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広島県福山市で市街地活性化に取り組む「umika」。”まちづくりのクリエイティブチーム”として地域に新たな価値を

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2023年に開催された「まちの空想俱楽部」のトークセッション。2020年度から行われたエリアのビジョンを紹介した(提供:umika)

にぎわい創出のため動き始めた福山駅前・中心市街地

2022年(令和4年)8月にリニューアルした福山城天守

広島県東部・岡山県との県境に位置する福山市は、人口約45万人の中核都市だ。広島県第2の都市で、中国地方第4の都市規模を誇り、広島県東部から岡山県西部に至る「備後圏域」の経済・交通の中枢を担う。中心市街地は、江戸時代初期に建てられた福山城の城下町を起源としている。

同市にあるJR福山駅は新幹線が停車し、福山市や備後圏域の玄関口である。同駅は江戸時代に福山城の城内だった場所に所在し、駅のホームの目の前に福山城の本丸・天守がそびえているのが特徴だ。

そんな福山駅周辺・中心市街地は、かつては商業施設が集中し、人通りも多くにぎわっていた。しかし郊外の路面店やショッピングモールなどににぎわいが移り、次第に人通りが減少。2000年代ごろより商業施設の閉鎖などが続き、活性化が課題になっていた。

リノベーションによる活性化が始まったことで、伏見町へ出店する店舗が増加した
iti SETOUCHIの入居する「エフピコRiM」の外観。1階部分のみがiti SETOUCHI。umikaは同施設の基本構想策定支援を担っている

2010年代終わりごろから、駅前にある伏見町がリノベーションによるまちづくりで注目され、人通りが増え始める。2018年から5年で30店舗が伏見町に新規出店した。また閉鎖した大型百貨店の建物の1階のみを利用し、「屋根のある公園」をコンセプトとした施設「iti SETOUCHI(イチ セトウチ)」がオープン。さらに新たな商業施設「NEWCASPA(ニューキャスパ)」が開業した。

少しずつ賑わいを取り戻しつつある、福山駅前・中心市街地。そんな福山市でまちづくりに取り組む「株式会社 umikaウミカ)」という企業がある。「ローカルを地域価値にする」をビジョンに掲げ、地域活性化につなげる企画の提案・実施から、社会実験までさまざまな活動を展開している。

同社の代表取締役・谷田 恭平(たにだ きょうへい)さんに、設立の経緯や活動の概要などについて話を聞いた。

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NEWCASPAの外観。写真右にはJR福山駅。そのうしろに見えるのは福山城天守

リノベーションスクール受講生が集まり「umika」設立

umikaの谷田 恭平代表取締役。建築設計を本業とする

谷田代表は「umika設立のきっかけになったのは、2018年(平成30年)に福山市主催、株式会社リノベリングの企画・運営で開かれた『リノベーションスクール』です。スクールは実在する空き物件を題材とし、事業プランを考えるという実践的な研修。そこで出会い、学んだメンバーによって、2019年3月に設立されました。私たちumikaは、一言で表すなら『まちづくりのクリエイティブチーム』です」と話す。

同社は役員が5人、社員2人という少数精鋭の企業。役員はそれぞれの本業となる事業を持ち、本業を行いながら同社でまちづくりに関わっているという。谷田代表は建築設計、ほかのメンバーもカフェ経営やホテル経営コンサルタント、食品の製造・販売、建築工事などが本業。

まちづくりは総合力が大事だと考えています。不動産事業への知見や理解があること、不動産を生かしたコンテンツを開発すること、開発したコンテンツのハード面のデザインをすること、それを使いやすくオペレーションを組み立てて広く認知してもらうこと。それぞれが異なる得意分野を持っていることで、これらを総合的に対応できます。ハード面からソフト面、広報関連まで一貫して計画できるのが私たちumikaの最大の強みです」

umikaの役員(提供:umika)
umikaが関わった社会実証実験「伏見路地構想」の様子(提供:umika)

一方で、それぞれ兼業であることから、umikaの事業に割ける時間が限られるという欠点もある。そこでumikaでは役員がフルコミットしなくても、まちづくりの事業が回っていく計画を立てているという。

なおumikaという企業名は、人・企業・地域が価値を生み出す起点となる意味を込めて「生まれる住処」を意味するという。さらに、風光明媚で実り豊かな瀬戸内海の特徴から「海と果」も意味している。

umikaが手がけてきたまちづくりの取組みは多岐にわたる。代表的なものを挙げると 以下のとおりだ。

●シェアキッチン「Little Setochi」
●まちの空想俱楽部
●社会実験「伏見路地構想」
●JR福山駅東高架下リニューアル事業

それぞれの詳細について、谷田代表に概要を聞いた。

umikaが関わった社会実証実験「伏見路地構想」の「デニム屋台」の様子(提供:umika)

低価格・高スペックを実現したシェアキッチン「Little Setouchi」で創業を支援

「Little Setouchi 福山伏見」の外観

Little Setouchiリトル セトウチ)」は福山駅前の伏見町にある、umikaが運営するシェアキッチンだ。「はじめるを試せる」をコンセプトに掲げ、2020年(令和2年)1月にオープンした。Little Setouchiの特徴は、スタッフが非常駐である点。代わりに、契約時に理解を得た上で利用者に清掃・片付けの協力をしてもらっている。

スタッフを非常駐にすることにより人件費がかからないため、安価な料金設定で利用が可能に。さらに家庭にないような高スペックの厨房機器の設置を実現した。また兼業であるumikaスタッフの労力も軽減している。

谷田代表は、Little Setouchiの開業経緯について次のように語る。「リノベーションスクール内で設立メンバーが出したアイデアが、Little Setouchiの元になっています。伏見町で使われていない古い建物を改装し、シェアキッチンとして利用してもらうというものでした。そしてumikaを設立し、アイデアを実行に移したものがLittle Setochiです」

Little Setouchiは、単に古い建物を活用した事業というだけではない。「はじめるを試せる」というコンセプトのとおり、創業の支援という側面があるのも特徴だ。安価で高スペック、使いやすいシェアキッチンを提供することで「お試し起業」にチャレンジできる。厨房・席があるスペースが借りられ、飲食営業と菓子製造業の営業許可は取得済み。利用契約をして、すぐに店舗運営に取りかかれるのが強みだ。

これまでLittle Setouchiで店を運営した人のうち、5店に1店の割合で独立店舗を持ったり、開業したりしているという。

Little Setouchi 福山伏見の店内の様子【左上】料理用の厨房【右上】菓子用の厨房【左下】店内にはカウンター席とテーブル席がある【右下】テーブル席の様子(左上・右上の2枚 提供:umika)
Little Setouchi 尾道西土堂の様子(提供:umika)

さらにumikaが伏見町商店会に属し、谷田代表が商店会の副会長を務めている。そのため伏見町の行事と連携し、イベント出店などがしやすいのもLittle Setouchiの魅力だという。

谷田代表「街とのつながりを持つことで、活動の幅が広がります。もともとumikaは、まちづくりや地域活性化をめざして設立しました。Little Setouchiは地域に根ざした施設として運営しています」

Little Setouchiで金・土曜日の夜に「お野菜ダイニングバー Sora(ソラ)」を営業する清水 健太(しみず けんた)さん。以前にLittle Setouchiを利用して飲食店をしていた同級生から紹介されたのが、Little Setouchiを利用するきっかけだったという。

清水さんは「設備や許可申請が整っており、内装も作り込まれているので『ちょっとお店やってみようかな?』という実験的運営ができるのが魅力ですね。また好立地なのもポイントだと思います。ほかの利用者様と意見交換ができたり、使い方を見て勉強できるのも大きいです」と魅力を語る。今後「はじめるを試せる」が続いていき、街が盛り上がってほしいとLittle Setouchiに期待を寄せる。

また竹内 梨紗(たけうち りさ)さんは、火曜日の昼にひとくちマフィン専門店「SOKO no muffin(ソコノマフィン)」を営業する。竹内さんも、かつてLittle Setouchiを利用していた知人に紹介されたという。「子どもが学校に上がったことで、育児を行いつつ、空いた時間で仕事をしたいと考えていたんです。設備・機材がそろっていて自分の得意な菓子づくりを生かせるため、Little Setouchiの利用を決めました」と竹内さん。

なおLittle Setouchiは2021年(令和3年)3月に尾道市中心部の西土堂に2号店を開設した。さらに2025年(令和7年)6月には、福山市北部の御幸町に3号店もオープンする。

2025年6月に福山市御幸町にオープンのLittle Setouchiの様子(提供:umika)

商店街・エリアの個性やビジョンを共有し、まちづくりの担い手を発掘・育成する「まちの空想俱楽部」

まちの空想俱楽部は市内の主要な各商店街・商業エリアを対象に、エリアごとに開催された(提供:umika)

まちの空想俱楽部」は、まちづくりに携わる人材を育成するワークショップだ。2020年度(令和2年度)から商店街がビジョンを持つための事業として始まった。

まちの空想俱楽部が生まれた経緯について谷田代表は「福山市では、福山駅前地区に『ウォーカブルなまち』というビジョンを掲げています。しかし私は、駅前にある個々の店舗の持つコンセプトと結びつかない印象を感じていました。ウォーカブルという言葉が抽象的で店側もわかりづらく、浸透しにくいと思っていたんです」と話す。

「そこで駅前の各商店街・商業エリアがそれぞれローカルビジョンを持つことで、市のビジョンと店のコンセプトが結びつくのではないかと考えたのが、まちの空想俱楽部のきっかけです。福山には駅前だけでも14ヶ所の商店街があります。それぞれの商店街が個性を打ち出せば、市民の興味も強くなり、街を歩き回りやすくなるのではないかと考えました。個々の店舗の個性はバラバラでも、商店街としての個性があると、一つのまとまりとして見えます」(谷田代表)

umikaはまちの空想俱楽部の企画を市に提案。そして「リノベーションまちづくり推進事業」として、まちの空想俱楽部が実現した。まちの空想俱楽部は各商店街・エリアごとに開催。商店街・エリアで営業する商店主等に集まってもらい、ワークショップを実施した。ワークショップでは、最終的にまちのキャッチコピーやビジョンイラストなどを制作。みんなで一緒に制作することで、将来像を共有するとともに、まちづくりの担い手を発掘・育成することを目的とした。

まちの空想俱楽部のコンセプト(提供:umika)
参加エリアが制作したビジョンイラストの一部【左上】伏見町エリア【右上】霞町・中央公園エリア【左下】三之丸エリア【右下】本通エリア(提供:umika)

「まちの空想俱楽部を提案したときにこだわったのは、まちづくりに資する内容であれば、それに関する補助金が出やすくなる道筋も設けたことです。こうすることで、ワークショップで生まれたビジョンやアイデアを実行に移しやすくしました。まちの空想俱楽部で生まれた成果の一つが、伏見町で私たちが展開している社会実験『伏見路地構想』です」(谷田代表)

ほかの商店街・エリアの成果だと、本通エリアのコンポストイベントがある。本通は緑が多い商店街で、グッドデザイン金賞も受賞した。ワークショップではビジョンとして「まちの森」を掲げ、そのビジョンから、生ゴミを持ち寄って堆肥をつくるというアイデアが生まれた。それを実現させたのがコンポストイベントだ。

堆肥は商店街の植栽に使用されるという。また本通商店街では、広場でのスケートボード使用によるマナー違反が問題になっていた。そこで人工芝を敷いて、スケートボードを使用しにくくするとともに、「まちの森」としてイメージ向上につなげる社会実験もした。

また霞町・中央公園エリアでは、もっと中央公園を利用しやすくなるよう、野外映画祭を開催したという。

「あくまで空想なので実現できないものもありますが、やりたいこと・アイデアを出すことが目標。みんなのやりたいことが、エリアの共通の目的になって、それがまちづくりのエンジンになることがこのプロジェクトでやりたかったことです」と谷田代表は語る。

その後、まちの空想俱楽部は福山駅前・中心部以外にも拡大、郊外のエリアでも開催した。

霞町・中央公園エリアで提案されて実現した、中央公園での野外映画祭(提供:umika)

ほこみち制度を活用し、道を広場とする社会実験「伏見路地構想」

社会実証実験として行われた「伏見路地構想」の様子(提供:umika)

先述のとおり、まちの空想俱楽部で伏見町エリアから出たアイデアが社会実験「伏見路地構想」だ。umikaのスタッフが伏見町商店会に所属していることから、umikaも伏見路地構想に参加している。

「ワークショップ内で、伏見町内には以前から公園のようなくつろぎのスペースがほとんどないという話が出ました。またもう一つの課題として、伏見町に新規参入できる余地がなくなったことも挙げられたんです」(谷田代表)

伏見町はリノベーションによるまちづくりの推進により、2018年から5年で30店舗が出店した。その一方でエリア内に、店舗に活用できる空家が減少したという。「くつろぎのスペースの設置と新規参入の二つを解決する手段として出たのが、伏見路地構想のアイデアでした」と谷田代表は振り返る。

社会実証実験として行われた「伏見路地構想」の様子(提供:umika)
社会実証実験として行われた「伏見路地構想」の様子。地元デニム企業とコラボした「デニム屋台」を設置(提供:umika)

伏見路地構想は道を広場として使用し、「ほこみち制度歩行者利便増進道路制度)」を利用して、屋台による出店をするというもの。「ほこみち制度」は国交省の定めた制度で、道路空間を街の活性化に活用できる制度だ。また伏見町の「ほこみち」では、営利事業を行えるよう申請し許可を得ている点がポイントだと谷田代表は言う。

伏見路地構想は社会実験として、イベント時に実施している。伏見町を東西に貫通する道路「伏見ゴッサム通り」を自動車の通行禁止にした上で、道路上に人工芝を敷設。その上にテーブル・イスを設置した。野外音楽イベントも同時開始したという。

また駅前ロータリー沿いの通りには、地元デニム企業とコラボレーションして制作した「デニム屋台」を設置し、飲食店が営業した。

「伏見路地構想の社会実験では、多くの方が訪れ、楽しんでいただけました。今後は伏見路地構想のイベント回数を増やし、定着させたいですね」と谷田代表は意気込む。

なおデニム屋台はイベント以外でも、常時設営されている。屋台は伏見町商店会が設置・管理しているため、商店会に利用申請すれば、いつでも利用できる。定期的にデニム屋台を利用している事業者もいるという。

デニム屋台は常時設置されており、伏見町商店会が管理。商店会へ申請することで、いつでも利用が可能(提供:umika)

10年間空き店舗だったJR福山駅東高架下に個性的な店を集めて地域唯一の場所をめざす「フクハチコウカPJ」

リニューアル事業が実施された福山市今町の福山駅東高架下の様子(西側から撮影)

福山駅周辺のJR路線は高架化されている。その高架下のうち、福山駅東部・今町地区の区画を活用するのが「JR福山駅東高架下リニューアル事業」だ。もともと今町の高架下では商店が営業していたが、8区画中7区画が撤退。1店舗が営業を続けるのみで、残りは長年空き店舗となっていた。その空き区画に新たな店舗を誘致し、地域のにぎわいにつなげる事業である。

「JR西日本の方針変更により、2014年(平成26年)から区画の貸出が停止されていました。しかしすぐ近くにある本通商店街から、地域の活性化のために高架下を活用できるようにしてほしいという要望が、福山市役所に寄せられたのです。市役所がJRに相談したところ、民間企業と協力して取り組みたいとのことで、市を通じてumikaに打診がされたことが、この事業の始まりでした」(谷田代表)

「JRさんは大きい会社なのでどうしても担当者の異動などがあり、過去の履歴を把握してのきめ細やかなやり取りが難しいです。そこであいだにumikaが入ることにより、丁寧な対応ができるのがメリットですね。また約10年間、時間が止まっていた物件です。再始動にはそれなりの修繕が必要になります。umikaには建築のプロもいるので、修繕の判断がスピーディーに検証できるのもメリットですね」と、谷田代表は同事業の利点を語る。

同事業はJR西日本とumikaの協創プロジェクト。JR関連企業であるJR西日本不動産開発としては、初となる民間へのマスターリースとなった。構想には1年ほどかけたという。JR西日本の大きな協力と理解を得て、契約内容を整えた。

「利用者が支払う賃料を大幅に抑える代わり、食材にこだわったり、内装にこだわったりなど、コンテンツに投資をしている事業者に入居してもらいます。そのため希望者は審査を行いました。どんな事業者でもいいわけでなく、個性的なローカル店舗を集めることで、駅東高架下という場所を魅力あふれる地域唯一の場所にするのが目的です」

リニューアル事業が実施された福山市今町の福山駅東高架下の様子(東側から撮影)
【左上】駅前の別の場所から移転オープンした居酒屋「照月」【右上】駅前にあるラーメン店の2号店「とんこつ こばやし」【左下】Little Setouchiから移転したカジュアルフレンチ「Farine(ファリーヌ)」【右下】Farineの店内の様子。高架下だが十分な広さがある

取材をした2025年(令和7年)5月時点で、空き区画7店舗分のうち6店舗が埋まっているという。2024年(令和6年)12月に3店舗がオープンし、2025年5〜6月に3店舗がオープンする。谷田代表は「時が止まったような場所だったので、再び時間が動き出す感じがします」と感慨深げだ。

長田 美里(ながた みさと)さんは2024年12月、高架下にカジュアルフレンチの店「Farineファリーヌ)」をオープン。もともとLittle Setouchiで営業していたが、独立して個別店舗を構えた。「もともと独立店舗を探していて、高架下の空き物件の存在も知っていました。そのタイミングで募集が始まり、入居希望を出しました」と長田さん。

開店してみて、中心部で立地が良く、Little Setouchiからも近いため、以前からの利用客も今までどおり来店しやすいと感じているという。今後はumikaに対し、駅から高架下まで人が流れてくる施策を期待したいそうだ。

2025年5月に炭火焼き料理店「zono kitchenゾノ・キッチン)」をオープンした原薗 和也(はらぞの かずや)さんは、知人の紹介で物件を知ったという。「福山を含め地方都市の駅前は、にぎわいの低下が課題だと聞いています。市街地に人が訪れるきっかけになればいいなと思い、出店を決めました」と意気込む。

umikaでは、JR福山駅東高架下リニューアル事業を「フクハチコウカPJ(プロジェクト)」と銘打っている。「フク」は福山市と幸福の意味。「ハチ」は全部で8店舗の区画と、末広がりの「八」の意味があるという。谷田代表は、「高架下を一つのまとまりのある商業エリアとして打ち出したいと考えています。たとえばイルミネーションを点灯するといった施策をしたいですね」と話した。

【左上】2025年6月オープンのビストロ「noalte(ノアルテ)」【右上】2025年5月オープンの炭火焼き料理「zono kitchen(ゾノ・キッチン)」【下】8区画中で唯一、昔より営業しているイタリア料理店「ボナヴィータ」

福山の街中に人が訪れ、集まる目的になる場所を増やしたい

福山駅東高架下のうち1区画には、umika初の飲食事業としてギャラリーカフェ「& Q(アンク)」がオープン(提供:umika)

谷田代表は、福山駅東高架下リニューアル事業の課題として「福山駅から東方面への導線」を挙げる。そのために伏見町北側の「伏見くすのき通り」との連携や、本通商店街のイベントと連携するなどしたいという。周辺一帯を盛り上げることで、駅から東へ人が自然と向くようにしてきたいと考えている。

ほかに力を入れたいこととして、「街中に宿を増やすことで、来街者を増やしていく」ことを挙げた。その一環として、2025年春よりLittle Setouchiの2階を、伏見町にある分散型ゲストハウス「AREA INN FUSHIMICHO(エリア・イン・フシミチョウ)」の客室の一つとしてumikaが投資して増床した。

Little Setouchiの2階は、伏見町にある分散型ゲストハウス「AREA INN FUSHIMICHO」の客室として利用されている。2025年春より始まった、新たな試みだ
ゲストハウス「AREA INN FUSHIMICHO」の客室として利用されているLittle Setouchiの2階の様子(提供:umika)

「もうすぐ市内北部にLittle Setouchiの3号店がオープンし、全部で3ヶ所体制になります。今後はLittle Setouchiを利用していた人が、独立して出店できるような場所を増やしていきたいですね。まちづくりのクリエイティブチームとして、地域の価値をより生かせるよう、私たちの力を発揮したいです」と谷田代表は展望を語る。

活性化の機運が高まっている福山駅前・中心市街地の動向と、umikaの今後の取組みに注目だ。

※取材協力:
株式会社 umika
https://umika.jp/
LIttle Setouchi
https://littlesetouchi.jp/
お野菜ダイニングバー Sora
https://www.instagram.com/sora_fukuyama/
SOKO no muffin
https://www.instagram.com/soko_no_muffin/
Farine
https://www.instagram.com/farine_2022/
zono kitchen
https://www.instagram.com/zono_kitchen_/

2023年に開催された「まちの空想俱楽部」のトークセッション。2020年度から行われたエリアのビジョンを紹介した(提供:umika)

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