「関東1都6県で二拠点LIFE!」週末は狩猟や森の保全、家のDIYなどで充実! 誰かのために地域課題解決の活動も【東京都内⇔神奈川県南足柄市】
「誰かの役に立っている気がしない」と都会での暮らしに疑問を持った中野さん。狩猟に興味を持ち、週末は有害鳥獣駆除や管理捕獲、森の保全活動に取り組むなか、仲間とともに、南足柄の地域課題を解決するプロジェクトも立ち上げた。週末の拠点での活動が、平日の仕事にもいい影響を及ぼしている。
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掲載:2025年1月号
神奈川県南足柄市(みなみあしがらし)
神奈川県の西部に位置し、人口は約4万人。北は丹沢山地、南は箱根外輪山があり、「水の郷百選」や「箱根ジオパーク足柄エリア」にも選定されていて、自然が身近にある。子育て環境がよく、地域密着型の教育に力を入れている。都内から車で、東名高速道路大井松田IC経由で約1時間30分。市内には伊豆箱根鉄道大雄山線が通っている。
ドキュメンタリー番組から狩猟に興味を持つように
特殊伐採の作業をした木の上で中野さん。枝葉が伸びすぎて電線に絡んだり、枝が折れそうだったりと、大きく育ちすぎた危険な木を、樹木をチェックしながら伐っていく。
中野拓郎さん●46歳
埼玉県の浦和生まれ。現在は東京の広告会社に勤務し、妻とともに都内のマンションに暮らす。自然への憧れから、週末を中心に小田原・箱根などで管理捕獲や有害鳥獣駆除、森林を守る活動などを行うため、南足柄と東京の二拠点生活を実践中。
「ずっと都市部で暮らしていたので、自然への憧れは人一倍」と話す中野拓郎さん。平日は都内のマンション、週末は南足柄市の賃貸の一軒家で過ごす二拠点居住をしている。
仕事は好きで充実していたが「誰かの役に立っている気がしない」と疑問を持つようになった中野さん。テレビでジビエのドキュメンタリー番組を見て、狩猟に興味を持つ。
「野生鳥獣による被害が多くなっているなか、捕獲してジビエとして有効活用する。人の役に立つし、自然とも触れ合えると思いました」(中野さん)
情報収集するなかで見つけたのが、「小田原くくり罠塾」だった。事前に罠・網の狩猟免状を取得し、2022年に入塾。塾では、野外での実技のほか、罠猟についての基礎知識、シカやイノシシなどの生態、ジビエ料理などについて学ぶ。塾へ通いながら第一種猟銃の狩猟免状も取得した。実際に罠猟を行うなかで、山の課題も見えてきた中野さんは、山の生態系や伐採を学ぶため、今度は南足柄市が開催した林業研修に参加。
毎週のように小田原・足柄エリアを訪れるようになった中野さんは、妻の了解を得て23
年3月に南足柄市の家を借りた。物件は仲間からの紹介。古い平屋で、トイレも汲み取り式だったが、高台にあり見晴らしがいい。今まで行っていた有害鳥獣駆除や管理捕獲、山林の伐採などの活動に、家のDIYも加わった。
「簡易式トイレに改修し、キッチンもきれいにし、屋根の補修も。仲間が手伝ってくれたので楽しかったです」と、DIYも満喫している様子だ。
捕獲したシカ。「小田原くくり罠塾」では、毎年、数百頭を捕獲している。
捕獲した個体は加工施設で解体し、食肉やペットフードとして販売。有効活用している。もちろん、自己消費も。
南足柄市に借りた家は、神奈川県が定める「里地里山保全等地域」に選定される田園地帯にある。仲間とともにDIYで改修した。
地域の課題解決に取り組み、平日の仕事の幅も広がる
南足柄市に拠点を持つと、中野さんは少しでも地域の役に立ちたいと考えるようになった。都心からアクセスがよく、自然が豊かという恵まれた環境の南足柄市だが、そのよさを活かしきれていない面もある。
そこで、林業研修で知り合った仲間と、「南足柄プロジェクト」を立ち上げた。南足柄の課題を把握し、森と人との持続的なかかわりや課題解決を模索していくプロジェクトだ。
このプロジェクトチームで、南足柄市の公共事業のプロポーザルに参加し、小学校の昇降口の木質化に取り組んだ。ワークショップというかたちで、小学生や地域の人たちの意見を取り入れたことが好評だった。
「東京の仕事でも、森や自然、持続可能な暮らしなども考えるようになり、仕事の幅が広がりました」
今、中野さんが力を入れているのが「特殊伐採」。クレーンなどを使わず、ロープで木に登って伐採する技術だ。さらに、空き家をリノベーションして宿泊施設づくりも考えているという。
「二拠点というライフスタイルにしたことで世界が広がり、一方で価値観が近い仲間に出会うこともできた。一歩踏み出せば、こんなに楽しく充実した暮らしありました」と中野さんは満足そうに笑う。
小学校昇降口の木質化の改修工事。ワークショップ形式で、多くの人の意見を取り入れて完成した。
樹上に登って少しずつ伐り、伐った木をロープで下ろす「特殊伐採」。専門的な知識と技術が必要となる。
中野さんの二拠点LIFE!
◆滞在頻度と期間ほぼ毎週、土日は小田原・南足柄エリアで過ごしている。管理捕獲や山の保全の活動が定期的にあるほか、養鶏場の手伝いにも参加。最近は平日も、プロジェクト関係でメンバーとオンラインミーティングが入ることも。
◆移動手段
「南足柄市の家は最寄り駅から遠いので、電車とバイクを利用しています」。バイクは小田急線の新松田駅に置いてあり、そこから家まではバイクで10分ほど。都内のマンションから南足柄の家までドアtoドアで約2時間。
◆二拠点LIFEへのアドバイス
「地域にいきなり溶け込むのは難しいので、まずは仲間を見つけるのがいいと思います。僕の場合は、小田原くくり罠塾や林業研修など、講習会に参加することで仲間と知り合うことができました。仲間ができれば楽しいですし、家の紹介など、地域のさまざまな情報を教えてもらえます。まずは、一歩を踏み出す勇気を持ちましょう。自分から踏み込んでいけば、受け入れられやすいです」
南足柄市の移住の問い合わせ
良質で豊富な水と緑。豊かな自然がある南足柄市
「金太郎のふる里」「万葉の里」南足柄市は、良質で豊富な水と緑をはじめ、足柄三山や花紀行など豊かな自然に恵まれている。都心へ1時間30分ほどと通勤も可能で、週末はキャンプや農業が楽しめ、ゆっくりと暮らせる。市では移住に関する相談を積極的に受け付けているほか、結婚などを機に市内で新たに新生活を始める世帯に対し、空き家リフォームの補助(上限70万円)もある。
お問い合わせ:南足柄市企画課定住促進班 ☎0465-73-8001(直通)
3月中旬に咲く早咲きの桜「春めき桜」。怒田(ぬだ)丘陵には約120本が植えられ、卒業式シーズンを彩る。
「“ほどよく都会、ほどよく田舎”な子育てしやすい南足柄市にぜひお越しください!」
(南足柄市企画課の大河原さん)
文/水野昌美 写真提供/中野拓郎さん、南足柄市