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お金を増やしたい会社員がやるべきこと。お金の専門家・頼藤太希さんに学ぶ、キャリアと資産の大原則

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転職は年収を上げられる手段の一つです。しかし、マイナビ転職が2024年に行ったアンケート調査(※)によると、転職で年収が上がった人は4割に上る一方、年収が上がった人の中でも「理想の年収には届かない」と感じる人が6割もいるという現実も見えてきました。

転職市場が活況な昨今でも、誰もが理想の年収を実現できるわけではありません。もちろん、「やりがい」や「ワーク・ライフバランス」など、転職のモチベーションは年収以外にもさまざまですが、一方で年収が転職において重要な要素であることは間違いないはずです。転職などで年収が上がらないと感じるビジネスパーソンは、生活不安に悩まされないために、どのような視点で将来を設計していけばよいのでしょうか。

今回は経済評論家・マネーコンサルタントの頼藤太希さんに、調査データを基に「資産形成の基本や考え方」を解説いただきます。

監修者

頼藤 太希(よりふじ たいき)
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、アフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍110冊超、累計200万部。日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。

なぜ転職しても「理想の年収」に届かないのか?

マイナビ転職のアンケート調査で、さまざまな世代に「理想と現実の年収ギャップ」を聞いたところ、40代が「約320万円」と最も大きく開きました。その背景を、頼藤さんはこう指摘します。

「40代は、子育てや教育費などライフイベントが重なる時期で、どうしても支出が増えやすい世代です。

一方で、資産形成は早めに始めるほど有利なのも事実です。もし20代・30代の頃からキャリア形成と並行して資産形成を始めていたら、一定の金融資産を築けていた可能性があります。この10年の間に、S&P500や日経平均株価などの株価指数も大きく上昇していますからね。

そうした資産があれば、理想と現実の年収ギャップがあまり大きくならず、年収に対する不安や不満も軽減できたかもしれません。

若手のビジネスパーソンは、こうした現実を参考にしながら、キャリアと資産形成の両方を意識しておくことが大切です」

とはいえ、キャリア形成のために自分磨きを始めてもすぐに年収が上がるわけではありません。年収を上げるためにやるべきこととして、アンケート調査では「転職」「リスキリング」「副業」が上位に挙がりましたが、これらの優先順位やバランスをどう考えればよいでしょうか。

「転職もリスキリングも副業も『(物理的にできるならば)全部やった方がいい』と思います。どれも年収アップの有効な手段であることには違いありませんから。

ただし、『長期的な視点』を意識することが重要です。70代まで働き続けることを見据えて、その時に自分がどうありたいか、どのような働き方をしていたいかを考え、今やるべきことを選択する。

副業でも、目先のお金のためだけに、好きでも得意でもない、将来性もない仕事をしても続きません。転職にしても、スキルやキャリアアップを意識せず漫然と繰り返していると、いずれ転職できなくなってしまいます。

だから、何かしら仕事を始めたのであれば、『石の上にも3年』という言葉があるように3年間、本気でスペシャリストを目指すなら5年間は続けることが重要なのではないでしょうか。その仕事に対する向き、不向きもすぐには分かりませんからね」

一方、調査では、転職で年収が下がった理由として「他の条件(仕事内容や休日)を優先したから」という回答が最多でした。年収を下げて時間ややりがいを得る選択は、資産形成の観点からどう評価できるのでしょうか。

「人的資本(個人が身に付けるスキルや経験、健康などのステータスのこと)を養うという観点では、非常に良い選択だと思います。

長く働き続けるためには、スキルや経験だけでなく『健康』も不可欠ですし、仕事以外に幸せを感じる『経験』『思い出』も重要です。そしてこれらは若いうちに得た方が、複利効果となって後々の人生へ大きくプラスに働きます。

年収アップだけを意識するのではなく、自分の満足度や『自分がどうありたいか』を重視して時間を使う。特に、キャリアに厚みが出る30代でそうした決断ができている人が多い(調査では36.4%)のは、素晴らしいことですよね」

資産形成において大切な「4つの考え方」

転職が年収アップにつながらないケースもあるなかで、どのようにして資産をつくっていくべきでしょうか。頼藤さんに、重要な「4つの視点」をご紹介いただきました。

・現状を正確に把握する

「そもそも『毎月、何に、いくらお金を使っているのか』を把握することです。今なら収支管理ツールやキャッシュレスサービスを活用すれば、ご自身の支出の傾向がおおまかに分かるでしょう。

支出の内訳を見直す際は、食費や交際費などの『変動費』を削ると後々リバウンドしやすいので、最初は『固定費』からメスを入れるのが鉄則です。家賃、スマホ代、電気・水道・ガス代、生命保険料など。これらは一度見直せば、節約効果は大きく、また我慢せずにその節約効果を得られ続けます。

加えて、コンビニ・ドラッグストア・自販機などのちょこちょこ買い、カフェ代などの『ラテマネー』を削れば、月1〜2万円は浮く可能性が高いのではないかと思います」

・「収入>支出」のルールを徹底する

「お金持ちの人たちに共通しているのは、年収の高さではなく『収入以上に支出しない』というルールを徹底していることです。

そのルールを守るためにやるべきことはたくさんありますが、会社員でもできることとして有効なのが『先取り貯蓄』です。収入から貯蓄分を取り分け、残ったお金で生活する。そして、先取りしたお金や浮いたお金を、まずは預貯金に回します。生活費3カ月分が預貯金で確保できてから、積立投資などの資産運用を始めましょう。生活費6カ月分の預貯金があればベターです。

金融資産への投資は、時間をかけてコツコツと堅実に増やすのがポイント。しかし、投資である以上、元本割れのリスクは付きまといます。預貯金がない状態で投資をしてしまうと、病気やけがなど急な出費で売らざるを得ない時に、暴落や下落局面が来たら大変です。お金を一気に失ってしまいます。投資は長い目で見れば増える可能性が高くても、短期的には元本割れする可能性はあります。本格的に投資をスタートするのは、生活費6カ月分の預貯金ができてからです」

・振り返って改善する

「皆さんはお金を使った後に『無駄な出費ではなかったのか』『満足度の高い支出だったか』という振り返りを行い、次の支出に活かすというPDCAサイクルを回せているでしょうか。

1カ月、あるいは1年間、何にお金を使って、何を得られたのか。

ジムやスクールに通ったとして、本当に効果があったのか。自宅トレーニングやウォーキング、図書館やYouTubeで得られる情報と比較して、コスパやタイパは良かったのか。自分に合っているのはどの手段なのか。無駄な出費であれば、その支出を見直せばお金が貯まるはずです。

『自分がどう感じたか』を軸に満足度を振り返ることで、人生の幸福度を高めるお金の使い方が上手になっていきます。

『お金の使い方のPDCAサイクル』を若い頃から回していないと、中高年になって仮に1億円以上の資産を築いたとしても、何にお金を使えば自分が満足するのか分からず、使い道に困る……なんてことにもなりかねません」

・長期的な視点で積み立てる

「残念ながら魔法のように短期間でお金が増えることはまずありません。ネットやSNS上で『短期間でお金を稼げた』という情報を目にするかもしれませんが、仮にできていたとしても再現性のない方法でしょう。誰もができる『再現性』を兼ね備え、堅実に増やす資産形成法は『長期・積立・分散投資』です。『長期・積立・分散投資』を実践するならば、投資の利益が非課税となる『NISA』と『iDeCo』を活用しない手はありません。

なお、『長い時間をかけて、コツコツと着実に、複数に分散して』という発想は、金融資産だけでなく自己投資にも当てはまるでしょう。スキル・能力は特定のものに集中したとしても、同時に、人脈、健康、経験、思い出などにも並行して、コツコツと積み上げていくことが重要です。スキル・能力、人脈(友人)、健康、経験、思い出などは『無形資産』と言われます。若い頃から『無形資産』を積み上げていかないと、将来的にキャリアが行き詰まるでしょう。

重要性の高い『無形資産』は人脈と健康です。健康は言わずもがなでしょう。

お金があっても一緒に使ってくれる友人や、お金を使う場所がないのは寂しいですよね。趣味でも副業でも資格の勉強会でもいい。職場の外部にコミュニティを作り、人脈という『社会関係資本』を築いておくことが後々の自分を救います。

我々の人生の目的は資産を増やすことではなく、いかに幸せであるかですから」

資産運用より先に、やるべきこと

当然ながら、お金があるからといって幸せになれるとは限りません。だからこそ、年収が上がらず悩んでいる人がまずやるべきは「自分を理解すること」だと頼藤さんは語ります。

「お金に対する価値観を見直してみることが重要です。ただ闇雲に『お金のある状態に憧れる』ことをやめる

お金がたくさんあるからといって、バラ色の人生になるわけではありません。実際、アンケートの結果を見ると、年収1,200万円を超えたあたりから『満足』と答える人が減っています。

給与収入と税金・社会保険料は比例するため、手取りは思ったほど増えません。そうした状態が、この結果に反映されているのではないでしょうか。

まずは自分を理解することが大切です。『自分はどう生きたいのか』『どういう働き方をしたいのか』『何を達成できれば満足なのか』を定義する。

『足るを知る』という言葉の通り、自分が幸せを感じるラインが分かれば、そこから逆算して、必要な年収や資産の額が見えてきます。そのために資産運用が必要ならやればいい。もちろん、資産運用も絶対の正解ではなく、あくまで資産形成の手段の一つに過ぎません。

お金と向き合うことは『自分がどう生きたいか』を突き詰めることから始まります。そこを明確にすることこそ、資産形成の第一歩です」

資産形成は「手段ありき」で考えてはいけない、ということが頼藤さんのお話で分かりました。

一年を振り返る機会も増える年末年始、お金や仕事との向き合い方を一度見直してみてはいかがでしょうか。


一年の締めくくりに、そして一年の始まりに、お金やキャリアとの向き合い方をじっくり見直してみませんか? マイナビ転職では年収アップが目指せる求人を、数多くご紹介しています。ぜひチェックしてみてください。

( https://tenshoku.mynavi.jp/ft/salary/?src=mtc )

取材・編集:はてな編集部
制作:マイナビ転職

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