犬が亡くなる可能性のある『寄生虫』4選 意外と身近な感染源に要注意
寄生虫とは?意外と身近な感染源に注意!
みなさんも『寄生虫』という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。分かりやすくいうと、人や動物の表面や体内にとりついて(寄生)、食物をせしめる生物のことです。 寄生される人や動物を宿主といい、そもそも寄生虫は宿主なしでは生きていけません。
もしも犬が寄生虫に感染したときは、種類に応じた駆除薬を投与して治療を行うことが基本ですが、犬の寄生虫感染は症例が多く人間に感染することもあるので十分に注意が必要です。
犬の主な寄生虫感染経路は、経口感染と母子感染です。寄生虫に感染している犬の便を舐めたり、ミミズやゴキブリを口にすることで犬に感染します。また、草むらや土壌にいる寄生虫の卵を犬が触れたり舐めたりすることでも感染してしまいます。
また、妊娠中・出産後の母犬が寄生虫に感染していると、胎盤や母乳を通して子犬に感染することがあります。いずれにしても、身近なところから犬に感染してしまう可能性があります。
犬が亡くなる可能性のある『寄生虫』4選
寄生虫は体内に寄生する「内部寄生虫」と体の表面に寄生する「外部寄生虫」とに分けられます。ここでは、犬が死亡してしまう可能性のある寄生虫を4つ紹介します。
1.フィラリア
1990年には、およそ3割の死因がフィラリア症であるほど犬の死亡原因トップであった「フィラリア」ですが、予防薬が普及したため死亡例は大幅に減少しました。フィラリアは『犬糸状虫』とも呼ばれる体長20~30cmの白くて細長い寄生虫です。
蚊を介して犬に感染し心臓や肺の動脈に寄生します。食欲不振や体重減少、ゼーゼーとした咳といった症状があらわれ、放置すると心不全や多臓器不全を引き起こします。場合によっては死に至るケースのある恐ろしい内部寄生虫です。
フィラリアの予防薬は、幼虫が犬の体内で成長する前に(心臓に寄生する前に)駆除するため、高い予防効果が期待できます。錠剤・おやつタイプ・注射など愛犬に合わせて選択ができ、動物病院でも積極的に推奨しています。
大切なことは、蚊の活動時期(5月~12月頃)は油断せずに予防を継続することです。
2.回虫
回虫は、日本の犬が感染することが多い内部寄生虫です。犬に寄生する回虫は、卵→幼虫→成虫と成長し、成虫は10~20cmの白く細長い形をしています。成犬は抵抗力があるため、感染しても無症状、もしくは軽症ですむことがほとんどです。
一方、生後3ヶ月~半年ほどの子犬が寄生されると下痢、嘔吐、お腹の膨れなどの症状があらわれます。免疫力が低い子犬が感染してしまうと早期に悪化することもあり、命にかかわる危険性も。
有効薬剤を投与することで駆虫することができるため治療法は比較的簡単です。進行させないことが大切です。特に子犬期は便に混ざって出てくることもあるため気を付けて見てあげましょう。
3.鞭虫
内部寄生虫の鞭虫(べんちゅう)は、犬の盲腸や結腸に寄生する線虫の一種で、鞭のような形をしているためこう呼ばれています。土壌や水にいる鞭虫の卵を摂取したり、感染した犬の便に触れることで感染します。
感染すると血便や下痢といった症状がみられます。進行すると貧血や脱水を引き起こし、最悪の場合には死に至ることもある恐ろしい寄生虫です。
治療には駆虫薬が用いられ、鞭虫を体内から駆除します。早期発見と適切な治療で愛犬の健康を守ることができます。
4.マダニ
マダニは犬の体の表面に寄生する外部寄生虫です。ノミ・マダニ駆除薬も浸透しましたが、実際に愛犬の体表にマダニがついているのを見て驚いた飼い主さんもいるでしょう。
マダニは病原体を犬に媒介する恐ろしい存在です。「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」の原因となるウイルスや、「バベシア症」を引き起こす原虫を媒介する危険性があります。
SFTSは犬から人間へ感染する可能性があり、下痢や嘔吐、発熱のほか重症化すると死に至ることもあります。バベシア症に関しても発症すると、重度の貧血から放置すると命をも脅かします。
マダニは犬が死んでしまう病気を媒介する、危険な寄生虫だと覚えておくとともに、マダニが活発になる春から秋にかけてはしっかりと駆除薬を使用しましょう。
まとめ
フィラリアやマダニなど見聞きしたことのある寄生虫もいたことでしょう。寄生虫によっては重症化すると死に至る危険性もあります。予防薬をしっかり用いることと、少しでも愛犬の異変を感じたら迷わず病院を受診することが大切です。
正しい知識を取り入れ、寄生虫から大切な愛犬を守ってあげましょう。
(獣医師監修:寺脇寛子)