優勝請負人・工藤公康さんが初登場! 西武ライオンズ、ソフトバンクホークス、巨人、横浜DeNAと4球団を渡り歩いた伝説の左腕が、勝負に勝つ思考を伝授!【「ラブすぽ」トークショーレポート】
球界屈指の理論派、優勝請負人「工藤公康」降臨! 爆裂トークにファン150人が酔いしれる!
皆さん、ご無沙汰しています。プロ野球のオフシーズンは現役選手を中心に、シーズン中はOBの方をメインにゲストをお招きして行っているリアルトークイベント『ラブすぽ』に、いよいよ伝説の左腕・工藤公康さんがやってきてくれました。私も小学生の頃、西武ライオンズの友の会に入会するほどのライオンズファン。他球団から憎らしいほど強かったと言われるチームのエースとして活躍した工藤公康さんはその後ダイエーホークス(現ソフトバンクホークス)、読売ジャイアンツ、横浜DeNAベイスターズ、そして再び西武ライオンズでプレー、現役29年間で14度のリーグ優勝、11度の日本一。その後ホークス監督として7年間で3度のリーグ優勝、5度の日本一とまさに優勝請負人。そんな工藤公康さんが『ラブすぽ』にやってくるということで会場には平日の夜にもかかわらずライオンズ、ジャイアンツ、ホークスなどのユニフォームを身にまとったファン約150人が集まりました。
選手も野菜も環境が大切
午後7時プレイボール。司会を務めるのはお馴染みDJケチャップさん。お二人が選手、DJという間柄でベイスターズ時代にご一緒していたこともあって序盤から息ピッタリ。まずはユニフォームを脱いで3年が経過したという工藤公康さんにケチャップさんから最近の過ごし方について聞かれると間髪入れずに「農業やっています」と。最初は工藤公康さん流のボケかなと思った方も多かったのですが、これが結構ガチみたい。
そこから冒頭5分くらいは農業の魅力を工藤公康さんがたっぷりと披露しましたが、たまらずケチャップさんが「野菜育てるのと選手育てるの、どちらが難しいですか?」と質問が飛ぶと工藤公康さん流の明確な回答を返してくださいました。「野菜も選手も勝手に育つのではない、環境の中で育つ。だから周りが環境を整えてあげることがとても大切」とのこと。普段の『ラブすぽ』とは少し違った講演会のような工藤公康さんのトークの上手さに皆、背筋を伸ばして引き込まれて行きました。
常勝軍団、西武ライオンズはどのようにして作られたか?
工藤公康さんの場合、現役・監督生活含めプロ野球界で36年。どこを切り取ってトークを展開すればよいかこの日はケチャップさんも困惑気味。ざっくりプロで成功した秘訣を伺うと、常勝軍団西武ライオンズがどのように作られたのか、工藤公康がどのように工藤公康になっていったのかを赤裸々に語ってくださいました。キーとなる存在は当時プロ入り時の監督・広岡達郎さん。見た目の印象は寡黙な監督のイメージでしたがとてつもなく厳しかったと。新人時代はキャンプ前に毎日投内連携の練習を2時間。100メートルダッシュを100本、これがノルマ。今の時代では考えられないような過酷な毎日だったそうです。「翌日ダッシュは半分で」と言われて喜んでいると翌日、ダッシュは確かに半分の50本になったそうですが、距離が200メートルだったそうです。(一同大爆笑)
また当時のライオンズの選手たちのイメージは野武士軍団。仲が良い悪いということだけではなく、選手同士でつるんで行動することはなかったそうです。いわゆるそれぞれの選手が自主性を持ってプロとして独立していた集団だったと。このあたりのお話から、後に12球団の監督を、ライオンズ出身が多数占めるようになったのもうなづけます。
数々の工藤公康伝説と王監督
工藤公康さんといえば球界のレジェンド。その伝説たるや数えきれないほどのエピソードを私たちも目にしたことも多いはず。もちろんケチャップさんもその一人。特に「トレード移籍後のホークス(ダイエー)時代のルーキー城島選手を工藤公康さんが育てたというあの話、本当なんですか?」と、直接本人に聞いて紐解いていきましたが、事実と異なって伝わることも多いんですね。美談で届いていたお話、真相は違ったことも多かったみたいです。特にそのやり取りの中で出てきた当時の王監督のモノマネを交えたお話は笑いましたね。
でも王さんにはやはり多大な影響を受けたようです。当時、選手時代に試合前のミーティングが行われたそうなんですが、工藤公康さんは「平日の普通のナイターなのに王さんがミーテイングを緊急で開くなんて珍しいな」と思っていたところ、「今日はNHKでナイター中継がある、全国のホークスファン、プロ野球ファンに自分たちのプレーを見せる絶好のチャンスだからしっかりみんなアピールしよう」と王さんの言葉があったんですって。この時の王さんの視野の広さ、そしてファンあってのプロ野球というのを再認識し、これが後に監督になってからも大きな影響を受けたようです。
監督、工藤公康は徳川家康タイプ
この日は、「ラブすぽ」名物2ショットの写真撮影タイムは割愛しての2時間ぶっ通しのトーク祭りで行われのたのですが、折り返し後は監督・工藤公康に迫っていきました。どんなにいい選手でも必ず立ちはだかるのがプロの壁。ドラフト後に指名選手と首脳陣で食事会を開くそうなんですが、その時は皆新人が目を輝かせた自信あふれる表情を見せるそうなんですが、その後数年後に必ず、「もう限界です」という時期が来るそうです。そして、ここからが監督・工藤公康の真骨頂。
そこで必ずかける言葉が、「さあ、ここからだ」! もがき苦しんだで自分からSOSを出してくる時まで待つのが監督の仕事。そこからその壁を乗り越えさせるアドバイスを送る。プロ野球を引退した後にプロ野球界に残れる人はほんの僅かですが「だったら1年でも長くユニフォームを着させてあげたい」との強い思いがある。だから手を差し伸べる。監督時代に選手たちには複数ポジションを守れるようにと伝えていたのも、守れるポジションが多ければ多いほど試合に出られるチャンスも増える。この話を伺った時は、監督・工藤公康の愛の深さを感じましたね。選手が気づくまで、壁にあたってもがくまで、とことん待つ。この「泣かぬなら泣くまで待とうホトドキス」お徳川家康の精神なんですね。工藤公康の「康」は、徳川家康の「康」というオチでした。
4球団でプレーした経験が、監督・工藤公康の土台を築く
工藤公康さんといえばライオンズでトータル14年、ホークス5年、ジャイアンツで7年、ベイスターズで3年と、4チームでプレーされましたが、横浜で過ごした3年間は後に監督になったときに役に立つ経験だったそうです。ベイスターズ時代は当時の大矢監督と話をして、先発でなくブルペンに回って欲しいと言われました。工藤流のプロ選手とは監督がチームのことを考え出した結論に100パーセント従うこと。もちろんリリーフの役割も受け入れたとのことです。ブルペンで登板に備えて準備をしているとブルペンに電話があり、この後の出番を言われギアを上げて投球練習をしていると、「まだ待ってくれ」。
「次行くぞ」と言われ、またペースを上げていくとまた「待ってくれ」と。こんなことが繰り返されて結局ブルペンで100球を投げたこともあったそうです。この時にリリーフ投手の気持ちを初めて理解したそうで、監督になってからは、行くタイミング、行かないタイミング、状況に応じての場合はそのことも明確に伝え、それも直前ではなくてしっかり事前に伝えておくことを徹底し、ブルペンに電話するタイミングですら気を使ったそうです。「監督は信念をもってブレないこと」。これも工藤公康さんが貫いたことだったそうです。
大盛り上がりの質問コーナーからラストへ
時刻は午後8時半。いよいよ残り30分となったところで工藤公康さんへの質問コーナーです。レジェンド左腕に直接質問ができるということで多くの方の手が一斉に上がりました。
工藤公康さんがホークスの監督を務めていた時代に、東京ドームでボールボーイのお仕事をしていたという方からの質問では、当時ジャイアンツとの日本シリーズで4タテで圧勝したあの時代の話に。
「チームの雰囲気が盛り上がらない時はどうしていましたか?」の質問では、マッチこと松田宣浩選手や川島慶三選手、福田秀平選手に「盛り上げろ」というだけで、雰囲気がガラッと変わったそうです(笑)
また熱烈な巨人ファンのお客さんから「日本シリーズで4タテした時は、どのような作戦だったんですか?」という興味深い質問が。工藤公康さんは「短期決戦で相手に一番ダメージを与えられるであろう、ある特定の選手だけを徹底的にマークする」という話でした。
それ以外にも、野茂英雄さんよりも前にあったメジャーリーグへの移籍の話、今では当たり前になった動作解析やデータの解析を30年以上前から取り入れていたことなどが語られ、ものすごいエピソードに会場は大盛り上がりでした。
好きな映画は「ゴールデンカムイ」。理由は息子(俳優の工藤阿須加さん)が出ているからという話は、家族愛を感じましたね(笑)「侍ジャパンを含め、再びユニフォームを着る可能性はあるのか」と問われた時は、「こればかりは待つ身なので話が来たら考えます」ですって。今でも特にライオンズのことは気になるみたいで、やはりプロとしてのキャリアをスタートさせた、そして工藤公康の礎を築いた球団ということで思いは強いみたいですね。
他にもドラフトでの裏話や、ここでは書かないことを約束に初出ししてくれたトレードの時のお話なんかも飛び出しました。そして最後に全員で集合写真を撮ってイベントは無事終了。工藤公康さんの長いプロ生活を、2時間にまとめるのはいくら百戦錬磨のケチャップさんでも至難の業でした。この日は2時間トーク祭りということで、2ショット撮影タイムがありませんでしたので、最後は工藤公康さんから来場者全員にサイン色紙のプレゼントをいただきました。普段から企業での講演やセミナーなどで大忙しの工藤公康さんですが、初めての『ラブすぽ』でも勉強になる話だったり、目から鱗の考えが盛りだくさん。それにオチをつけて笑いに変える工藤公康さんの話術には驚かされました。
ラストは会場の皆さんと集合写真を撮影をして、終了となりました。工藤公康さん、そして会場に足を運んでくださった皆さん、ありがとうございました!
ラブすぽ今後の開催予定です。
10月25日(金)銀次さん(元プロ野球、東北楽天)
11月5日(火)中畑清ん(元プロ野球選手・監督)
詳細はラブすぽのSNSをチェックしてください
@love_spo1010
下村泰司
(しもむら やすし)
フリーアナウンサー
小学校3年生で野球をはじめ、高校時代は3年夏に主将として甲子園出場。地方局アナウンサーを経てその後はスポーツ業界に長年身を置きスポーツマーケティング会社やプロ野球球団のスタッフとして仕事に従事。3年前にフリーランスに転身し現在は主にMLBの実況などを担当。『『ラブすぽ』』スタッフ歴は約3年でアスリートの話に毎回刺激を受けながら肉体改造を誓うも日々増量中・・・