロディー、歌詞、アレンジ、歌声など、楽曲を構成する要素がどれも素晴らしいですし、さらに楽曲全体の総合的な完成度が極めて高いレベルにありますから、お気に入りポイントは数多く挙げることができます。このコラムでは、その中でもこの曲を印象的にしている3つのポイント、メロディー、歌詞、アレンジを、それぞれの観点からご紹介します。
時代を超えた名曲が持つ、優美な曲調
まず、メロディーの特徴は “優美な曲調" です。Mr.Childrenの曲調は「CROSS ROAD」のようにビートを刻むロック調か「innocent world」に代表されるポップなメロディーが多いのですが、「Tomorrow never knows」はそのどちらとも異なります。
イントロの旋律の音程は “ドミレソファ ミレドシレ ドシラシド… ”。賛美歌を思わせるような美しい旋律で、どこか神聖な気持ちになります。サビは “ミファソドソ ソファミレミレド… ” という音程で、これも清らかで背筋が伸びるような旋律です。
そう、坂本九の「上を向いて歩こう」やザ・ブロードサイド・フォーの「若者たち」といった時代を超えた名曲が持つ、優美な曲調を備えていると感じませんか? ミスチルが生み出した数多くの楽曲や、90年代J-POPの様々なヒット曲と比べても「Tomorrow never knows」は独特の存在感を放ち続けています。
自分の人生を自分で舵取りしていくんだという意思が、力強く迫ってくる歌詞
続いて、歌詞の話題に移ります。「Tomorrow never knows」のキーフレーズといえば以下の箇所でしょう。
果てしない闇の向こうに
Oh Oh 手を伸ばそう
誰かの為に生きてみても
Oh Oh Tomorrow never knows
この歌詞は1番では登場せず、2番のサビでやっと歌われます。1番から2番のBメロまで、将来の展望が開けず今をもがきながらも、徐々に前を向く歌詞が続きます。溜めに溜めて、2番のサビでこのフレーズが来ることで、前を向いて進んでいく気持ちや、自分の人生を自分で舵取りしていくんだという意思が、力強く迫ってきます。
歌詞のキーフレーズは1番に登場することが一般的ですが、「Tomorrow never knows」の場合は “歌詞のキーフレーズが2番に来る" ことが印象に残る要因になっているのではないでしょうか。
桜井和寿の歌声がさらに力強く感じさせるアレンジ
最後はアレンジについて。印象的なアレンジのポイントは "転調" です。最後のサビで転調して音程が高くなることにより、桜井和寿の歌声がさらに力強くなり、楽曲のクライマックスを華やかにしています。転調によりキーがC(ハ長調)からD(ニ長調)に上がっており、転調の幅が半音ではなく全音(半音2つ分)であることも、力強さが増す一因になっています。
ミスチルの楽曲では「名もなき詩」「くるみ」「HANABI」などが半音転調である一方、「抱きしめたい」「es」「終わりなき旅」などはこの曲と同じ全音転調が用いられています。全音転調だと、音程がかなり上がったと感じられるので、転調後の盛り上がりをよりドラマティックな展開にしています。
イントロからアウトロまで楽曲全体をかみしめて聴きたい
以上、「Tomorrow never knows」を印象的にしている代表的な3つのポイントを紹介しましたが、これ以外の魅力も含めた "楽曲全体の総合的な完成度" こそ、リリースから30年経った今も、この曲が愛されている大きな要因でしょう。J-POPのスタンダードナンバーになった「Tomorrow never knows」。皆さんも、イントロからアウトロまで楽曲全体をかみしめて、この曲を聴いてみてはいかがでしょうか。